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柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.632 八戸に地方新聞の未来

八戸に出かけてきました。

 

数か月前に旧知のクリエイティブ・ディレクター関橋英作さんからお誘いを受けたのが

きっかけです。

 

「新聞不調の時代。しかも10年後には購読家庭が大幅に減少することがわかっている中で

デーリー東北新聞社は頑張ってますよ。いろいろ面白い試みをやっています。

美味しいお酒とお魚を用意して待ってます。」

 

デーリー東北新聞社の社長さんとの会食のつもりでいましたところ、前日に「デーリー東北

主催:柴田励司講演会」が企画されていることが判明。(汗)急きょ資料を用意して

「柴田塾デーリー東北版」として2時間の講演をしてきました。参加者はデーリー東北の

幹部の方々、地元の企業の方々、デーリー東北が冠講座である弘前大学八戸サテライト

「経営戦略講座」の受講生など多様な方々でした。

 

それにしてもここ10年で新聞の存在感はだいぶ変わりました。私は今でも経済3紙を

自宅で購読していますが、いわゆるニュースはネットで見ています。朝刊や夕刊の

トップニュースには「これ、前の話じゃないの?」という印象です。忙しい朝だと

新聞に目を通さないこともあります。みなさんもそうですよね。

 

今後の新聞社をどうするか。各社頭を悩ませていることでしょう。新聞を広告媒体として

商売している事業者もそう。近いところでは書店、小売店もそう。その関連の卸業者も

そうですね。今後、自社をどのように変貌させていくか。もう待ったなしです。

そういう状況下にあるデーリー東北社がどのような取り組みをしているのか。

ここに興味がありました。もちろん、“美味しいお魚”も魅力的でしたが。

 

施設を見学させていただき、社長さんたちとの会食を終えて思いました。

デーリー東北が始めていることを線でつなぐと面白い展開になると。

 

本社に「デーリー東北ホール」というスペースを昨年4月に作っています。もともとは

大型輪転機があったスペースです。そこを改装して高さ13メートルの吹き抜けのホールに

しました。ジャズコンサートや講演会などを定期的に開催しているようです。更に、

この11月には本社横に「新聞カフェ」なるカフェと寿司屋を併設した不思議な

レストランをオープンしました。ここでは全国の地方誌を手にとることができます。

もちろん、お寿司も本格的です。

 

これ以外にも昨年1月にはDTクラブなる会員向けの「各種講座」を立ち上げています。

「文化・芸能」「小旅行」「スポーツ」など会員限定の多彩なイベントを通して、

青森県南・岩手県北の新たなコミュニティーを目指すとあります。主催事業として

スポーツ大会や囲碁大会をやっています。

 

似たような試みを全国紙の会社でもやっていると思いますが、違うのはこれらの

取り組みがつながって「顔が見えるコミュニティ」に発展する可能性があることです。

「顔が見える」とは、“お互いに素性を知っている”“同じ地域に住んでいる”

“共通の知り合いがいる”“共通体験をしている”という意味です。顔が見える

コミュニティで語られること、知りたいこと、コミュニティメンバーの動向を

「編集して提供する」という姿が見えてきます。

 

従来、新聞は知っておいた方がいい「世の中の情報」を届けてくれる存在でした。

それを知らずに会社や学校や集会に行くと周囲と話が合わない、世情に疎いと思われる。

だから多くの人が目を通しました。その情報の対価として購読料が支払われてきたわけです。

多くの人が目を通すので広告媒体としても売ることができたわけです。

これらが新聞の収益モデルでした。

 

かつては、この「世の中の情報」の“世の中”の定義が、テクノロジーの進歩と共に

日本全体、世界へと広がってきました。それにつれて、地元の情報よりも遠い情報の方が

価値があるかのようなイメージが定着しました。言うならば自宅近くの歯医者の評判よりも

遠くのアメリカ大統領の発言の方が価値があるという幻想です。

(実際は近くの歯医者の情報の方がずっと役立つはずです。)

 

ここが様変わりしたのです。全日本的情報、全世界的情報はネットニュースに代替されました。

なんといってもネットの方がタイムリーですから。しかも動画で伝えることができます。

今後全国紙系はますますキツイ状況になるでしょう。

 

逆に地方紙は優位です。読者にとって身近な情報を現場で編集して伝えることができるからです。

そのときに最も濃い情報は「顔が見えるコミュニティ」の中での情報です。デーリー東北の

試みをつなぐとこの濃い情報発信ができるだろうと思いました。

 

八戸に限らず、地方紙を購読している世帯は高齢者が多いので、年々減ることは間違い

ありません。しかし、その地方出身の人は全国にいるはずです。“離れていても地元の

ことは気になる”はずで、その人たちがネットを通じて手軽に地元の濃い情報を得る。

都会にいる地方人。働きかけ次第でこの人たちが新たな購読者になります。

 

このコミュニティを濃いものにするのが「人が集まるイベント、飲食スペース」です。

地元の何でもない人たちがたくさん登場するようになると更に濃くなります。顔が見える

コミュニティの中でしか意味のない濃い情報が編集されている。それが今後の地方紙の

姿ではないかと思います。デーリー東北にその兆しを見ました。今後の展開が注目されます。

 

 

おまけー1:青森県というと“遠い”という印象があるのですが、新幹線で3時間弱です。

大阪に行くのと変わりません。「イエス・キリストの墓」「メドツ(河童)」

「東北エモーション」「日本唯一の女性大名」「洋酒喫茶プリンス」など等、

八戸は私好みの話題が豊富。また行きます。

 

おまけー2:デーリー東北について詳しく知りたい方へ。同社のホームページをご覧ください。

 

http://www.daily-tohoku.co.jp/