柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.536 効率を極めるが思考停止にしない

あけましておめでとうございます。

 

年末年始は時が止まります。31日まで働き2日から通常業務の外資系社長時代がウソの

ようです。この時期は「時を止めて」、いつもと違うダラダラとした時間を過ごす、

これぞ「日本の年末年始」ですね。

 

年末に某デパ地下食料品売り場に行きました。この時期のデパ地下は大変な人混み。

すぐに人混みに疲れてフレッシュジュースコーナーで一息ついていたときのこと。

4番レジでトラブル発生。

 

レジ係の女性が何度も手を挙げてサポートを呼んでいます。レジのPOSがバーコードを

読まなくなったようです。「ご案内」係という名札をつけた男性2名が現れ、いろいろ

やっていますが効果なし。ついにはベテランのレジ係の女性が合流し、レジの裏板を

外して点検する事態に。

 

この時点でレジ停止後15分経過。運悪くこのトラブルに当たった二人組には「すみません、

すみません・・・」とレジ係が頭を下げていますが、状況は変わらず。後方に並ぶ

お客様は放置のまま。

 

この日は年末の買い出し客で全部のレジが長蛇の列。他のレジは進むのに自分が

並んでいるレジが動かないことにイライラしてきた奥様たちの気配を感じて、

おせっかいながらご案内係の男性に近づいて、

 

「こういう時はこの列閉じて、どんどん左右のレジに人を流していかないとクレームになるよ」

 

ご案内係の若い方(たぶん1年目くらいの新人)は私から言われてもイメージできず、

むしろムッとした様子。もう一人の作曲家の新垣さん似の中年のご案内係はハッとした様子で

頷き、タタッと隣のレジに並ぶ女性たち駆け寄り(ここまでは良かった)

 

「あのー、こちらのレジがですね、あのぉ、動いていないので、・・・こちらの方を・・・

いれてもいいですか?」

 

いかにも弱弱しくお願い。(新垣さんの最初の記者会見みたいな感じ)

 

ところが(はあー?)という奥様たちの視線に“新垣さん”秒殺。

何を思ったか急に買い物カゴを片付ける係に変貌。

 

「いいですか?」なんで聞いていたらダメ。こういう時は問答無用でテキパキ誘導しないと

動くわけがありません。しかもどうみても20、30名のお客様を誘導する話になるので、誘導も

3、4名でやらないと却って混乱します。

 

ふと見ると立ち尽くしていた若いご案内係はどこかへ姿を消しています。(あらら)

 

そうこうするうちにサングラスをかけたセレブ風奥様が「ちょっと、どうなってんのよ!!」

と爆発。その連れ合いの青いニット帽の中年男性が「こんなん放置しててどうなってんだよ!

俺、ここの会長知ってるから電話するぞ。」と息巻き始めました。クレーム爆発です。

 

その瞬間、ベテランのレジ係がサブのレジで驚愕のスピードで手打ちで処理を始め、なんとか

動き始めました。くだんのサングラスの奥様もブツブツ文句を言いながらも動き始めました。

再稼働です。とは言うものの、この列に並んでいた人たちは、たまたまこのレジに並んだが

ために30分くらい無駄にしたと思います。

 

このフロアの出入り口に背広姿の、明らかに年末ヘルプの「ご案内係」が数名たむろしていました。

やっていることは「いらっしゃいませ」「ありがとうとざいました」の声掛けと空いたカートの

整理。中にいかにも本社の管理職然とした男性がいたので、

 

「さっき、4番レジでトラブルがあったよ。(状況を説明)・・・レジの女性が責められて

可哀そうだった。こういうときこそ、背広組がちゃんと仕切らないと。」

 

「連絡があれば行きますが・・」とこの本社の管理職が言い訳。

 

「今日の一番の火事場はレジ。入口じゃない。背広組は火事場に立たないとヘルプの意味ないよ。」

 

「は、そうなんですけど・・・」

 

自分たちは本社からのヘルプなので勝手に指示出すわけにはいかない、という感じでした。

そうですかね。大事なことは違うと思いました。“お客様が気持ちよくお買いものをして

お帰りになる”、これが何よりも大事だと徹底されていたら、動き方は違ったはずです。

 

最初にクレームしたセレブ奥様だけでなく、この日この状況を目撃したお客様たちは帰宅して

「聞いてよ・・・」と話すでしょう。そのうちの何人かはあそこで買うのはやめよう、と

思うでしょう。

 

この場面で大事なことは「お客様の誘導」と「待たされてイライラしているお客様のケア」。

これ以上に大事なことはありません。当たり前とみなさん仰るでしょう。しかし、現場で

身体が動かない社員ばかりなのです。目の前のお客様を助けるよりも内部ルールを優先。

それが現実です。

 

実はこれ大企業でよく見る現象です。内部ルール優先は大企業を効率良く動かす仕組みですが、

この副作用で末端が思考停止になるのです。効率化・合理化を追求すればするほど、

この副作用によって現場が麻痺していきます。

 

効率を極めるが現場を思考停止にしない。このための手当をしておきませんと次世代を担う

リーダーは内部から生まれません。手当の秘訣は「自分の感覚に自信を持ち、自ら行動する人」を

各年代に一定数置くこと。一定数いれば現場は麻痺しません。

 

このために必要な育成施策は、資質のありそうな人に「経験という“場”を与えて育てること」、

「日々の仕事から離して刺激を与えること」、「目標となるような先人に会わせること」です。

 

今年も“いろいろ”提案して参ります。本年もよろしくお願い致します。

 

 

おまけー1:“いろいろ”な提案についてお話しするショーケースを1月27日と28日にやります。

https://indigoblue.co.jp/indigo_blue_day/

 

Indigo Blueのオフィスでやりますので入れる人数に限りがあります。両日とも私が直接お話しします。

体験イベントもあります。人材育成責任者の方のご参加をお待ちしております。

 

おまけー2:もう一つの会社PATHのCEOメッセージです。来年は「場づくりをPATH」で、

「ヒトと組織づくりをIndigo Blue」で。徐々に2社をシンクロさせていきます。

 

http://www.pathway.co.jp/whatsnew/150101.pdf

 

 

おまけー3:これからのトレンドはますます「Experience:体験」「Emotion:感情」だと思います。