柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.470 外資系人事マネジャーへ。今後に備えよ。

知人が世話役をやっている「外資系人事課長の勉強会」にちらりと顔を出してきました。
参加者はおよそ20名。この手の勉強会はいいですね。スケジュールの都合で滞在時間
2時間弱でしたが、久しぶりに自主的勉強会の息吹に触れることができました。

その昔、マーサー社長時代に「10年後の人事を考える会」なるものを企画していました。
「人事」は経営上、最重要機能の一つなのですが、ややもすると「人事・労務の管理人」
になりがち。この最大の原因は多くの担当者の意識が「管理人」だからです。
「ビジネスを伸ばすのも凹ますのも人次第」なのですが、そこへの意識が薄い。
ここを変えるための場をつくりたい。これが当時の問題意識でした。

そこで、外資系を中心とする人事マネジャーたちが長期的かつ幅広な視点から世の中の
動きを考察し、その結果、人事の役割はどうなるかを議論する会を始めたわけです。

私がマーサーを離れて既に6年。現在、この企画がまだ存続しているのかどうか知りませんが、
当時の参加者とのつながりはいまだにあります。共に勉強した仲間の絆は強いものです。

さて、これからの時代、外資系の人事マネジャーたちは従来にはない使命、動き方を
求められることになると思います。そのための準備を!というのが今日のテーマです。

外資の本社の観点からすると、多くの企業で日本マーケットの評価は「?」だと思います。
そもそも、日本でビジネスを展開するということは、"そこに市場があるか?"、
または、"そこは重要な機能を置くに値するか?"の2点の質問に対して、そのいずれかに
「YES!」だからのはずです。ところが、中期的に見てそこが怪しくなったというのが現状です。

"そこに市場があるか?"についてはジェネリック医薬品再生可能エネルギー分野等の
一部を除くと明らかに「黄色信号」です。なにしろ、人口が減っていますから。かつ、
政府の財政から今後、消費税や社会保障費が上がることが明白。外資系法人への税制面での
優遇措置も弱い。加えて、放射能汚染問題、地震・・・成長戦略が明らかに書きにくい。
それが日本です。一方でインドネシア等の東南アジアを見るに"伸びしろ"があります。
海外投資という点から相対的に劣位です。

機能面の判断をする際に、上記の規制系の条件に加え、良質な労働力が潤沢にあるか、
が問われます。が、これも「黄色」。いつまでたってもグローバルな環境で仕事ができる
人材が増えないし、若年層の多くが「別に・・」と反応が薄い。バリバリやれる人材はいるが、
起業か日本の外で就職。

本社の判断としては今まで以上に「撤退」というオプションを現実的に持つことになります。
そうなると、容易に想像できるのが社員の入れ替えです。撤退しやすい形にシフトしようと
なるでしょう。

これに追い風なのが今後の労働市場の変化です。

経験はあるが定年で退職。但し、元気。なおかつ、住宅ローン、養育費、または確定拠出年金
運用成績が低調のために老後の生活資金が必要という人材がたくさん出てきます。
いわゆる"元気でカネのない高齢者"が労働市場にたくさん出てきます。

この人達は"別に・・"の若者よりも物分りが良く、かつ熟練しています。なおかつ、
賃上げ圧力も弱い。数年後には引退することが明らかです。この人達を量的に主力人材とせよ、
という指示がきてもおかしくありません。場合によっては、全員を業務委託にして
法定福利費をセーブしようと考えるかもしれません。

このような指示が来たときにどう対処するか。外資系人事マネジャーとしては、
そうなったときにどう対応するかについての準備をしておいた方がいいでしょう。

しかし、これは「守り」です。一番いいのはグローバルのマネジメントチームに
日本人をたくさん輩出することです。これが「攻め」。そうなると、撤退はなくなります。
本社機能、またはそれに準じたものが日本に残ります。この状態になるよう仕掛けていくのが
良いでしょう。つまり、人づくりです。

いかにそれぞれのビジネスラインで日本を超えたポジションに人を出せるか。ここです。
外資系の育成にかけるおカネの使い方は「選抜人材へ集中投下」、その他については
「自助努力への支援」です。ここをうまく利用しましょう。

日本以外のロケーションで活躍できる人材づくり。日本企業の課題でもありますが、
外資系企業ではこれを進めておきませんと、死活問題になりかねません。
外資系人事マネジャーのみなさん、プライオリティをぜひここに!

(さもないとリストラを命じられて、その実行をし、転職・・を繰り返すことになりますよ。)


おまけー1:人づくりは社内にモデルとなる人物がいることで相乗的に進みます。
モデルの影響力を活かしましょう。

おまけー2:影響力と言えば、"ハゲ"もそうだと思い始めました。ハゲは親の影響です。
遺伝よりもむしろ影響です。

親がハゲていると、それを日常的に見ている息子は"俺も・・"という自己暗示にかかります。
これが髪をして"抜けてもしょうがない"という状態にマインドコントロールしているのではないかと。

おまけー3:個人でコンサルタントをしている方、将来的にそれを目指している方へ。
9月22日と23日のこの会合。実践的な勉強の場として最適です。お薦めします。

https://www.facebook.com/iafjapan