柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.269 「0から1」と「1から100」

携帯端末、メール、インターネット、地デジ・・・

いつの間にか、世の中はデジタルコミュニケーションのツールなしには
成立しない様相です。ところが、このデジタルコミュニケーションについて、
その本質を学べる場があるかというと、まだまだ不十分だと思います。

デジタルというと、どうしても、映画とかゲームとか、Webサイトの制作とか・・・
いわゆるクリエイターの世界の話という印象があります。
現実はそこに留まる話ではありません。
我々は、デジタルコミュニケーションの恩恵の中で、当たり前のように生活し、
仕事をしています。デジタルツールは、すでに空気のような存在になっています。

事業の成功モデルを考え、より効果的かつ効率的に事業を運営する。
いつの世でも経営を担う人間のアジェンダです。当然ながら、その際の視点は、
ヒト、モノ、カネと時間、情報といった経営資源の組み合わせ、または、
それらの組み換えです。

ここでデジタルコミュニケーションの知見があるかどうかで、ROI(投資対効果)が
だいぶ違ってきます。インターネットが普及して14年、まだまだ過渡期であるとしても、
リーダーがデジタルコミュニケーションに疎いと、本質的な判断を誤ったり、
致命的な判断ミスを犯すことにもなりかねません。

これは、私企業だけでなく、行政の世界でも同じことが言えます。

以前にも書きましたが、小中学生が携帯電話を持つことについて、
その使い方、意味を教えずに一方的に取り上げるのは、デジタルコミュニケーションの
本質に目を向けていない"もぐら叩き的解決"にすぎません、
根本的な解決になっていないと思うのです。

デジタルの知見・技術を活用して、ヒトとヒトが更に深く、かつ便利にコミュニケーションが
取れるようにする、これがデジタルコミュニケーションの本質だと思います。

ところが、デジタルというと、どうにも誤解があります。隣のヒトに声をかけずに
メールを送るようなことを促進するわけではありません。

現在、カルチュア・コンビニエンス・クラブのCOOを務める傍ら、
デジタルハリウッド株式会社(通称:デジハリ)の社長を兼務しています。

世の中のリーダー候補のみなさんにデジタルコミュニケーションの重要性を
理解してもらいたい、という想いから、大学院スタッフのみなさんと
大学院の改革に着手しています。
デジハリ大学院を、経営を担う皆様にデジタルコミュニケーションについて知り、
考えを深め、実践してもらう場にしていきます。

この試みをできるだけ早く本格化させるべく、1月から3回にわたって
有識者委員会を開催しました。
メンバーは、デジハリ大学院で教鞭をとっていただいている専任教授の方、
ビジネスを教えるという点から某大学の教授、経営者としての経験豊富な方、
国際的視点を有する方の4名から構成しました。

できれば2010年4月から新しいカリキュラムでこの内容をより鮮明に
打ち出していきたいと考えています。

さて、この委員会のオフ会で、「0から1を生み出す」ヒトと「1を100にする」ヒト
という面白い議論をしました。
便宜上、前者を企業家、後者を事業家と呼びます。
斬新なアイディアをビジネスとして立ち上げるのが企業家、それを成長させるのが
事業家というイメージです。

企業家には、世の中に無いものを生み出すクリエイティブな力があります。
目利きの特殊な才能と言ってもよいでしょう。
中には"天才"と言ってもおかしくないヒトもいます。

後者は、企業家のアイディアを膨らませていく力があります。組織を動かし、
利害関係者に働きかけ、継続性のある事業として成長させることができます。

私は、誰かが誰かを育成しようとするのは無理だし、育成できると考えること自体、
おこがましいと考えています。全ては当人の成長スイッチがオンになるかどうか
だと思うからです。しかし、そのための環境づくりについては、
意識してやるべきだと考えています。それが人材育成のパイプラインになります。

そうは言っても企業家、とりわけ、天才型の企業家については、周囲がどうこうできる
とは思えません。誰から何かを言われるまでもなく、このタイプのヒトは常に
成長スイッチが入っています。

邪魔しない方がよいかもしれません。しかし、企業家は基本的に自己中心的ですから、
一緒に働くチームの輪がなかなか広がらない。
一緒に働くヒトのココロが持たないのです。
また、根拠なき自信がありますので、資金面でも問題を起こしやすい傾向にあります。

ここに優れた事業家がいると話が違ってきます。天才的企業家が生み出した「1」を、
着実に「100」に成長させます。企業家の夢が現実化します。
但し、この事業家に「1」を生めといっても、たいした「1」は出てきません。
そこは優れている点が違うのです。

しかし、優れた企業家がいてはじめて事業家もその力を発揮できる。
この相互補完性を意識しておくことが組織運営上の肝ですね。

企業家はどうしても自然発生に委ねるしかない・・・。とすると、企業家を支え、
企業家のアイディアを具現化して、「1から100」に発展させることができる
事業家人材が育つ場づくり、が実は重要なのかもしれません。

ちなみに、デジタルコミュニケーションについての知見は、企業家、事業
そのいずれにおいても有効です。これは、思考のインフラの一部ですから。



おまけー1:昼下がりの代官山。
奇跡的に次のアポイントまで25分ほど時間が空いたので、ヒルサイドテラス
お気に入りのカフェへ。入ってびっくり。お客さんが全員私と同世代の女性、
しかも、みなヒラヒラのミニスカート! 全員にチラ見されました・・・怖い。



おまけー2:「39歳までに組織のリーダーになる」(ポケット版)、早くも重版になりました。
ありがとうございます。新人のみなさんへ、先輩からのギフトとしてご活用くださいまし
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おまけー3:オススメの本です。
「壊れる日本人」(インターネット依存症への告別) 柳田邦男著 (新潮文庫) 
なかなか痛い思いをしますが、こういう意見に耳を傾けずにデジタルコミュニケーションを
語ってはいけないと思いました。
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