柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.508 ローパフォーマーを生み出すもの

私は“ローパフォーマー”とか“ボトム10”という言葉が嫌いです。10年前にはこれら
を多用していました。今考えると鼻持ちなりません。その後、事業会社経営者を経験し、
自分で会社を興し、それなりの年齢になってきたこともあり、少々考え方が変わって
きました。“ハイパフォーマー”とか“ローパフォーマー”という言葉そのものが
ナンセンスかもしれないと思い始めています。
 
状況によって、誰でもハイパフォーマーになるし、誰でもローパフォーマーになります。
大事なことは個々人のパフォーマンスの出来を見て、ハイとかローと色分けするのではなく、
そのヒトを取り巻く「環境」を見ることだと思うのです。
 
自分で希望してその会社に入ったのに、そこでローパフォーマーになりたい人など
いないはずです。それでも固定的にローパフォーマーと認識される人たちが出て
きているとしたら、その組織にローパフォーマーを生み出す「何か」があるのです。
その「何か」を分析し対処しましょう。それをせずに個々のダメ出しだけをしていると、
天に向かって唾を吐くようなものです。
 
本当の意味のローパフォーマー(何をやってもダメ)はそういるものではありません。
これは明らかなミスマッチの場合だけでしょう。たとえば私の場合、精密機器を製作する
工場に配置された日には永遠にローパフォーマーになります。適当かつ不器用な私は
繊細な作業には明らかに向いていません。ホテルのベルマンも向いていません。
(やったことはありますが)エレベーターを出てから違う方向に行く確率50%超です。
 
こうしたミスマッチは本人がわかります。よほどの事情がない限り、自らその仕事を変える
はずです。
 
本人はその仕事に向いていないと思っていない。それにも関わらず、そのヒトを
ローパフォーマー化させてしまう。そのヒトを取り巻く環境にその原因があると思うのです。
 
特に「周囲の認知」。あの人はこういう人だ、という認知がいきおい、本人のパフォーマンスを
制限し、かつ、周囲の期待値を制限します。
 
「周囲の認知」を決定的にするのは直属上司の日常的な言動です。
“あいつは・・だからダメだ”。これは決定的。そういう認知が広まります。
その上司が思っている以上にその人を“ダメ”にします。
 
デキないからやらせない(外す)をするとしたら、代わりにそのヒトが良いパフォーマンスを
発揮できる役割を探すこととセットでやりましょう。さもないと上司自らそのヒトから
仕事を取り上げることになります。
 
ダメ出しされた本人は何をしたらよいのかわからなくなり戸惑います。しかし、何かやらないと
また怒られるので、何かをするのですが、それは組織のパフォーマンスにつながっていないので
達成感はありません。評価も当然のように低い。そうなると自分はそんなものだ、という
自己認識が固まり、ローパフォーマー化します。
 
この上司の日常的な言動の背景にあるのが「上司と部下の相性」、または「チームメンバーとの
相性」です要するに“合わない”のです。これを“ケミストリー”といいます。人間関係は
化学反応のようなもの。チームのケミストリーが特定のヒトを際立出せ、または置き去りに
していることは多々あります。
 
「チームのことはチームで解決せよ。」そりゃそうなのですが、メンバーの入れ替え、
新人の投入で良い化学変化が起きるのであればやらない手はありません。組織のケミストリーを
ウオッチしましょう。
 
さらに「教えもしないでデキない」と評価する。これもありがち。特に個として優秀なヒト、
特に1を言えば10わかる方はデキないことがわかりません。まあ、ふつうは1を言っても、
その「1」も怪しいという人も結構いるものです。(言い方の問題もありますし)最初から
期待通りに動けるヒトはほぼおりません。期待通りに動いて欲しいのなら、それなりに時間を
費やすべきです。
 
こう考えていくとローパフォーマーを生み出す環境への影響が強いのは直属上司。つまり、
最小組織のリーダーたちになります。彼らがピープルマネジメントへの関心を持ち、適切に動く。
ここを整えることが、ローパフォーマー大量生産を防ぐ鍵になります。ただし、そのリーダー
たちに影響を与えているのがその上層のリーダーたち、さらにはトップマネジメントの面々。
となりますと、マネジメントポジションにいるヒトはすべてピープルマネジメントに関心を持ち、
適切に動く。結局はここに行きつくのです。
 
 
おまけー1:この金曜日、土曜日とクロスウエーブ府中で2日版「体験型ケーススタディ
Organization Theater」を開催。あそこは広く、丸いつくりなのでエレベーターを出てから
ウロウロすることばかり。方向音痴のヒトの運動量を保証してくれます。
 
おまけー2:オフィスで気合たっぷりに仕事をこなし、その後、神谷町から溜池山王まで坂を上り、
その勢いのままに血圧を測ったところ、“げ!”という高さ。心電図の波形、コレストロール値は
改善されているので深刻ではないのですが、数値だけみると“げげ!”という高さ。急ぎ、
テルモの血圧計をAMAZONで購入。新しい機械が家に届くとなんだか嬉しい。
 
おまけー3:お台場の「未来館」。ここは大人でも足を運ぶべき場所。いろいろな気づきがあります。