柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.515  曖昧な表現とリーダーの保身

組織の長になると曖昧な物言いをする傾向があります。その典型が「・・・する方向で

考える」という言い方です。

 

聞き手にしてみると、実際のところ「やるのか」「やらないのか」。これだとわかりません。

どっちにもとれます。

 

発言者の本心は、実行したいと思っているが、各方面の調整や課題をクリアしないと

やれるかどうかわからない。でも自分の気持ちは伝えたい。そうなると、今は

“方向で考える”という言い方をするのが精一杯・・・。というところではないでしょうか。

(その心情、よくわかります。)

 

「やります!」と発言しておいて、後でできなかったときに「できなかったじゃないか」と

批判されたくない。できない可能性について、自分が気づいていることを予め伝えておきたい。

後々になって、わかっていなかったと思われたくない・・・。

 

ここにあるのは自分を過小評価してほしくないという潜在意識です。

 

また、いたずらに期待を持たせて、できなかったときに聞き手の失望感を大きくしたくない

という“配慮”もあるでしょう。ただし、これは独りよがりの“配慮”です。

 

聞き手からすると、やるのか、やらないのかはっきりしない状態に長く置かれる方が

精神衛生上よろしくありません。自分が聞き手の立場になってみたらわかります。

それよりも、実行者の意思を聞きたいものです。この“配慮”は「自分はきちんと配慮

できている」ことをわかってほしい、という潜在意識です。

 

「・・・する方向で考える」という発言の背景にあるこれらの潜在意識は、すべて、

自分を守ためのものです。自分はこれだけ一生懸命、聞き手のためにやっているのだから

批判されたくない、デキない人間だと思われたくない・・・。これらの恐怖心(といっても

それを意識していないヒトが多いでしょうが)が曖昧な表現を生んでいるのではないでしょうか。

 

曖昧な表現であれば、後々言い逃れることができます。ただし、その場面になったときに

実際に“言い逃れ”をする人は少ないはずです。そうなったら誠実に対応すべきと

わかっているからです。それなのに将来の意思を聞かれると、つい曖昧な表現をしてしまう。

 

リーダーたるもの、意識的にクリアな表現をしてみませんか。

 

政治家や行政のエライ方々にしてみると、ちょっとした発言が禍根を残すこともあり、

どうしても曖昧な表現にならざるを得ないのでしょう。良かれと思って発言したことが

多大な影響を及ぼし、自分一人ではどうにも収拾がつかないことにもなりかねません。

その影響度合いについて、私は知る由もありませんので、そういう影響力のある方々に

ついての言及ではありません。

 

ここで申し上げたい対象は、私を含め、もう少し身近な組織の長のみなさんです。

自分の発言について責任をとれるヒトです。

 

Organization Theater(体験型ケーススタディ)をやりますと、この“自分を守る”

意識に侵されているヒトがいかに多いかわかります。そうしないと、今、自分が所属している

組織の中で“生きていけない”のかもしれません。ただし、この“自分を守る”意識が

行き過ぎると自己愛の世界につながり、組織内に他責が蔓延します。これは恐ろしいことです。

 

私はこの背景に成果主義の名の下の過度の競争を見ます。競争は自分以外の人間を

蹴落とすことではなく、切磋琢磨だと思います。企業活動の価値の受益者からすると、

むしろ「共創」であってもらいたいものです。あと、中間上位職の“保身”もあると思います。

自分を守るためにスケープゴートをつくる人たちの行動が周囲をそうさせているのではないかと。

 

 

 

おまけー1:出勤前の30分のトレーニングの前に更に45分、ふだん、なかなかやれないこと

(ボンヤリ思っていることを整理する、未来の絵を描く)をやり始めました。これなかなかいいです。

 

おまけー2:血圧を下げる作戦成功! テルモの血圧計による毎日の検診、胡麻麦茶、運動、

もろもろの作戦を展開したところ、160近かった上の血圧が130台に。(^^)v

 

おまけー3:https://www.youtube.com/watch?v=qvtFzbPpgdQ

(リアル修羅場体験。年頃の娘さんがいる父親必見)