柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.638 レーダースクリーンの明晰さ

OT(Organization theater:体験型ケーススタディ)を開発して6年になります。

関係者によると、昨年はなんと121日もやったそうです。3日に一回、どこかでやって

いた勘定になります。開発者としては嬉しい限りです。ちなみに、その多くが

選抜された次世代リーダー候補者向けのトレーニング、またその選抜です。

 

OTは有事のビジネス・シミュレーションです。5名程度の受講生がチームとなって、

M&A、自社製品による死傷事故への対応、倒産リスク、海外子会社の再建等の会社の

危機的状況に立ち向かうというものです。上司、顧客、取引先等の利害関係者には

プロの役者が扮し、“そのもの”になって登場してきます。

 

OTを通じて受講生が問われるのは直接的には「不測事態における課題対応力」です。

より具体的には自分の“レーダースクリーン”の明晰度合い“です。

 

何かが起きた時に、または何か新しいことを展開するときに、リーダーは自身の

“レーダースクリーン”の明晰さが問われます。利害関係者は誰か、その利害関係者

それぞれにとってのベストシナリオ、ワーストシナリオは何か。これらについて、

瞬時にどこまで見えるか。“レーダースクリーン”が曇っていると対応が後手になり、

苦しくなります。

 

初めての事象、慣れないケースでは、緊張感から“レーダースクリーン”そのものが

ありません。なにをどうしたらよいか全くわからず右往左往という状態がそれです。

そのうち慣れてくると“レーダースクリーン”が表出し、先んじて動くことが

できるようになります。

 

普通の会社で普通に仕事をしていると自分の“レーダースクリーン”を磨くチャンスが

多くありません。”レーダースクリーン“を磨くのは“修羅場”の経験が一番です。

“修羅場”は自分のやる気、経験値、スキルをフル活用してもどうにもならない、

という状態です。そこでの痛い想いが自分の“レーダースクリーン”のバージョンを

高めてくれます。ところが、優良企業や大企業であればあるほど(当然ながら)

“修羅場”がありません。

 

かつて不測事態が発生したときに脆い企業、経営陣を垣間見ました。これはいかん、

と思いました。安定した世界にいると“レーダースクリーン”を意識しなくとも

過ごしていけます。しかし、それですと将来、経営陣になったときに困ります。

次世代のリーダーたちの“レーダースクリーン”を鍛える場を創ろう。

そう考えて開発したのがOTです。

 

現在、私はパスという上場しているグループ会社のCEOとして再建を担っていますが、

日々、リアルOTの連続です。思い起こせば、マーサーの社長時代、キャドセンターの

社長時代、CCCのCOO時代など常にそこにはリアルOTがありました。明らかにこれらの

経験が強く活きています。トップというのはそういうものなのです。

 

さらに、“レーダースクリーン”が明晰であったとしても、実行するために

必要なスキルがあります。

 

例えば:

 

「使える財務」:財務諸表が読めるではなく、事象・施策が自社の財務にどのような

影響を与えるのか。ネガティブな結果にならないための施策は何か。自らわかるのが

いいに決まっています。少なくとも、財務担当者が説明する内容を理解するだけの知識は必須です。

 

「相手が言わんとしていることをまとめて確認する表現力」:いろいろな人がいろいろな

ことを言うものです。みな言いたいことを言います。その中には「幹」の話と「枝」の話が

あります。これらを聞き分けて、本質的な「幹」の話をとりまとめて合意してもらう。

この力がリーダーには必要です。複雑な案件において、リーダーがこの力を発揮しないと、

組織が烏合の衆になります。

 

「自分が言いたいことをわかりやすくまとめて表現する力」:「伝える」のではなく

「伝わる」プレゼン、文章を創る力のことです。これがないと自分の意図が誤解されたり、

思うように組織が動きません。

 

これらの表現力は「英語」であってもそのレベルがあまり落ちないようにしないと

グローバル企業ではリーダーの役割を担うことができません。

 

「感情を受け止め感情に訴えるパッション」:人を動かすものは理屈ではなくパッションです。

相手のパッションを受け止め、自分のパッションを伝播させることができるか。

ここは人間性が問われます。 等等・・

 

OTの中ではこれらのスキルが十分でないと事態が悪化します。多くのエリート系の人材は

うまくできません。しかし、できないでいいのです。ここは「稽古場」なので。できない

ことで自分の実力について内省し、次につながればいいのです。そういう意味ではOT終了後

にアセッサーが個々にフィードバックしますので、自分の気づきの確認と気づいていない

弱点を知ることができます。

 

自分で開発しておいて言うのもおこがましいですが、こんなプログラムは他にはないと

思います。まだ見たことがない、体験したことがないという方に向けたOTの場があります。

ぜひ、OTを体験してみてください。

 

2017年 2月17日(金)~ 2月18日(土)

2017年 3月10日(金)~ 3月11日(土)

 

http://www.indigoblue.co.jp/program/ot.html

 

 

この他に女性リーダーの育成を意図したOTもあります。社内政治、できない部下への対応、

女性の目から見て不合理な上司への対応が求められるものです。こちらは新作。2月6日・7日に

特別開催の予定です。残席わずかですが、関心のある方はメルマガへの返信でお知らせください。

 

 

おまけ:オフィスの近くの中華料理屋でランチを頼んだところ、ごはんに髪の毛が・・・。

“あの、髪の毛が・・”と言ったところ、“何だと”と言って出てきた料理人はスキンヘッドでした。

こういう場合、どうしたらいいのでしょうか?