柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.463 鍛え直し、はじまる

この秋、成熟した大企業の人材を成長産業へ移管するための"鍛え直し"を
やることになりました。

数年前に人材の流動化促進を論ずる某会議で発言したことが蘇ります。

「大企業で滞留している人材をベンチャー企業にもっていっても使いものにならない。仕事の進め方、スキルセットが全く違う。報酬格差を埋める施策は本質論ではない。」(と私)
「じゃあ、どうしたらいい?」(と某霞が関の方)

「もし、やるのなら徹底的に鍛え直すしかない」

因果応報。

この話は大企業のリストラ、アウトプレースメントではありません。
それは私の仕事ではありません。むしろ、本気で中高年の"オーバーホールをしようというものです。鍛え直し後、会社を変わることもあるでしょうが、同じ会社の中で新規事業を担う(立ち上げる)も大いにありです。

大きな組織では「人が足りない」と言いながら、その実、余っています。安定収益や組織構造がある意味で"余剰人員"を含んだ体制を容認していることが多いです。一方で、こんな話を聞きます。

"既存事業の右肩下がり基調は否定できない。将来のための新規事業(成長事業)の立ち上げが必要。しかし、それを担える人材がいない・・・"

今回の"鍛え直し"は、その候補者を社内で調達して、徹底的に"鍛え直して"、その任に当たらせるというものです。対象者は35歳からという想定です。

20日間。みっちりやります。途中数日のお休みはありますが、まあほぼ1か月ぎっちりです。

20日間を4つのテーマに分けています。まず最初の5日間は、徹底的に「Throughput(スループット)」の強化をします。仕事はインプット、スループット、アウトプットの組み合わせ。知識、経験、情報をいかに整理、組み合わせてアウトプットにつなげるか。
これがスループットです。

同じような仕事を大企業下で長くやってきますと、視界が限定され、スループットが固定化します。ここをぐっとストレッチするトレーニングをやります。"イシュー・ウイング"(と私は称しています)の千本ノックです。課題を中心に置き、「Why so?」と「What happen?」を繰り返していきます。これを個人作業、グループワークで徹底的にやります。

第一期の仕上げは「体験型ケーススタディのその1」。絶対解のない状況下で発生する大問題、不測事態への対応演習です。「理と情」のバランス、情報収集、整理が求められます。

ちなみに第一期は4泊5日の泊まり込みになります。(朝、走ったりもします。)

第二期はアウトプット強化です。自分の考えを1分でまとめる言語技術。長文を200字にまとめる文章術。加えて、利害関係者が多い中でのコミュニケーション術。これらを徹底的にやります。

第三期は人を育成したり、動かすためのスキルセット・マインドセットを演習と実学で身に着けてもらいます。「コーチング」の進め方を学び、その後、大学生たちをリードしてビジネスコンテストでプレゼンテーションをしてもらいます。ここでは自分がプレゼンするのはNG。
大学生たちをいかに伸ばすことができるか。彼らとの信頼関係を築けるか。ここが問われます。

第三期の最終日は「体験型ケーススタディのその2」。

「その1」に英語によるコミュニケーションが加わります。英語力を鍛える最良の方法は"英語を使わざるを得ない環境に身を置くこと。これを実践してもらいます。(その後、自助努力でビジネス英語を鍛えるための演習をします。)

第四期は、実際の成熟小売産業をリサーチ、実地見聞してもらい、その成長シナリオをまとめてプレゼンテーションしてもらいます。このワークが20日間の仕上げになります。

9月に16名、10月に16名を対象に行うこの贅沢なプログラム。今回はトライアルという位置付から、某"霞が関"の予算下で行うことになっています。ということは参加フィーはミニマム。交通費とか宿泊費程度と思われます。(思われます、というのはこれはIndigo Blueの主催ではないので。詳細は近日中に公に発表があるでしょう。)


やや話が飛躍しますが、私は近い将来、公的年金の支給開始年齢が85歳になると思っています。国民皆健康施策、トレーニングブーム、若い時代の栄養状況から人間の寿命はどんどん伸びるだろうと思っています。今の日本人の平均寿命は82.9歳ですが、これが105歳くらいになるのではないかと。

公的年金は"現役引退後、20年程度"面倒を見るという思想でしょうから、支給開始年齢は85歳になります。実際、65歳から公的年金が支払われて、40年も支払いをしていたら、財源はどう考えてみても持ちません。

だからこそ、今の時代の"中高年"で停滞している(力を使い切れていない)人達がいたら、その力が錆びついてどうにもならなくなる前にその実力を覚醒させておくべきだと思っているのです。



おまけー1:ちなみにこの"鍛え直し"ですが、ある意味で「キャプテン・アメリカ」をたくさんつくるようなものなのですが、「キャプテン・アメリカ作戦」というネーミングは1秒でボツでした。

おまけー2:"イエティ、ヒマラヤ最後の謎「雪男」の真実"を読了。うーむ。納得いかん。

おまけー3:新著「遊んでいても結果を出す人、真面目にやっていても結果の出ない人」。これが増刷になるのが、今日現在のささやかな夢です。 (^_^.)