柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.497 熱がヒトを動かす

「あなたの説明はわかりました。ただ、あなたとはやれない。一緒にやっていこうと
いう熱を感じないから。」
 
体験型ケーススタディ:Organization theater(OT)ではプロの役者が扮する登場人物
とのやりとりを通じた、いろいろな気づきがあります。昨日行ったのは、企業の
経営統合を巡るケースでした。
 
「熱を感じない」合併される側の労働組合の委員長(役者)が新会社の新社長を務める
ことになった人(受講生)に対して放ったセリフがこれでした。
 
ヒトを動かすものは「説明」ではなく「熱」。その「熱」が伝導するから、"やろう"
という気持ちになる。「説明」はその後に効くものです。冷静になったときに
「さっき聞いた説明」がその人を納得させる材料になります。ヒトが動くのはこ
の流れだと思います。
 
「熱」は声の大きさとか、言葉の多さ、身振り手振りの派手さで生まれるものでは
ありません。同じく昨日のOTの中で、新社長がいかに信頼に足る人物かをこんこんと
語った受講生がいました。その声は小さく、ボソボソしていました。しかし「熱」は
伝わりました。合併される側の副社長(役者)はその「熱」を感じ、流れそうなっていた
経営統合を再度検討することにしました。
 
人間関係は化学反応です。良い反応が起きるか、何も起きないか、はたまた悪い反応か。
すべて、この「熱」の仕業だと思います。
 
みなさんの周囲にも「熱」を感じさせるヒトがいますね。私が思うにこの人達には
共通する要素があります。
 
まず、"自分を捨てている"。
 
自分のために相手を利用しようとしていたり、相手を動かすことで自分だけの利を
求めていたり(これは「打算」)、心のどこかで相手を信じていなかったり(これは「懐疑心」)
・・・これらがありません。打算的な言葉や疑いは相手に伝わります。そうなると、
どんなにいい言葉を並べ立てても、ロジカルに話しても、自分が動かされるまでの
「熱」は伝わりません。
 
次に"相手のことを良く知っている"。
 
メッセージを伝えて動いて欲しい人達のことをよく知っています。その人達の想いや
困り事を知っている。それが伝わります。"わかってくれている"、これが「熱」を
伝導させます。
 
更には"退路を断っている"。
 
後で責められないようにと、発言内容に"保険"をかけることをしません。"保険"を
かける人は、"・・・をやる"ではなく、"・・・をやる方向"と言ったり、
"やります"ではなく"努力します"と言ったりします。無意識のうちに、できなかった
ときの「言い訳」を用意するのです。これが"保険"です。
(但し、実際には責められるときには責められるので"保険"の効果はありません。)
 
"保険"つきの言葉から「熱」は伝わりません。ライフジャケットを着たヒトから
「この船は安全だから乗りなさい」と言われても信用できません。
 
営業でも組織のリーダーであっても(政治でも)同じだと思います。ヒトを動かして
何かをしてもらうためには「熱」が必要です。「熱」を蓄え、伝導させる。
これこそがリーダーシップを発揮するための基盤ではないかと。
 
柴田塾や体験型ケーススタディ:OTを通じて受講生たちに持って帰ってもらいたい
最大のポイントです。
 
(この「熱」の蓄えと伝導の経験がヒトの年輪となり、「器の大きさ」を決めるのでは
ないかと思う今日この頃です。)
 
 
おまけ-1:年輪についての明言その1
 
"人間にもまた年輪がある。それは精神の中に刻み込まれるから、樹木の年輪のように
定かではないが、その人の経験と生きる努力の中から生まれる"
(木の魅力を語った中3向けの道徳の教科書から)
 
おまけー2: 年輪についての明言その2
 
元気が一番。人にも年輪がある。年輪は苦労や失敗の経験では出来ない。
喜んだ数で出来上がる。喜びはモチベーションを上げる「気」の力である。
「気」は言葉や書籍、自然の中にあり、人に元気を与え導く糧となる。
それが、年輪を育てる。(OakキャピタルのFacebookから)
 
 
 
おまけー3:年輪について想いをめぐらせていたときに見た「カンヌでグランプリを得たCM」