柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.257 いろいろな人に出会う

世の中不況とはいえ、さすがにクリスマス前、
12月23日の羽田空港はにぎわっていました。

サンタクロースに扮したオルゴール弾きがお菓子をくばりながら、
ビッグバードの中を歩いています。

昼すぎのフライトで富山県へ。お客様からのご要望にお応えするのが
休日になってしまうほど、平日は予定がぎっしりです。
一緒に出かけてもらうCさんにしてもいい迷惑でしょう。

昼前で小腹がすいたので出発ロビー3Fの寿司屋へ。
ここは比較的空いていました。
カウンターに着席して、一番手軽な「ちらし」をオーダー、出発便の確認をしていました。

そこに、ヴィトン柄のジャケットに白のマフラー、宝飾品が縁取った
黒のサングラスの50代の男性がどかっと座ってきました。
成田三樹夫さんをがっちりとした体格にした感じです。

「うぉっほん・・・」
「いらっしゃいませ!!」 急に店内に緊張感が満ち溢れました。
「おう」 と成田三樹夫
「うへへへ、こんな時間に珍しいですね」とカウンター越しに、板長がいかにもお愛想。
(馴染みの客なんだ・・・)
「これから、九州だ。冷酒とつまみ・・・」

ものすごい速さでつまみと冷酒がでました。私のちらしはまだです。

「大将、ここんとこ、どうだ?」
「へえ。まあまあです。」
「結構、もうかってんじゃないか・・・世の中大変だよ。」
「へえ」
「ここは場所がいいよな、何にもしなくても客が入る」
「へえ」

大将と呼ばれた人は急にそわそわ忙しそうな気配を出しています。

「まあ、今、一番忙しいときだな、で、おかみは・・・」

話を振られたおかみと思しき人は急に忙しそうにテーブルを片付けています。
ものすごくキビキビとしています。15分前とは別人のようです。

成田三樹夫は「みんな、忙しいよな。」と周囲を見渡しながら、冷酒をぐびり。

(できるだけ、かかわらないようにしよう)
カウンターの端でブラックベリーを眺めていたところ、

「にいちゃん、」
「・・・」
「にいちゃん、それなんだ?」
(まずい。興味の矛先がブラックベリーに来た。)

ブラックベリーです。」
「は。なにベリーだって?」
ブラックベリー・・・という名前の携帯電話です。」
「おお、そうか。」  と冷酒をぐびり。 

そのとき、成田三樹夫の携帯電話がなりました。
(良かった、これで話が終わる。)

「ん?」成田三樹夫は携帯の画面を一瞥すると
電話を胸ポケットの奥にしまいました。

「にいちゃん、」
「・・・」
「にいちゃん、なんで、でねえと思ってるだろ。」
「いえ。」
「いや、そう思ってる。俺にはわかる。なんででねぇんだ、と」
「いえ、そんなことは・・・」
「いいんだよ。俺にだってな。いろいろ事情があるんだよ。」
「はあ。」

そこに「お待たせしました。ちらしです!」
「にいちゃん、それうまいか?」
「はあ。」
「好きか?」
「はあ。」
「じゃあ、俺もこのにいちゃんと同じやつ! 全部同じにしてよ、全部。
えびの形もな。」
「で、にいちゃんのなんとかベリーはいいか?」
「便利です。」
「なにが?」
「メールとか」

「俺の携帯だって、メールくらいできる」

と再び成田三樹夫の携帯が鳴りました。

「うるせぇな。しかし、ここで切るとな、あっ、切ったな、とわかっちゃうわけよ。
だから切らない。わかるか、この作戦。」

この手のやり取りを何度かして、やっとの思いで寿司屋を出て、
待ち合わせ場所近くのコーヒーショップに入ったところ、
俳優の館ひろしさんが目の前のお席でゆったりと座っていました。
見ると、その先に猫ひろし・・・!

さすがに羽田空港です。これで五木ひろしさんでもいたら、
ひろしづくしだな・・・と思っていたところ、坊主頭の中年男性が
いきなり目の前に「柴田くんだろ?」

高校時代の友人でした。28年ぶりの再会。

 しかも、その彼は安藤ひろし。出来すぎ。

本年もご愛読いただき、ありがとうございました。
会社の中にこもって同じ仕事ばかりしていると、いろいろ広がりません。
飛行機に乗って、新幹線に乗って、どこかへ行ってみましょう。
きっと、いろいろな出会いがあります。

Be active!

よいお年をお迎えください。