柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.268 人事制度は社員の主体性を奪う

先週末に日曜から火曜にかけて、フェリー、車、電車を乗り継ぎ、
直島、高松、高知、福山、広島を訪問しました。
限られた時間の中であちこち移動しましたので、なかなかの強行軍。
火曜日の朝はホテル発朝6時でした。

最初に訪れたのは直島。ここにはベネッセさんがやっているアートスポットがあります。
昨年ベネッセの担当役員の方からご紹介いただき、ずっと気になっていました。
あいにくどよよんとした天気だったのですが、快晴であれば、さぞかし
素晴らしい光景だったろうと思います。

まだ、足を踏み入れたことがない方へ。オススメです。
なんだか静かな気持ちになります。  http://www.naoshima-is.co.jp/

直島は町の表情も印象的です。あちこちに昭和40年代の面影があります。
庭が見えてしまう低いブロック塀、トタン張りの家、近所だけのためにあるような食堂、
大人を見ると挨拶する子ども・・・。 40年前にタイムスリップしたような印象がありました。

確かに言えることは、ここの子供が自分の意思で挨拶していること。
誰かに言われてやっているのではありません。大人に会ったから挨拶する。
昔、私たちが自然にやっていたことをやっているにすぎません。
ここにヒトづきあいの原点があると思います。


さて、今日のテーマは、なぜヒトは制度やルールに縛られ本質を見失うのか。
ここ最近、私が強く問題意識をもっていることです。

"大事なこと"を共有するために、はたまた誤解しないように明文化したものが
制度であり、ルールのはずです。しかし、いつの間にか"大事なこと"への関心は薄れ、
むしろ制度やルールを守ることが優先されてしまう傾向にないか。
あげくの果てに制度やルールの細部がどんどん複雑になり、気がつくと、
"大事なこと"はベールの向こう側へ行ってしまってはいないか。

例えば人事。組織はヒトで成り立っています。ヒトがきちんと動くことで戦略が実行され、
顧客価値が現実のものになります。その組織が、将来に向けて
成長し続けていけるかどうかもヒト次第。これらの結果として業績が向上するわけです。

ということは、ヒトがきちんと動くような環境をつくること、ヒトと組織が成長していくような
環境をつくること。これらが経営にとっての最大の関心事であり、それを可視化
したものが人事制度であり、ルールのはずです。

実際はどうでしょうか。ヒトがきちんと動くことよりも、ヒトが育つことよりも、
"公平な処遇"が旗頭になり、それに基づき、細かい人事制度・人事規程が設計・
運用され、実は人事制度がヒトがきちんと動くことの足かせになっていませんでしょうか。

そもそも"ヒトがきちんと動く"という意味からして、既に取り違えているかもしれません。
これは"上司の思いとおり動く"ではありません。組織の中のそれぞれのヒトが
主体性をもってビジョンや戦略の実現に向けて動く、ということです。
ポイントは主体性です。"上司が思いとおりに部下を動かす制度" と考えた途端に
制度やルールはその上司のために存在するものになり、それ以外のヒトの主体性を
奪う話になります。

もしかすると"公平な処遇"を実現する、と考えること事態、管理する側と管理される側
という関係性があることを前提にしているかもしれません。
そろそろ、そういう考え方をぶち壊したいですね。
管理された中で主体性をもって動くことは難しいと思います。枠の中で動くことになるので、
どうしてもスケールが小さくなりますから。

管理などしなくても、全員が夢を共有して、顧客のことを真剣に考え、コスト意識も高く、
困っているヒトがいたら助け合う、そんな環境になっていれば、全員が主体性をもって
きちんと動きます。これを目指すべきではないでしょうか。

そうなると主体性を発揮しやすい環境づくりのためのルール、例えば「嘘をつかない」
「約束を守る」とか「全体最適を考える」「お互いを信じる」等・・・こういうことだけを
決めれば後は要らないかもしれません。

人事部門は、ルールの番人ではなく、社員が主体性をもって動ける環境をつくる
ことだけをやればよいのではないでしょうか。
(給与支払いなどの人事事務は別の話ですが。)

嘘をつくだろう、約束を守らないだろう、全体最適を考えないだろう、
お互いを信じていないだろう、といいうことからスタートしていませんかね、
世の中の人事制度は。

そういう疑いがあるヒトは採用しなければいいのです。万が一、不幸にも
そういうヒトが出てきたら、即アウトにすればよいのではないでしょうか。

直島の子供が自分の判断で挨拶するように、原理原則だけ共有して、
後は自分で主体性をもって行動に表す。全員がそう動く、ルールは最小限。
そんな組織は、とても強い組織になるような気がしています。



おまけー1:旅行中に花粉症が明らかに悪化。
高知の方によると「高知は日本有数の杉の産地じゃけん」。
(・・・季節を考えて、出張先を決めるべきでした)


おまけー2:ホワイトデー。
バレンタインの"友チョコ"への御礼をひとしきり行なったところ、
絶対にあげていないヒトから「素敵な贈り物、ありがとうございました。」
というメッセージが・・・


おまけー3:日経ビジネスオンラインのY副編集長とは波長が合います。
雑談してるだけなのに、いつも後でちゃんと原稿が出来上がっております。
金曜日もそう。1時間の予定が1時間半に。 念のために広報のバケラッタKさんに
「今日のテーマは何だっけ?」と聞いたところ、「若ハゲ防止です。」 
(そういう内容だったけかなー)