柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.481 その場しのぎの構造とツケ

"やるべきことを後回しにして、その場しのぎを続けていると大きなツケを払うことになる。"

"その場しのぎ"とは、後先のことを考えずにこの瞬間を乗り切るための言動、態度のこと。

意識してこれをやっているヒトはそんなにいません。"その場をしのげればいい"という
気持ちで対応していると、"その場"をしのげません。そんな軽い姿勢だとすぐに露見します。
むしろ逆効果。事態を複雑化、悪化させます。

(これは"その場しのぎだ・・・")と思いながらも、どうしようもないので、その場を
乗り切るために、とにかく全力を尽くす。全力で説明する。全力でお詫びする・・・
これはよくあると思います。

ただ、"しのいだ"後の対応が問題です。目の前で火を噴いていることへの対処が終わると
一安心。その出火原因への対処を怠り、むしろ、次の課題に意識を向けてしまいがちです。

こうなると、本質的な課題解決には至っていないので、次に火がつくときには大火事に
なります。これが結果として、その全力行動を"その場しのぎ"にしてしまう構造です。

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とはよく言ったものです。

"忙しい"のは確かに直接的な原因ですが、その忙しさをつくっているのは自分自身
なので、それを理由にはできません。どんなに忙しかろうが、そこは優先順位の問題。
何が大切なのかを見失っているのです。または、根本原因に触ることから逃げているのです。

根本原因に立ち向かうのは覚悟が必要です。自分を含めた周囲も痛い想いをするはずです。
但し、それが出火原因であれば徹底的に対処しておかねば未来がありません。

今の日本の現状は"その場しのぎ"のオンパレードのように見えます。直近の民主党政権
マニュフェストはわかりやすい例ですが、その前の自民党時代の政権運営も大半が
そうだったと思います。業績不振、不祥事を起こす企業・団体についても同じことが
言えると思います。

体験型ケーススタディ(Organization theater)には、"その場しのぎ"の怖さを知ってもらう
要素も含まれています。目の前で怒る関係者を鎮めるための"その場しのぎ"の対応をするが、
根本的な課題の解決になっていない場合には、後々、"大爆発"を起こし、更に苦境に陥る
ことを体験してもらいます。

こうした時にベンチャー企業や破たんした企業などで"その場しのぎ"の怖さを身に染みて
知っている方々の動きは違います。様々な行動を"その場しのぎ"にしないようにフォロー
する動きを採ります。一方で、安定した大企業からの参加者ほど、"その場しのぎ"に
しがちです。大企業が苦境に陥るとリカバリーが難しい原因はここにあると思います。


やることがたくさんある、そういう中で、諸々のことを"その場しのぎ"にしないためには、
何かを断念することを意識した方がいいでしょう。

自分が"こうありたい"という全てを実現しようとすると何かが落ちてしまいます。
"こうありたい"の程度によりますが、関係者がたくさんいて、夢が大きい人ほど、
全てを追い求めようとすると、どこかにしわ寄せがきます。

しわ寄せは"その場しのぎ"の結実です。

しわ寄せの対象になりやすいのが「自分の健康」です。無理をして倒れる。これはやっては
いけないことです。私も若い時代に仕事のし過ぎで倒れたことが何度かあります。但し、
代役が効かない立場になってくると、つまり、自分一人の身体ではなくなってくると、
"倒れる"のは大変な迷惑が家族、友人、社員、お客様等、各方面に及びます。
責任ある立場の人は倒れてはいけません。

次にしわ寄せの対象になりやすいのが「自分の家族」です。これは家族に対する甘えです。
身近であるが故に"わかって欲しい"が高じて、"わかるべきだ"に転じがちです。家族に
我慢を強いることになる。これを続けているから「居場所のないお父さん」になるのです。

"やるべきことを後回しにして、その場しのぎを続けていると大きなツケを払うことになる。"

私を含め、大いなるツケを抱えているみなさんへ。 頑張ってツケを払っていきましょう!


おまけ-1:三谷幸喜さんの作品の底辺にあるのは"その場しのぎ"です。「ラジオの時間」
という作品は特にそれがフューチャーされています。但し、この映画では"その場しのぎ"が
ハッピーエンドを呼んでいますから安心して見れますよ。

おまけ‐2:記憶にある人生最初の"その場しのぎ"は、小学2年生のときにトイレの個室を
間違って開けてしまい、そこで同じクラスの女子と目が合ったときの対応です。
(当時は男女のトイレがまだ共同でした。) 

「!!」という表情の彼女(確か江川恵美子さんという名前だった)
「出席確認・・・」