柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.270 4月1日から新社会人になるみなさんへ

もうすぐ4月1日、新年度が始まります。

学生時代、4月を迎えると訳もなくやる気が過大になっておりました。
やたらと新しい授業の登録をしたり、いろんなサークルの説明会に顔を出したり、
各種各様の飲み会や同窓会を企画したり、パーマをかけたり、
街頭で募金運動に協力したり・・・。

4月という響きに新しい人たちとの出会いや、なんとも言えない期待感が高じ、
完全に舞い上がっていました。
ゴールデンウイークの頃には手を広げ過ぎていることに気づき、当然ながら
活動縮小となります。そして反省。

わかっていても、毎年この季節になると世の中が変わるような勢いになる。
まあ、5月病ならぬ4月病でした。

最近では、さすがに4月だからといって、やたらめったら手を広げることはなくなりました。
それでも、なんとなく気持ちが高揚します。プチ4月病かもしれません。

この4月から社会に出る方々はおそらく期待と不安で複雑な気持ちに
なっているでしょう。当然です。いろいろ、考えたり、変に予習したりして、
その素直な気持ちを取り繕わない方がよいですね。後で振り返ると、
それはそれで楽しいものです。

私の社会人1年目というと、ホテルで現場の仕事をしていました。とにかく必死だった
という記憶が残っています。特に宴会場でウエイターの仕事をしているときには、
月平均70時間以上の残業をしていましたので、労働時間も長く肉体的に大変でした。

そもそも、宴席というと昼ごはんと夜ごはんの時間帯にやるものですから、
サービスする側としては、食事ができないわけです。
当時、体重が40キロ代まで減ってしまったのはこのせいです。

特に週末ともなると、結婚披露宴が二回転。結婚披露宴ともなると、
その宴席予定時間の前後からいろいろとやることがあります。
定刻よりも必ず早く来てしまう親族の対応、司会の方との打ち合わせなど
盛りだくさんです。特に受付の設営をいの一番にやっておかねばなりません。
受付を担当されるご友人は宴席開始の1時間前くらいにやってきますから。

宴席名を表示する行灯をいれ、芳名帳を用意。受付テーブルに参列者のお名前
を書いたもぎり(お名前の下に座っていただくテーブルの名前が書いてあるやつです)を
五十音順に並べておく。ここまでやって受付担当の方に受付のやり方を説明・・・
となります。

現場の宴席の責任者(これをキャプテンと言っておりました)は、新郎新婦のケアで
付きっ切りになります。そうなると、宴席のサービス側の運営の全体責任が
自分にありました。

当時、結婚披露宴に張り付く社員は、キャプテン役の社員とそのアシスタント役の
社員の2名だけ。それ以外は全員日雇いの配膳会からの派遣者でした。
配膳会のベテラン(これを黒服という)が料理のサービスを取り仕切り、
それ以外のことは全部、アシスタント役の社員の責任になります。
入社1年目とはいえ、ここは責任者。
だから必死でした。

結婚披露宴はおひらきになっても、なかなか会場付近が空きません。そりゃそうです。
おそらく十数年ぶりに顔を合わす友人たちとか、二次会までの時間が
結構空いていたりすると、参列者としては会場の近くのスペースから立ち去りにくい
雰囲気になります。

しかし、次の披露宴の時刻は迫ってきているので、サービス提供側からする
と気が気じゃないわけです。

特に受付まわりの設定は早くしておきませんと次の方々が困ります。
前の披露宴が11時半開宴で、2時に終わる予定が終わるわけありません。
次の披露宴が5時半開宴、となりますと、4時半には次の方々がお見えになります。
3時を過ぎて、新郎側親族の飛び入りの詩吟などをやられたりしたら、
もうピクピクものでした。

おめでたい御席だから、できるだけやらせてあげたい。
しかし、次の披露宴の受付の設営に支障が出るとマズイ。なんとかならないか。
そこで考えたのが、受付をあらかじめ2つ分用意してしまうことです。
最初から後の披露宴の参列者のもぎりを並べ、その上に、受付にかかっている
グリーンのテーブルクロスと同じ生地のクロスをかぶせ、
その上に直前の披露宴の参列者のもぎりを並べておくというものです。

これだとハラハラしないですみます。詩吟の後に新婦側親族の飛び入りの
日本舞踊とかが入っても大丈夫です。

こりゃいい、とやっていたところ、ある日ベテランの副支配人から
「目の前のお客様に集中しろ」と怒られました。
確かに、受付テーブルが 2段重ねになっているので、もこもこしていることは否めません。
前の宴席の受付としてはベストではありません。しかし、これをやらないと・・・
という想いがあったので、反抗したところ「自分の仕事のことだけを考えるな」
と言われました。

当時、この意味がわかりませんでした。
自分の仕事をきちんとやることを考えることのどこが悪いのか!と憤った記憶があります。
しかし、今はわかります。自分だけ効率を上げてもダメ。
結局は一緒にやっているメンバー全員、お客様・・・全ての関係者の効率や満足度が
上がることを目指さないとエゴなんですね。

しかし、これから社会に出るみなさんに、エゴに陥らないように、とは言いません
自分で必死に考えて、いろいろやってみる。その後、それがエゴだと気づく。
このプロセスが大事なのです。ここは急がず、自分で痛い想いをしながら
習得していくのがよいと思います。この痛い想いをさせないような配慮は過保護、
結果的にみなさんの成長を阻害します。

ということで、頭でっかちにならずにどーんとぶつかっていきましょう、と
人生の先輩として新人に話をしましょうか。
(4月1日の新入社員への講話の内容ができた!)



おまけー1:
宴席と宴席の間の時間がないという根本の問題は、予約のとり方にあります。
現場だけでやれることには限界があります。現場を知らないで予約をとるからこうなる。
(よくある話)


おまけー2:
ホテルの披露宴をたくさんやっていると、いろいろな話に遭遇します。
打ち合わせに来ていた新婦と披露宴当日の新婦が違うとか。
その打ち合わせに来ていた女性が怪手紙を二次会の案内です、と言って
会場外で配ったり・・・


おまけー3:
色直しで戻った新婦がおじきしたところ、文金高島田のかつらがポロリン、とか
キャンドルサービスで参列者の髪に火をつけた新郎新婦とか・・・