柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.659 過去の人が生まれる温床を撲滅しましょう

私は個人タクシーが好きではありません。仕事上、タクシーはよく使います。

ただ、個人タクシーは避けています。態度が横柄、車が古い・臭い、運転が荒い。

あくまでも私の個人的な体験からですが、個人タクシーには、こういう運転手さんが

多いように思えます。タクシーをよく利用する人にこの話をしますと、

たいてい“そうそう”と同感されます。

 

先日、博多で女性ドライバーの個人タクシーに乗りましたが、行先を告げてもうんとも

すんとも言わず。「博多エクセルホテル東急」と伝えたのに「東急ホテル?」に連れられ、

通常15分くらいで着くところが45分くらいかかりました。さすがに

「ごめんなさい。えへへ。」と言われましたが、料金を下げるというオファーも

ありませんでした。(文句は言いませんでした。逆ギレされそうだったので。)

 

個人タクシーの運転手ということは、それなりの経験を積んだベテランのはずなの

ですが、そのベテランが嫌われているという現実があります。自分の仕事に慣れて

しまって、よりよい仕事をしようというモチベーションがないのだろうと思いました。

さらには自分の仕事には意見を言わせないという気配すら漂わせていました。

 

私はこういうベテランを「過去の人」と称しています。これはタクシーの運転手さん

だけの話ではありません。どこにでもいます。社内を見渡してみてください。

自社に「過去の人」がいませんか?

 

「過去の人」が多い組織は学習しません。何か問題が起きると誰かのせいにします。

新しいことへの取り組みが進みません。当然ながら、「成長したいという若者」は

幻滅し、そこから逃げ出したい気持ちになります。

 

誰でも学びたい、成長したいという本能があるはずです。それにもかかわらず、

会社組織の中に「過去の人」が生まれてきてしまうわけです。この温床を撲滅しない限り、

「過去の人」は生まれ続けてしまいます。

 

温床になりうるのは「降格のない職能資格制度」と「変わらない仕事環境」です。

 

職能資格制度は役職(ポスト)に関わらず、「実力がある人と思われる人」を相応に

資格等級で処遇するというものです。多くの企業で管理職相当資格に昇格するまでは

卒業方式で運用されています。一定の評価を一定の年数得ることができたら昇格させる

というやり方です。このため、やっている仕事は同じでも、資格は上がっていきます。

仮に仕事の質が低下しても降格しません。上位資格で年齢が高い人には意見しにくい

ものです。そうなると自然に聞く耳が閉じていきます。

 

やっている仕事の範囲と内容が長らく変わらないと、その人の周囲に「温床」が

用意されていきます。

 

仕事は3年やれば“だいたいできる”ようになります。5年もやれば“わからないことが

ほぼない状態”になります。7年もやってしまうと“やり方を変えるのが怖く”なります。

「過去の人」誕生です。

 

同じ仕事を5年以上やっている人がどのくらいいるのか、一度調べてみてください。

(ちなみに、例えば同じ経理職であっても、担当領域が広くなっていれば「同じ仕事」

とはみなしません。)同じ仕事をやっている人が25%以上いた場合には要注意です。

会社として「過去の人」を造ってしまっています。

 

先日来、某企業で全執行役員、部長クラスを対象に「ファシリテーションスキルを

高めるためのトレーニング」をやっています。とても印象に残っている回がありました。

トレーニング開始前の参加者の表情と終了後の表情が明らかに変わりました。

「過去の人」になりかかっていた人たちが、「学ぶ機会」に触れて本能的に

楽しかったのだと思います。

 

そうなのです。新たな刺激、学び。これらを与えていくことがシニア層を「過去の人」に

しない/温床から脱出させる方策になります。完全に「過去の人」になってしまうと、

そこからの復活はハードルが高いです。本人にとっても会社にとっても良くない

結末になりがちです。「過去の人」が大量発生する前に手を打ちましょう。

 

 

おまけー1:胆石発作後、意識して魚野菜中心の食生活にしていますが、

なんと体重が3か月で5キロも落ちました!

(やはり、夜中のチョコモナカジャンボはいけなかったようです。)

 

おまけー2:深夜に半裸姿で走る男性あり。昭和の人が見たら「間男の逃亡」に見えたと思います。

(革靴だったので本当に「間男」)だったかも。)

 

おススメコーナー:弟子の藤野さんが書いた「2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方」

おススメです。ぜひ、電子版でお読みください。講演もやっているので声をかけてください。]

(それにしても弟子の成長は嬉しいものです。)

 

https://www.amazon.co.jp/dp/B071CLS46R/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

 

 

 

Vol.658 働き方改革を本気でやるなら

もう18年も前の映画ですが、「マトリックス」の中のこのシーンを覚えていますか。

 

ヘリコプターを前にしてキアヌ・リーブスさん演ずる主役のネオが尋ねます。

 

「操縦できるのか?」

 

キャリー=アン・モスさん演ずるトリニティが答えます。

 

「まだよ。オペレーター、ヘリコプター操縦のコードを送って。」

 

その後、トリニティの脳にヘリコプターの操縦の仕方がインプットされ、

ヘリコプターは飛び立ちます。

 

https://www.youtube.com/watch?v=6AOpomu9V6Q

(そのシーンの抜粋です)

 

こんな風にスキルの習得ができるようになったらいいなと鮮烈に思いました。

 

脳に直接インプットするのはともかく、

そこに数日いたら基本的なビジネススキルが習得できる、そんな施設をつくりたいと

思っています。自動車免許の合宿所みたいなものです。

 

 

「働き方改革」「生産性向上」、これらを本当に推進するとしたら、

「管理職の無意識下の偏見」への対処と「全員のビジネススキル」のレベルを上げる

こと。この二つを避けては通れません。

 

「管理職の無意識下の偏見」とは、例えばこんなことです。

 

時間ではなく成果で評価すると口では言っていながら、毎日遅くまで頑張っている

社員、休日出勤を厭わない社員を(よくやっている)と評価してしまう。

女性の活用と言いながら、難しい案件への配置の際に男性社員から考えてしまう・・・。

 

これについては別の機会に書きますが、こっちの対処は難易度が高いです

 

「全員のビジネススキル」のレベルを底上げすること。こちらはすぐにできるはずです。

ただ、対象とするビジネススキルは絞り込んだ方がいいです。

あれもこれも詰め込んではいけません。対象とすべきは「ポータブルスキル」、

どの会社だろうが、何の仕事だろうが、必要となるスキルです。

 

具体的には「話し・書き・対人スキル」です。この3つでいいと思います。

 

「話し」は自分の考えを短い時間で相手に伝えるスキルです。

「書き」は読み手に伝わるメモを書くスキルです。

「対人スキル」は「相手の関心事を察知する技術」と「相手に伝わるように話す技術の

掛け合わせ」です。

 

この3つを徹底的に「反復訓練」するのです。それこそ3日間集中的にやるイメージです。

 

この3つの全てに共通しているのが「伝える」「伝わる」です。なにしろ、社内外の

トラブルのほとんどの原因は「伝える」「伝わる」がうまくいっていないことによります

。逆に言えば、そのトラブルが減れば物事がスムーズに進むはずです。トラブルは組織に

ストレスを与えます。ストレスはパフォーマンス向上の妨げになります。

 

この改善なくして「働き方改革」「生産性向上」はありません。

 

こうした超基本的なことで、かつ組織のパフォーマンスを上げることに直結することには

時間とお金をかけて良いと思います。また、組織開発的な対話の促進の場づくりに

時間とお金をかけるのも良いと思います。

 

マーケティング理論や財務諸表の読み方などのMBA的なものはe-learningのメニューを

用意して、必要に迫られた人や向学心の強い人が自助努力としてやればいいのです。

集合研修を設定する必要はないと思います。

 

その分、選抜型の研修に十分な時間とお金をかけるべきです。

それが研修費用の戦略的な使い方だと思います。

 

いろいろなことを学ばせようとして、一つも一定水準に到達しないよりも、

全ての基礎となる「話し、書き、対人関係」を底上げした方がいいに決まっています。

 

 

「話し」「書き」「対人スキル」のコンテンツは既にありますので、これを組み合わせた

パッケージ・プラン「Trinity(トリニティ)」を近くご案内したいと思っています。

 

 

おまけー1:「田島さんですよね、メルマガ読んでます!」こう話しかけられて困りました。

(田島じゃないし。)「“入社1年目の仕事の流儀”も買いました。」(あれ、それ僕の本だ。)

「田島さんはどちらにお住まいなんですか?」(田島じゃないし。)

 

 

おまけー2:電車の中で聞いた“明らかに間違っている”彼氏の発言

 

女子:やばー、あたし、今日で30歳だ。

男子:ボルトと同じ年だね。

女子:・・・

 

(これが間違っていることがわからない人は要修行です。)

 

おススメコーナー:月1のNHKおはよう日本「おはビズ」(サラリーマンの掟)ですが、

次回は8月21日(月)の朝6時10分頃の予定です。今回は「メールのさばき方」がテーマです。

 

 

 

 

 

Vol.657 優秀な若者が会社を辞める

先日こんな話を聞きました。

 

“新卒で一流と呼ばれる大企業に入社した。1年目の半分はほぼ研修。いい人たちに囲まれ、

良い会社だと思った。その後、本配属され自分なりに頑張って仕事をしてきた。

2年経過して外を見る機会があり焦った。外資系や中堅、ベンチャーに入社した同世代の

人たちよりも明らかに視野が狭く、実力もない。このままではいけない。”

 

この女性は同期入社の中でも秀逸。まさに期待される存在だったそうです。入社3年目の

4月に退職し、同じ業界の外資系企業に転身。転職先で早くも頭角を現し、

この9月にはシンガポールへの転勤が決まったそうです。

 

“このままではいけない”の意味は、“このままだと転職もできなくなってしまう。”

だそうです。

 

“経験に勝る学びなし”。将来が嘱望される優秀な人材を獲得したら、できるだけ早く

責任ある仕事を担当させた方がよいです。この女性は組織の中で新卒2年目・3年目の

社員がやる仕事を普通に与えられ、何の疑いもなくそれを粛々とこなしてきたのですが、

ある日外の世界を見て、自分の時間を無駄にしている、と気づいたわけです。

 

優秀な若者が入社したら、手に余るような難しい案件に就けましょう。

 

何とかしないといけない。しかし、経験がなく、どう進めていくべきか検討もつかない。

そういう仕事に直面すると、“誰かに助けを求めざるを得ない”状況になります。

それがいいのです。

 

学生時代にちょっと優秀だったりすると、人に助けを求めることを躊躇します。

自分の小さなプライドが邪魔をするのです。どんなに優秀な人であっても万能ではありません。

大きな仕事をするときには、最も力を発揮できる人たちでチームを組んで行う方が良いに

決まっています。自分がやらない方がいいこともあります。このことを“頭で理解する”

のではなく、体感してもらう。この学びを若いうちに得ることができるかどうか。

その後の成長の分岐点になります。

 

先日、某大企業の社長以下、主要幹部の方々の経歴をお伺いする機会がありました。

みなさん、20代のうちに非常に難しい案件を担当させられていました。しかも責任者として。

その時に遭遇した上司、何とも言えない焦燥感、これらがその後の自分を形成したと

仰っていました。

 

同じような思いをしている若者が今の会社にいるか、という問いにはみなさん「NO」でした。

 

これが多くの日本企業の実態だと思います。

 

事業が安定し、組織も安定してきますと、人々の心の中にそれを維持しようとする力が

働きます。安定・安住を享受し続けたいという本能的なものだと思います。

 

これを「Comfort Zone」といいます。「Comfort Zone」から出ないように、想定外の事態が

起こらないように、様々な措置が図られます。

 

仕事については、一人が“一人の仕事”をきちんとこなすこと。それが重視されます。

冒険は避けます。そうなると海のものとも山のものともつかない新人に大きな仕事をさせません。

新人は新人のやることを粛々とやるべし。そうなるのです。多くの新人もその「Comfort Zone」

の中で全力を尽くすことを望みます。

 

それでよいのです。そうでないと大企業が維持できませんから。

 

ただ、中には自ら「Comfort Zone」から飛び出しチャレンジしたいと考える人材がいます。

若干います。そういう人が改革をけん引し、将来の絵を描き、リードする人材になる

可能性が大です。彼ら彼女らを処遇しきれない。それが大企業の人事課題です。

先の女性もその一人でした。

 

こういう人材をリテンションする(辞めないようにする)には、尊敬できる上司、

本人の志向性を充たせる仕事(手に余るような仕事)、社内認知が必要です。

そういう人材を経営陣が認知し、ある意味で特別な配置をする。ここからです。

 

人事制度が邪魔することもあります。細かいグレードを刻むのではなく、ブロードバンドして

括りましょう。新人でも実力があれば数年で管理職になることができる。

柔軟性を制度に組み込みましょう。

 

 

 

おまけー1:大阪で定宿にしている某ホテルのクラブフロアで、部屋番号を言うと、

いつも手に書く女性がいます。毎回、手に書くので、聞いてみました。

 

“手に書くんだ?”

 

 “え、腕に書きましょうか” とニッコリ。(さすが大阪!)

 

 

おまけー2:“うたいダコ”ができていますので、今週も歌わないように。

 

喉のお医者に職業を誤解されています。しかし、この先生のおかげでかなり改善。

 

 

おススメコーナー:“凄い歌唱力”!一人でソプラノとテナーの声を使い分けてる!

 

https://www.youtube.com/watch?v=3RWs7yeGLyU

 

 

Vol.656 任命責任の果たし方

任命責任

 

役職者がその任に堪えないと判断されるときに、任命者の人選責任を問う。

閣僚が問題を起こしたときに総理が追求されるやつです。最近もありましたよね。

 

会社の中でも同じことがあると思います。特に抜擢したがうまくいかなかったときに、

抜擢した人間の責任をどう問うか。

 

抜擢する側はできると思って抜擢するわけです。そこには期待もあります。頑張って

「上の仕事を」こなしてほしいと思っているはずです。その人も全力でその期待に

応えようとするはずです。しかし、思ったように進まない、業績もあがらない、

組織運営上の課題も浮上。

 

・・・人事任用上、よくあることです。こんな場合にどうするか。

 

見るべきは業績ではなく、組織運営上の課題です。業績の良し悪しは外的要因の影響も

ありますし、そんなに短期的に改善するものではありません。それよりも業績を上げる

ためのエンジンたる組織感情に影響が出ていたら、そこを注視しないといけません。

 

組織感情が荒れてしまうと時間をかけても業績が良くなることはありません。それが

そのリーダーの言動やリーダーシップによるものであれば、抜擢した人間がその状況の

改善を図らねばなりません。それこそ更迭の可能性も検討しないといけません。

 

その人が全力でやっていた場合には、×はつけられません。全力でやってはいるが、

その人の力量が足りないための結果なのですから。だとすると“できると思った”が、

“まだその状態にない”ということなので、任命者がその人の不足分を補うべく

立ち回らないといけません。

 

その人もうまくやれていないことは自覚しているはずです。まずはその人と対話し、

どうすれば事態が好転するかを一緒に考えます。その際に“できていないこと”、

“顕在化した問題”について怒ってはいけません。

 

任命者が怒っていることを認知すると、抜擢された人は委縮します。委縮して

相談しなくなるか、評価を取り戻そうとして事態を更に悪化させる行動をとりがちです。

こうなってしまうと、その人間が「再起不能」になってしまう可能性があります。

これは優秀な人材を潰すことになります。

 

ここで抜擢した人間がすべきことは、その人間のコーチとして事態の改善を一緒に考えることです。

 

一緒に考えた結果、交代した方が良いということになれば、組織にとって最も軋轢が少ない

交代を演出します。併せて、その人がその“失敗”から学んでもらうべく導きます。

失敗から学んでもらえばいいのです。それがあると次につながります。

 

 

私は「抜擢」が好きです。意欲があり、ポテンシャルがある人には早い段階から大きな

役割責任を担ってもらった方がその人の成長につながる上に、勢いがある人がリーダーになれば、

その組織自体も活性化するからです。但し、過去に自分が抜擢した人事を考えてみると

十分に抜擢した後のサポートができたかというと反省しきりです。

 

自分に足りなかったことは、日常的なサポートです。抜擢した人物との対話の時間を

自分の基準で設定していましたが、その人からすると、もう少し頻繁かつ近いところで

サポートしてもらいたかったのだろうと思います。抜擢の場合には未知数なので、

最初はいつでも不足分を補えるところにいた方がいいに決まっています。

 

私が忙しいことはわかっていたのですから、自分以外の誰かをその抜擢者のスポンサー

(コーチ)としては配置しておくべきだったのです。この手を採ったこともありますが、

途中からの配置は逆効果になることを学びました。抜擢者の心象風景を慮ればその通り

なのですが、事態が悪化してからの配置は「お目付け役がついた」という印象が

ぬぐえませんでした。

 

抜擢した以上、しっかりサポートする。これが任命責任の果たし方だと思います。

それが十分ではなく、うまくいかなかったときには抜擢者は深く反省し、周囲が納得する

処し方を採る。それが任命責任の取り方だと思います。

 

 

過去に抜擢した人が全力で仕事をしていなかったことがありました。これは明らかな人選ミス。

自分が関わっている組織では心のどこかで“いざとなったら自分が出て行ってやればいい”と

思っていたのかもしれません。明らかに人選の目が曇っていました。これは大きな学び

として残りました。まだまだです。

 

 

 

おまけー1:九州を縦断する「ハウステンボス号」のグリーン車にはなんともいえない気配が

漂っています。

 

なぜか、全てのカーテンが閉じており、不思議な音楽が。二人席はなぜか席を倒して寝ている

ひとばかり。寝ているのですが、車内に誰かが入ってくると、薄目を開けています。

 

この空気の中で飲むものは「愛のスコール」だろうと思いました。

(だから駅の自販機で売っているのだ。きっと。)

 

 

おまけー2:博多で「イカ刺し」をいただきました。運ばれてきたときにはイカが

まだ動いていました。一切れ食べたところ、イカの目がぎょろり。うわー。

 

 

おススメコーナー:博多エクセルホテル東急では夜中に「シューシャインサービス」を

やっています。24時までにお願いすると、翌朝6時までにピッカピカにして返してくれます。

これ本当にいいサービスです。しかも、わずか3,000円!

 

https://www.hakata-e.tokyuhotels.co.jp/ja/index.html

 

 

 

 

 

Vol.655 進歩がないから、ずっと忙しいのかも

「忙しい、忙しい、と言っている人は自分を進歩させていない。」

 

某企業のトップから聞きました。その通りだと思います。

 

自分の処理能力を高めるための努力と工夫。これを自然にやれるようになると、

時間に余裕が生まれます。そうなると、仕事の質が高まり、幅が広がります。

仕事の醍醐味や楽しさも増します。いい事尽くしです。

 

ちなみに(自分で言うのも何ですが)自分の処理能力・処理速度は年々高まっていると

思います。多くの方から睡眠時間のことを心配されますが、平均で7時間~8時間は

寝ています。夜遅くまで仕事をすることはほとんどありません。自宅でPCと格闘する

こともほとんどなくなりました。しかし、仕事の内容は数年前よりも明らかに多様化し、

量も増えています。仕事に追われている感はありません。

 

その秘訣の一部をご紹介します。

 

意識すべきは「アウトプット作成力」のスピードを速くすることです。

代表的なアウトプットとは「資料の作成」、「仕事の段取りの設計」、「メール処理」です。

 

まずは極めて基本的なことから。

 

パソコンのキーボードのタッチのスピードを上げましょう。ブラインドタッチは当たり前。

思考と同じスピードで言葉を表示できるようにしましょう。最近はスマホ音声認識の精

度が上がってきているので、音声認識でやれるものはキーボードを打つよりも音声入力の

方が確実に早い。検索系のことはスマホ音声認識を使いましょう。

 

マーサー時代の同僚の岡田充弘さんが

 

「仕事が速い人ほどマウスを使わない! 超速パソコン仕事術」

 

という本を出しています。ぜひ、こちらを参考にしてください。PC操作でマウスを使っては

いけません。本当にそう思います。マウス慣れしていると、移動中に作業ができません。

 

https://www.amazon.co.jp/dp/B01GCNU864/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

 

ワード、パワーポイント、エクセルといったツールの操作に慣れましょう。特にパワポ

プレゼン資料をつくるコツを習得しましょう。パワポ禁止という会社も出てきていますが、

これは余計な資料を時間かけてつくる人がいるからです。

 

プレゼンの主役はあくまでも「話し手」。「話し手」のメッセージをより鮮明かつわかりやすく

伝えるための資料ならば全然問題ありません。そのコツをマスターし、それを表現するための

ツールとしてパワポをスラスラ使えるようにするのです。

 

コツは「ストーリー」です。自分が伝えたいメッセージをストーリー展開させること。

「空」「雨」「傘」という古典的な流れをマスターするのは基本。

「背景→目的→手段→費用と効果→代替案との比較」。こうした流れを徹底的に自分のものに

するのです。

 

 

応用編としては「会議の生産性の向上」。これまでも何度か紹介していますが、会議後に

関係者が誤解なく、遅滞なく動けるようなディレクションができることが目標です。

そのためのファシリテーションをリーダー自らが行うことで自分を含めて、関係者の処理能力が

上がります。これにより、議論の“先祖がえり”や会議後の“確認パレード”をなくします。

 

必要なコツは「Wrap up(とりまとめ)」と「可視化(みなが同じ内容を見る)」です。

 

 

他にも工夫すべき点はたくさんあります。私ももっともっと処理能力を上げて、“もっと楽したい”

ので、常に真似できることはないか、いいツールはないかとアンテナを伸ばしています。

 

根本的なことは時間が貴重であるという感度を高めること。「5分もある!」という感覚を

持つことだと思います。

 

「5分」あればメール数本処理できます。ぼけっとしているとあっと言う間に「5分」は

消えます。ONの間はこうした隙間時間を無駄にせず、できることをどんどんやる。

この姿勢が処理量を高め、結果として“楽に”なります。

 

日々、何時までに何を仕上げる!と考えて、持ち時間を意識して仕事をしていくと

次第に身体がそのスピード感を覚えて速くなります。PCの操作もそうです。

 

 

この発想に障害となるのが「時間給的発想」です。生産性を高める(投入時間が減る)と

報酬が減るという状況だとホワイトカラーの生産性の向上へのインセンティブが働きません。

ずいぶん前から「ホワイトカラー・エグゼンプション」を解禁せよ、と言ってきましたが、

最近の報道を見るに、またしも残念な展開です。

 

働き方改革の本質は、個々人および組織の生産性が高まることで、

 

国民がより創造的、文化的、ひいては更なる生産的な活動に時間を使えるようになり、

豊かな心が育まれ、経済活動への刺激が行われ、結果として日本に住む人・働く人の

幸せレベルが上がる

 

ということではないのでしょうか。

 

想定されるネガティブ要素対策の議論ばかりしていると、本質を見失います。

 

 

 

おまけー1:声のことでご心配をおかけしました。まだ別人の声ですが、仕事には

支障がないようになりました。ある方から声楽家を治療される先生をご紹介いただきました。

診てもらいます。

 

 

おまけー2:先日、天文学的な確率の出来事に遭遇しました。乗ったタクシーが連続して

小さな接触事故を起こしました。(私は全く無事でした。)これは“当たり日だ”と思い、

早速サマージャンボ宝くじを買いました。

 

 

おススメコーナー:本はKindleなど電子ブックで読むのがおススメです。場所をとらない、

いつでも読める、検索できる、重くない。Kindleに代えてから、書棚を持って移動している

ような感覚です。(Kindle対応していない本を買うのが躊躇されるくらいです。)

 

 

 

Vol.654 あなたの話を聞かせてください

声が出なくなりました。

 

正確には7月13日の午前中の講演中、突然声の出が悪くなり、あれあれ、と思って

いましたら、どんどん出なくなり、その日の午後には典型的な“おかま声”に。

翌14日には音を失いました・・・。その日のセッションは「つんくさん方式」で

画面に文字を投影して行うという苦肉の策で乗り切りました。

 

翌15日に自宅近くの耳鼻咽喉科に駆け込んだところ、

 

「ああ、声帯が腫れてますね。喉を酷使しましたね。」

「そんなことはないです(と筆談)」

 

「これだと1か月くらいかかりますね。ステロイド点滴しましょうか。」

「え!(と筆談)」

ステロイド点滴すると、すぐに治りますよ。錠剤も2日分だしておきます。」

 

ステロイド・・・? ベンジョンソン? 走ったら速くなる?などと思いながら、

ステロイド点滴を実施。

 

治りません。

 

3連休を経ても声は復活せず、その間のアポイントのみなさんには大変ご迷惑をおかけしました

。特に事業再生会議に陪席させていただいた某企業では、せっかくの再生ののろしを

盛り下げるようなトーンの話し方になってしまい申し訳なかったと思っています。

 

その後、知人からの助言の「梨湯」により、ヒューヒュー音が出るようになりました。

それでも通常とは程遠いコンディション。そういう中で、某大企業の役員セッションの

ファシリテーション、某財団の打ち合わせの仕切りなど「話さざるをえない」

スケジュールが続き、参りました。声が出ないので、ずっと前から楽しみにしていた

“ビールを浴びる”という会食はリスケに。

 

わたしのこんな有様を見て、某芸能事務所の社長さんから「タレントの声が出なくなった

ときの薬です。」と漢方薬をもらいました。

 

効きました。

 

声は出るようになりました。が、違う人になりました。明らかに声変わりしました。

55歳での声変わりです。

 

親に電話をしたら「おれおれ詐欺」と勘違いされて切られました。

 

こんな状況で思いました。喋れないことの不自由さとストレスはすごい。言いたいことを

言えない環境に身を置かれている人たちは大変だろうなあと。私のように喉をやられている

場合には、まだあきらめもつきます。そうでないのに、言いたいことが言えない。これは辛い。

 

組織の中で「言いたいことがあるのに言えない」と、これがストレスとなり、組織感情が

悪化し、結果としてスムーズに物事が進まなくなります。そのうち、心を病む人や

黙って辞めていく人が続出します。そうなると、何をやろうとしてもうまくいきません。

 

一人ひとりが抱えている「言いたいこと」は経営という観点からは取るに足らない

内容かもしれません。重要なことは、その内容ではありません。それが何であれ、

聞くという行為です。「あなたの話を聞かせてほしい」、 ここにはその人への

リスペクトがあります。

 

自分は会社からリスペクトされている。この思いはヒトの心に火を灯します。

生産性向上が叫ばれる今日だからこそ、目に見えない配慮をしたいものです。

 

“あなたの話を聞かせてほしい”。リーダーが現場を視察するときの鉄則です。

 

 

おまけー1:不思議なもので、こちらが声が出ないと、話しかけてくるほうもヒソヒソ声に

なったり、筆談系になる人がいます。感受性の高さによるものと思います。

 

 

おまけー2:この話、家の中でも同じことが言えますね。

 

 

おススメコーナー:7月24日(月)のNHKおはよう日本の「おはBiz」で私が解説する

「カイシャインのおきて」第二弾「苦手な部下とは・・・」が放映予定です。

 

早朝の6時10分頃だと思います。ぜひご覧ください。

見逃した方は以下のサイトに追ってアップされますのでこちらをどうぞ!

 

 

http://www.nhk.or.jp/ohayou/biz/

 

 

 

Vol.653 大企業のCSR 

 

大企業のCSR(企業の社会的責任)について思うところがあります。

 

CSRとは、「企業が自社の利益を追求するだけでなく、自らの組織活動が社会へ与える影響に

責任をもち、あらゆるステークホルダー(利害関係者:消費者、取引関係先、投資家等、

及び社会全体)からの要求に対して適切な意思決定をすることを指す。」とWikipedia

にはあります。

 

多くの大企業がさまざまな社会的な催しや芸術への支援、環境問題への貢献等をしています。

素晴らしいと思います。私もその恩恵に与ったことがあります。

 

ただ、気になっていることがあるのです。

こうした素晴らしい活動の一方でこういうことがあります。

 

“うちと取引させてやっているのだから、全てのリスクはそちらで持て”

 

大企業の(CSR部門ではない)現場の担当者や総務/法務担当者に、取引先のベンチャー

中小企業に対して「仕事をさせてやっている」という姿勢を取る方がいます。あるいは、

会社としてそういう要請するのが当たり前になっていたりします。

 

これは大企業と取引をするベンチャー系の企業がよく感じていることです。

(Indigoblueもベンチャー企業の端くれですから、同様の体験をしたことがあります。)

 

私はベンチャー企業への支援はCSRの一環だと思っています。資金を出すということでは

ありません。良い商品・サービスを発見したら、その会社の規模、沿革に関わらず、

それを積極的に採用し、その普及を支援する。それがCSR活動になると思います。

 

これにより、新たな価値が生まれ消費者の利便性が向上し、同時に新たな経済循環が

生まれ、社会が豊かになります。そのベンチャー企業が成長すれば雇用も拡大します。

これらのきっかけを創ることは大いに社会に貢献する行為です。CSRの実行そのものだと

思います。

 

しかし、必ずしもそうではないのが現実です。大企業との取引では嫌な思いをさせられる

ことが少なくありません。

 

ある技術系ベンチャーの話です。その会社が開発した製品の独自性を評価した

大企業からの発注要請を受けたらしいのですが、こんなことを言われたそうです。

 

“おたくはいつ倒産するかわからないから、倒産したときにはコード(技術情報)を

全て無償で提供すると契約書に書いてください。それと、本件で損害が発生した場合に

備えて個人保証をしてください。”

 

頑張って素晴らしい製品を開発した会社をサポートするどころか、製品だけ搾取しようと

する態度が見え見えです。個人保証を求める姿勢には驚きます。

 

さらに別のベンチャー企業でこんな話もありました。

 

“(金曜日の夜に)月曜の出社までにお願いできるとありがたい”

“上に見せるので、今日の資料とは別にこういう資料をつくってください”

 

ベンチャー企業は人材が潤沢にいるわけではありません。自分で開発し、営業し、かつ

資料を作成し・・ということを眠る時間を削ってやっています。やることは満載です。

それを、自分が上に説明する資料をつくる手間を惜しんで(能力がない?)、

更に資料づくりをベンチャーに要請するのはいかがなものでしょうか。

 

さらには信じられないのですが、こんなこともよくあります。

 

“おたくには信用力がないので、値引きをしてください”

“今後のお取引もあるので/別の形でお付き合いできるので、値引きしてください”

“代金の振込手数料はそちら負担でお願いします”

 

“社内手続きが遅れたので支払いは来月でお願いします”

 

言うまでもなく、ベンチャーは資金繰りに四苦八苦しているところが殆どです。

値引き要請、振込手数料負担の要請、さらには簡単に支払を延ばしたりする、

これらは大企業としてはありえない要請だと思います。

 

この、“うちと取引させてやっているのだから、全てのリスクはそちらで持て”という

姿勢がどこかにある限り、その大企業は自分の利だけを追求していることが明らかです。

たとえ素晴らしい支援活動を行っていたとしても、こういう行為がありますと台無しです。

 

この他の大企業の担当者がよく言う言葉です。

 

“正式には聞いておりません”(途中で止められるための前口上)

 

経営者はこのことを知りません。多くの場合、担当者が自らの保身のために取引先に

必要以上に厳しくあたっているのです。折を見て、自社がどのような契約書を出している

のか確認されることをおススメします。これらの「大企業ならではの態度」がその会社の

評判を落としています。下請け法違反ではないから大丈夫、ではないのです。

 

いい仕事をしているベンチャー企業に遭遇したら、その企業が更に発展できるよう、

営業・金融支援をする。これこそが大企業が持つべきCSR精神ではないでしょうか。

 

 

おまけー1:小学生が横断歩道で手をあげたらタクシーが止まり、その小学生がタクシーに

乗りました(そういうことなのか?)

 

おまけー2: ヒアリ問題で思い出すのが、インドネシアの「アオジタトカゲ」。江戸時代から

インドネシア経由で届くオランダの物産の中に「アオジタトカゲ」が潜み、上陸したのが

ツチノコ」だと思っています。

 

アオジタトカゲの画像検索してみてください)

 

おススメコーナー:「黒鳥の湖」です。

 

ショーチェンジして、かつての六本木金魚を彷彿させる状態になっています。

ぜひ足を運んでみてください。

 

http://www.kokucho.com/