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柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.442 日本の人事制度を見直す

今日は久しぶりに「人事の目」というタイトルにふさわしい"人事制度"がテーマです。

 

人事制度は事業を成功させるための強力な施策です。経営戦略、事業計画を実現するために

必要な人材集団をつくるためのもの。それが人事制度です。

 

人の働き方と人に関わるおカネの管理という要素もありますが、それよりも大事なことは

"いかに事業の成長に資するか"。ここがポイントです。

 

先日某コンサルティング会社の社長さんから「柴田さん、ウチはどの企業にでも適用できる

人事システムを販売しています。ぜひ一度見てください!」と言われたのですが、

そこに"事業を成長させるため"という気配が全くなかったので、"こりゃあかん"と思い、

お茶を濁しています。どこの会社でもOKな人事制度と言われても全く価値を感じません。

 

そうは言うものの、世の中の多くの人事制度がまだまだゼネラリスト養成の職能資格制度です。

どこの会社にも適用できる仕組みです。上記のコンサルティング会社の社長がそれを

自社製品の強みとしているのも頷けます。しかし、それだと人事制度が事業の成長や進化の

足枷になりえます。大量のゼネラリストを育成しても、事業は推進されませんので。

 

ゼネラリストのゴールは「長」です。それを基軸にしている人事制度ではマネジメント職に

就かないと給料が上がりません。専門性の高い人であっても、結局はマネジメント職として

処遇することになります。

 

但し、実際のところ、専門性の高い人の多くにはマネジメント適性もあるものです。

このため、専門職なるものを設定しても、本当の意味で専門性が超A級の人達がその専門職に

就くことはありません。むしろマネジメント適性はない、しかし、そこそこ仕事はできる

という人たちの処遇職になりがちです。

 

人事制度はスペシャリスト養成であるべきです。事業を推進するために、どのような専門性を

持った人材がどれだけ必要か。ここが人事制度設計の基盤となります。そうなると当然に

事業内容が異なれば、人事制度の枠組みが異なります。

 

自社の事業内容・構造・戦略から、どのような専門性集団(ジョブファミリー)が必要か。

それぞれのジョブファミリーのキャリアパスはどうなっているか。これが人事制度の大きな

枠組みを決めます。その中でジョブファミリーごとの習熟度と求められる成果の大きさに

応じて階層を決めるわけです。

 

ジョブファミリーごとに階層の数は違って当然です。それを幅広く括って、社内横断的に

階層を設定するのはありです。但し、想定されるキャリアパス以外の異動は積極的な意味では

なくなりますから、そこは個別対応でどうにでもなるものです。

(無理に階層を合せなくてもいいだろうと考えています。)

 

また、職能資格制度は評価の積み上げで昇格が決まります。影響力のあるポジションに就く

までに時間を要します。また下方硬直性(落ちない)のため、処遇は常に"過去の貢献"が

主軸になります。事業環境の移り変わりが激しいときに過去の貢献が主軸で良いのか、

という素朴な疑問への答えはありません。

 

更に評価の積み上げが効いてくることになると、将来的に影響力のあるポジションで

仕事をしたいと思うと、うっかり長期に休むことができません。育児休業もとれませんし、

介護で休むこともできません。集中的に社外で自己研鑽することもできません。

 

昇格審査にあたって、A以上の評価を何年以上という縛りをなくしましょう。上位資格の

要件を満たす力があるのであればGOとしましょう。ある階層より上については、

毎年格付けする「年次ゼロリセット方式」でいいじゃないですか。

 

毎年ゼロリセットするのであれば、家庭の事情で仕事をセーブする年があっても、

その状況が変わったときに一気にキャッチアップできます。今後、生産年齢人口が減る

日本においては女性の労働力への期待が大きいわけですが、評価積み上げ方式では

どうしても女性が割りを食います。

 

階層別の研修も入社時と3年目くらいで終わりでしょう。その後はそれぞれの

ジョブファミリーでゴールとする人材像づくりのための研修を企画した方がいいです。

 

将来の幹部候補生たるマネジメント人材については入社して3年~5年までに本人の

希望と適性から人事権をジョブファミリーから人事に移管し、育成のための配置を

実践していく。これが基本です。

 

職能資格制度が誕生して機能した時代背景、経済状況と現状は異なります。

今後のことを考えるのであればゼロリセットして人事制度を考え直しましょう。

 

この他にも「残業」という概念、期間の定めのない社員が正社員という考え方、

兼業禁止という考え方、人事情報システムは人事部とのためのシステムであるという考え方、

日本と海外という考え方など等、手を入れるべき箇所はたくさんあります。

人事制度とその周辺の考え方について、"そもそも"論の議論をして、従来のやり方に

囚われずに然るべく改善すべきタイミングに来ていると思います。

 

 

おまけー1:とある企業のセッションで一緒に担当してもらうアメリカ人(52歳)から

電話がありました。(もちろん英語)

 

「レイジ、今日のクライアントとのディナーのドレスコードは何?」

「着物か、スキューバダイビングのスーツだな。」

「(大笑)そうか、わかった。」と言って切った3分後にまた電話あり。

 

「レイジ、着物と浴衣の違いがわからん」 (こういうやりとりができるのが楽しい)

 

おまけー2:そういえば、その昔、アメリカから上司が来日したときのこと。

初めての日本でわからないことだらけという上司からの質問。

 

「レイジ、何か気を付けることはあるか?」

「日本ではトイレで用を足す前に二回手を打ち鳴らす。これを柏手と言います。」

「オー、そうか。見た事ある。やってみる。」

 

六本木の某ホテルのトイレから戻ってきたその上司。

 

「レイジ、トイレで困っている中国人がいたからカシワデのことを教えてやった。」

 

(こういうやりとりもまた楽しい。)