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柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.296 働く力と働く心

金曜日、福岡出張のため都内から羽田空港までタクシーを利用しました。
小さい頃から"モノレール大好き"なので、
基本的には浜松町からモノレール、というのが私の定番なのですが、
この日は荷物が多かったのと時間がなかったので
タクシーを利用したわけです。


この運転手が障害をもった方でした。
明らかに喋ることに障害がありましたし、聞く方に時間がかかりました。
悪気がなく一生懸命に接してくれたのですが、道を間違え大回り。
出発時刻に間に合うかどうかヒヤヒヤしました。


飛行機に乗ってからも、どうも気分がスッキリしません。
時刻に間に合わないかもしれない、というイライラ感から、
この運転手とタクシー会社を心の中で責めていたからです。


運転手さんは"申し訳ない"という想いでいっぱいだったと思います。
料金が想定される金額の倍になっていましたし、時間のこともありましたし、
よく回らない口で"すみません"と繰り返していました。


タクシーの運転手という仕事は、乗客を目的地まで安全に、
かつ期待される時間内に運ぶこと、それが使命です。
健常者であっても、経験が浅いと難しいこの仕事を、
どうして障害のある人にやらせているのか・・・という否定的な想いと、


もしかするとこの方は後天的に障害を持つようになり、
車の運転が最も得意な分野で、それをタクシー会社が
顧客クレームのリスクを承知の上で、雇っていたとしたら、
それは受け入れるべきではないかという想い・・・この葛藤です。


また先日、肢体障害がある方が大きな荷物を持って
作業しているのを窓越しに見ました。
さすがに荷物を持ち上げるのが大変らしく、何度も失敗しています。
その周囲を通り過ぎる人がいるのですが、誰も手伝おうとしません。
胸が苦しくなりました。


一方でハッとしました。もしかすると、
私も女性やお年寄りに対して手を差し伸べるよりも、
障害を持った人に手を差し伸べることに躊躇をおぼえるかもしれないと。
窓の向こう側にいたとしても、声をかけていいものか、
迷ったあげく声をかけそびれるのではないかと。


これって私だけじゃないと思います。
個人的にその人のことを知り、普通に接することができれば、なんのためらいもなく、
声をかけることができたはずです。
日常的に障害を持ったヒトたちとの接点がいかに少ないか、
これが躊躇の背景だと思います。
健常者と障がい者が普通に接している環境になるべきなのだと思いました。


しかし、この状態を目標化して頑張ってはいけないと思います。
特別なことにしてしまうと"無理に仕事をつくる"ことになります。
そこに"お仕着せ"が生まれます。
これでは進みません。あくまでも自然につくることが大事だと思います。
結果として、それが真の意味で障害を持ったヒトの雇用機会につながると思います。


別の視点からの問題意識です。雇用対策。これは国としての最大課題の一つです。
先日、経済同友会の「雇用問題委員会(実は副委員長の一人)」の議論の中で
気づいたことがありました。


雇用創出のために、グリーン関連とか介護関連とかで
**名みたいな議論があります。
国が失業者の受け皿として新しい仕事を用意するというものです。
過去にも構造不況業種や国鉄の清算事業対策で同様の施策があったと思います。
私はここに大事な議論が欠けていると思いました。


それは「働く力」と「働く心」です。


さまざまな理由で失業しているヒトの中には「働く心」が折れているヒトがいます。
その状態で新たな仕事についても、
力を発揮するのは難しいのではないかと思います。


日本全体の雇用を考えるときに、雇用の総キャパシティを増やさないことには
失業問題は解決しません。
その際に、新たに創出する雇用に「働く心」が折れていないヒトを充て、
「働く心」が弱っているヒトについては、そのヒトにとって最もハードルが低い
仕事をやってもらう、という"玉突きシフト"はできませんでしょうかね。


例えば、社会人として10年継続したヒトの中から
(これは社会保険の加入年数でわかりますね)1年限定で
「新たに創出される仕事」に公務としてついてもらう。
裁判員制度と同じやり方で通知が届くというイメージです。
この期間の給与は現職での固定年収を雇用調整助成金で保障するようにします。


一方で公務派遣した場合の空席を組織内で埋めてもらうことで空く仕事を、
失業対策として1年契約でやってもらいます。
この仕事は失業しているヒトにとって、できるだけ、
なじみのある一般的な仕事にします。


一般的な仕事を1年こなすことで「働く心」を復活してもらい、かつ新しい仕事
ではなく一般的な仕事の経験を積むことになるので、1年契約が終わった後の
Employability(雇用される可能性)は高まっているはずです。


10年同じ仕事をしたヒトにとっても、公務とはいえ、経験のない仕事をすることは
視野を広げるいい機会になります。また、この仕組みでヒトを公務派遣し、
かつ受け入れをする企業には補助金が支払われる・・・


こんな仕組みができるといいなあと思いました。(誰か民主党に言ってください。) 


ということで「雇用」について考える機会が多い1週間でした。



おまけー1:高校時代、最寄りの「狭山ヶ丘」駅まで自転車で通っていました。
駅近くの自転車置き場を利用していたのですが、ここを悪友のTも使っていました。
そうなると、当然に"サドル"をとったり、チェーンを外しておいたり、
という悪戯合戦になります。


ある雨の日、Tがしめしめという感じで自転車に悪戯をしているときに、
悪いことに自転車の持ち主が。
なんとTは私のではなく同じ自転車の別人のものに細工をしていたのでした。
しかも、何度も何度も。


その持ち主は卒業した中学校の教頭・・・。


そのNと二十年以上ぶりに再会しました。


"柴田がはじめたからだぞ"。 (やっぱり、おぼえていました。)



おまけー2:そのTが失業していました。48歳、働き盛り。

自分は恵まれているなあ、と痛感。