柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.501 組織民度を上げる

明らかに問題なのに、それが問題だと気づかない。これは組織民度の問題です。
 
上からすると、とんでもない仕事の進め方が現場で横行。それを指摘したところ、
ポカリとした反応だったり、何が悪いんだという反発・・。こういう場合に怒鳴り
散らすのではなく、組織民度を上げるための方策を講じましょう。
 
組織民度は私の造語。民度(みんど)とは「特定地域に住む人々の知的水準、教育水準、
文化水準、行動様式などの成熟度の程度を指すとされる。」(ウィキペディアより)。
この"特定の地域に住む"を"特定の組織・団体の所属する"と置き換えると
組織民度の定義になると思います。
 
戦略をいくら講じても、社員の行動が伴わなければ結果は出ません。戦略を講じたら
それを実行するためのプロセスを設計し、かつ、関係者(社員・取引先・顧客)が
その新しいプロセスに沿った行動をとるようにする。このための仕組みを考案し、
動機づけを図る。これが戦略を実行するためのパッケージになります。
 
戦略や方針を説明しただけでは関係者は変わりません。そりゃそうです。社長や戦略
企画者と同じ目線ではないからです。きちんと言ったのに"なんで変わらない!"と
苛立つ社長さんへ。苛立つ前に行動を変えるための仕掛けや動機づけ策を講じましょう。
 
但し、戦略を実行するだけの組織民度が足りていない場合には、民度を上げるために
かなりの力技が要ることを覚悟してください。
 
新しいツールを使ってもらうようにするとか、これまで全くやっていないことをさせる
のは比較的容易です。難しいのは、"これまで良しとされてきたことを止めて、新しい
行動をとってもらうこと"。これは単なる動機づけだけではどうにもなりません。
 
例えば、従来当たり前にやってきたやり方が法令違反になるとか、新たに設定した品質
基準にそぐわない、新しい組織体制ではNGだとか・・・しかし、これらの身体に馴染んで
いることを変えてもらうのは大変です。
 
説明会・研修を全社的に行い、その重要性を説き続ける。これは最低限必要な手立てです。
但し、これだけですと、昔ながらのやり方・行動を根絶させることはできません。環境を
変えましょう。その組織の中の"当たり前"感を変えるのです。このために最も効果的
なのは顔ぶれを変えることです。
 
組織内の人事異動は15%くらいまでです。それを超えて人を動かしますと一時的に
オペレーションが混乱・停滞します。但し、民度を上げる行動変革を狙うのであれば
ガラッと変えてしまうのがよいでしょう。さすがにこれを全社的にはできませんから、
どこか特定の部署を決めて、そこをガラッと変えましょう。外部人材の投入も効果的です。
 
昔のやり方を知らない人材、つまりは"外人"を多数にしてしまうのです。そうすることで
昔のやり方をしてしまう人が"自分はおかしい"と自覚してもらう。このプロセスです。
 
まずは、"外人"を使って特定の組織の民度を上げて、その後、個々の人の民度を上げる
というやり方です。その際に本丸の組織からではなく、本丸から比較的遠いところから
手をつけるのが良いでしょう。本丸の民度をいきなり上げるのは無理です。やり方があります。
 
新規事業のようなところで徹底的に本丸の常識とは違う行動様式を根づかせ、その後に
その経験者たちをどかっと既存事業の中の影響力あるポジションに放り込んで、本丸の
組織民度を上げる。1年ではできません。2~3年程度の時間を要します。オフィスの
レイアウト変更、引っ越しも効果があります。目に見えて違う環境になっていく。
これがポイントです。
 
この改革に着手したらやり切りましょう。特に社長。辛抱です。途中で昔から一緒に
やっている抵抗勢力からの"甘言"で改革に扮そうしている"外人"の梯子を外す人が
いますが、これは改革の目を根こそぎとることになりかねませんから。
 
おまけー1:数日前にネットで報道された「某紳士服販売業者の詐欺商法」。
現場の民度が問われる典型的な事件。
 
 
おまけー2:TBS×WOWOWの「MOZU」。これは力作。久しぶりに録画してちゃんと見ました。
カメラワークも通常のドラマを超えています。お薦めです。(木曜日の夜9時)
 
 
 
おまけー3:「こちら電話回線のメンテナンスの***です。電話回線がつまっています。
勢いよく息を吹いてください。」私の指導でIndigo Blueの取締役のTさんが名古屋のF氏に
非通知で電話。
 
さすがに何度もやられているFさん。「フーフー、で、おたくさまのお名前は?」
「あ、あ、綾小路です」とTさん。(まだまだだ。)