柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.476 若い"逸材"を凹ます

秋晴れでもこう暑いと紅葉狩り気分になりませんね。

さて、今回は凹み議論です。

素材が良ければ社会人3年目くらいまでは"イケます"。但し、それだけだと伸び悩みます。

地頭の良さ、情報処理能力、PCスキル、英語力・・・、これらが秀でていると、
周囲からは「あいつはスゴイ。将来が楽しみだ。」と高く評価されます。
但し、そういう"逸材"が30歳を超えた頃から思ったほど伸びなかったりします。

あれ?と思っているうちに、下の人間やかつては"それほどでもなかった"人間に
抜かされていきます。しかし本人の自意識は高止まり。心の中では"こんなはずじゃない。
上がアホだから自分の良さがわからないのだ・・・"と。

その数年後には"あいつはメンドクサイ"という使いにくい人材という評価になります。
残念。せっかくの素材が腐っています。

両親に理解があり、"一流大学"を軽くクリアしてきた人材にこの傾向があります。
彼らは基本的にそれまで人生の中で凹んだ経験がありません。学歴、人間関係形成力、
いずれをとってもA級の素材。"僕だって凹んだことくらいあります"と言いますが、
同世代が感じたような凹み方とは違います。(たいした凹み経験ではありません。)

"何とかしたいが、どうしたいいのかわからない"とフリーズ、そのダメさ加減を
徹底的に指摘されるが動けない。当然結果もダメ。自分はなんてデキない人間だ・・・と
痛感し、自己嫌悪する。これが本当の凹みです。この経験があるからこそ、
次の凸につながります。

若い"逸材"は自分の想像を超える"不条理"さや"感情のプレッシャー"に弱い。
ところが世の中は不条理で満ち溢れています。いろいろ人がいろいろな想いを持って
生きています。当然に感情の波があります。

このため、若い"逸材"が多くの利害関係者と仕事をするようになると、そこで"不条理さ"と
"感情のプレッシャー"に否応なしに遭遇し、これまでのような(自分が思うような)
パフォーマンスが発揮できなくなります。これが足踏みです。この状態から抜け出すには、
まず凹み体験が必要です。

そこでは、処理能力が高い有能さなど関係ありません。問われるのは人間性に他なりません。
人間性は人の痛みがどれだけわかるかで決まります。表面的な好感度だけではありません。
人の痛みがわかるには自分自身が痛い想いをしてきているからこそ、です。凹み経験が
少ないのが効いてしまうのです。

先週、某企業で「OT:Organization theater(体験型ケーススタディ)」を使って
選抜人材のアセスメントをするという試みがありました。参加者は20代後半の選りすぐりの
人材です。確かに優秀。背景や情報整理が匠。

しかし、OT特有のConflict(葛藤状態)+量的プレッシャーが襲ってくるとパフォーマンス
レベルががくんと落ちました。OT終了後の振り返りで"自分がこんなにデキないとは
思わなかった"というコメントあり。良かったと思います。疑似体験ですが、
"凹み"を初めて実感したようです。次につながります。

更に、この凹み経験が少ない"逸材"たちは感情的に怒られるのに慣れていません。
上記企業とは別の企業ですが、OTの前半で"怒鳴られ、後々までそれがトラウマになって、
"それを避けるが第一優先になり判断軸がズレていきました。

私からの個別のフィードバックの際も、素材は極上、しかし、このままだと足踏みする
感のある人には丁寧に、かつハッキリと"こういう点を意識しない、さもないと・・・"
とやります。優秀な素材は希少な存在です。それを伸ばさない手はありません。

若いうちにいろいろなところで"自分は何てデキないんだ・・・"と痛感しまくりだった
人間が30歳くらいからスルスル伸びるのはこのためです。
(もちろん、デキないで終わらずに、そこから猛烈にキャッチアップするから伸びるのですが)

おまけ-1:若い逸材の男子のもう一つの弱点。年上の女性からの「説教」+「頭ナデナデ」攻撃に
めちゃめちゃ弱いです。

おまけー2:ここ数日、「凹み」モードです。まあ、キツイですが、51歳になっても「凹める」のは
ありがたいことです。(凹ませてくれる人の存在に感謝)

おまけー2:このOTの見学会(私が解説します!)を以下にて行います。ご希望の方は以下まで「
見学希望」としてお申込みください。(ご参加希望者は締め切りました!)

■開催日程
11月8日(金)9:00~18:00 (一部時間帯の見学も可)

■会場:場所:株)ディスコ 神楽坂HCスタジオ
http://www.disc.co.jp/corporate/map-kagurazaka.htm