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柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.292 ホテルで学んだこと-その2

昨年と今年の春に入社した社員を集めて、
経営陣(CEOとCOO)と対話するという催しをしました。
先週1回実施、今週もう1回予定されています。


ある意味で白紙状態だった若者たちが現場で変な風に感化されていないか、
入社時に抱いていた会社や仕事のイメージと現実とのギャップに悩んでいないか、
新人だからこそ気がつく「ここが変だよ」は何か・・・、


こうした事に関心があったわけです。


当日はSW中に気が緩んで?ひいてしまった風邪の影響で発熱中。
新型インフルエンザではないものの、セキが出るのでマスク姿で参加。
100名くらいの新人たちとの対話を通じて、いろいろな気づきあり。
やはり、直接の対話が一番。


社会人2年目というと、私は京王プラザホテルの4F、5Fの大型宴会場で
ウエイターとして働いていました。
今から思うに、この頃は「惑う」の連続。


学生時代から続けていた劇団の主宰(座付き脚本家)も続けていましたし、
ホテルもおもしろくなり、新規ホテルが出来ると見学に出かけたりしていましたし・・・。
一方で、もう少し"まともな"仕事に就きたいとも思い、
コンビニエンスストア中途採用試験を受けてみたり・・・


まあ、とにかく、目の前の全てのことにがむしゃらに(クリアな見通しや計画無しに)
取り組んでいたことを思い起こしました。
コンビニエンスストアについては、

内定通知をもらっておきながら、土壇場で辞退。
今から考えると、とんでもないやつでした。
(行っていたら、違う人生になっていたなー)


数回前に「ホテルで学んだこと」として、
宴会場で働いていたときのエピソードを書きました。
今回はその続きで、ホテルのフロント業務を通じて学んだことを書きます。
今日のテーマは「ホテルで学んだこと、その2」。


フロントといっても、私の勤務は基本的には夜間。
ナイトシフトと呼ばれるもので、夜17時に始業して、翌日の朝10時頃に終業。
2日分まとめて働いておりました。
このため、10時頃に仕事から"あがって"からの勤務はなし。
いわゆる"あげ"になります。ナイトあけを利用して映画を見に行ったり、
新宿の通称"小便横丁"に飲みに行ったりしていました。


当時住んでいた鷺沼のマンションの隣人からすると、
昼間に赤ら顔で帰ってくるし、夜になると頭をかっちりと油で固めて出て行くので、
間違いなく"夜の仕事の人" と思われていたことでしょう。
(しかし、これはある意味で正しい。)


フロントでチェックインを担当しているときに鍛えられこと。
それは、このお客様は信頼できるか、それとも・・・の審美眼です。
世の中には悪い人がいるもので、ホテルに泊まり、
部屋付けでいろいろ食べたり、飲んだりしておきながら、
精算せずに姿を消す輩がいます。これをスキッパー称します。


うっかり忘れて・・・ではなく、スキッパーは完全なる確信犯です。
当然ながら、チェックイン時に各登録カードの氏名、住所はでたらめ。
電話番号ももちろんでたらめ。


こういうことをする人がいるので、ホテル側も防備策をとります。
チェックイン時にお預かり金(デポジット)をお願いしたり、
クレジットカードの番号を控えさせてもらったりするわけです。
今では当たり前の行為になっていると思います。
なにしろネットを通じた予約だと、当日いきなりキャンセルした場合の
ギャランティーとしてクレジットカード番号を入力しますし。


しかし、当時はまだそんな習慣がないので、
チェックイン時にお預かり金をお願いすると"俺を信用できないのかー!"
と激怒される方も少なくなく、現場ではこの対応に苦慮していました。


この時、私は個々のお客様の滞在目的をイメージして、瞬間的判断で
"お願いする・しない"を決めていました。


予約はいつなされたか、チェックインされる方が
ロビーからどんな感じでカウンターに近づいてきたか、
荷物量、同行者の様子、チェックイン時の対話中の様子・・・これらのことから、
"この人はどんな人でどのような用途で今日お泊りになるのだろうか・・・?"
とイメージするわけです。


例えばこんな感じ。



"あまり気の進まない出張で来ているな。空き時間の観光をご案内しよう"

"わけありの宿泊。あまり、声をかけない方がいいな"

"記念日の宿泊。レストランをご案内した方がいいな"   ・・・ 等


この手のことを確認するために、お部屋は高層階がよいか、
低層階か、東向きか西向きか、食事はどうする、チェックアウトは何時くらいか、
初めての滞在か、お困りのことはないか、などと話しかけることもしていました。


中に話をしていても、どうにもイメージできない人がいました。
そういう場合には、お預かり金をお願いしていました。
すると、財布を車に置き忘れてきた、とか、ホテルを間違えたとか、
いろいろなことをブツブツ言って姿を消すヒトが結構いました。(あやしい)


私がフロントに関わっていた2年半の間に出したスキッパーは一件だけでしたので、
このやり方はなかなか効果的だったのだろうと思います。
初めてお会いするヒトについて、直感的にその人の背景をイメージする。
いいトレーニングになったと思います。


ビジネスの世界では、多くの人にお会いします。
その人が信頼できるかどうか、この見極めを初期の段階で短時間でできるか。 
この見極めの確度が高くなると、大きな仕事がうまく回るようになります。


やはり、ホテルでの人生修行はいいと思います。
(ホテル側で企画提案したらよいのに。)




おまけー1:
チェックイン時に"今日は何人いるの?"と質問し、"10人です" と応えると、
"はい、10万円"という感じでチップをくれる大金持ちがいました。


あるとき、この人が黒のゴミ袋をずるずるとひきずりながらロビーを歩いていたので、
"お預かりしておきましょうか?"とお声がけしたところ、


"いいの? 5億円入っているけど"。
袋の中を見たら、確かに万札がぎっしり。さすがにビビりました。


おまけー2:
「おめえのところのハゲに言っといたんだ!」と怒鳴る電話に
「私ども・・・、ハゲがおおございまして・・・、どのようなハゲでございましょうか。」
と切り返していた先輩に、すげえと思ったことを思い出しました。