柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.642 外部人材活用のために

外部からの経営者の招聘、幹部の中途採用、女性社員や若い社員の抜擢。

 

これらの人事がうまくいくかいかないか。経営学の先生のメタ・アナリシスの結果を

待ちますが、私の経験則としては「成功確率は低い」です。

 

しかし、そんなこと言ってもおられません。外部人材の登用を成功させたいものです。

 

うまくいかない理由は明白です。「受け入れの準備」が不十分なまま迎え入れ、

時間の経過と共に、その招聘者・抜擢者の「スポンサーだった人」がいなくなるからです。

 

「受け入れの準備」とは、その抜擢者が影響を与えることになる社員たちの「心」の準備です。

とりわけ、直接的な影響が大きい人たちの「心象風景」には気を遣うべきです。

その人材を登用したことで組織感情が乱れ、動かなくなってしまうと元も子もありません。

 

まずは、この“直接的な影響が大きい人たち”に事前相談してください。その人事を決める

前のプロセスに参画してもらいましょう。なぜ、同じチームメンバーの中ではなく、

社外に候補者を求めたのか。何を期待してこの候補者を選定したのか。この2点を

説明した上で決める前に会ってもらいます。

 

社外に候補者を求めた場合に、その候補者が優れた経歴の持ち主であればあるほど、

来てもらえるかどうか不安なので、“多少の気になる点があっても目をつぶって話を

進める”ことになりがちです。そこを“直接的に影響の大きい人たち”には冷静に

見てもらえます。本当に採用すべきかどうかの意思決定のために有効です。

しかし、これは副次的なこと。主眼は“直接的な影響が大きい人たち”の「心」の準備です。

 

“直接的な影響が大きい人たち”との初対面の場で候補者がすべきことは、不安の払しょくです。

魅了できたら理想的です。“この人なら大丈夫だ。”と思ってもらえるかどうか。

この入社前の初対面の印象は極めて重要です。その人事がうまくいくかどうかの50%を

決めると言ってもいいと思います。

 

社内のあちこちでこの登用人事の行方について興味津々のはずです。“直接的な影響が

大きい人たち”は、どう思っているのか。ポジティブなのか、ネガティブなのか。

その動きをみて自分の動き方を決めようと思っています。組織心理とはそういうものです。

“直接的な影響が大きい人たち”が不安に思っていない、さらには期待していることが

表面化すれば、受け入れ準備としては万端です。

 

ちなみに候補者はここで人間力を問われています。初対面の人といかに良い関係を

つくれるか。組織のリーダーは自分にレポートするメンバー(部下)と「1:他」の関係と

「1:1」の関係の両方の関係づくりを意識する必要があります。

この初対面は「1:1」のスタートになります。

 

その役職が上であればあるほど、“直接的な影響が大きい人たち”の目は厳しくなります。

しかも、候補者が自分よりも年齢、経験が浅いとなるとその厳しさが増します。

 

候補者はその人たちと勝負してはいけません。自分の方が「学歴が高い」「専門性が高い」

「市場価値が高い」的な態度からの“マウンティング”をするのは愚の骨頂。

受け入れ側の目は一気に冷めます。“お手並み拝見。どうぞ勝手にやってください。”

となってしまいます。

 

10年ほど前のことです。とある大企業からお誘いをいただき、そこの副社長クラスの方と

会食しました。そのとき、その人のマウンティングがすごかった。自分はこんな著名な

人間とつながっている。こんな実績がある。自分で会社は動いている・・・“。

そんな話のオンパレードでした。その会社の社長さんと人事からは熱烈にお誘いいただいた

のですが、お断りしました。この人との”政争“が馬鹿らしいからです。

 

受け入れた後の採用を決めたスポンサー(上位職)のスポンサーシップも欠かせません。

どんなに優れた人でもミッションが大きければ大きいほど「山あり谷あり」になります。

最初からうまくいく人の方が少ないものです。結果を出すための仕込みにそれなりに

時間を要するからです。

 

しかし、結果が目に見えないとノイズが出てきます。このノイズの影響で“掌を返した

ような態度”の人たちが出てきます。持ち上げた人を一気に落とすのです。そういう声が

スポンサーの耳に入ってきます。スポンサーはノイズに負けてはいけません。自分で

最初に決めたタイムフレームがあるでしょう。1年とか3年とか。その間は何があろうと

(倫理的な問題は除く)スポンサーの旗を降ろしてはいけません。

 

スポンサーが旗を降ろしたと感じた瞬間にその抜擢者への風向きは一気に代わります。

抜擢者には居場所がなくなり、退出せざるを得ないという展開になります。これが

外部からの登用人事がうまくいかない典型的なパターンです。

 

今後、ますます企業を取り巻く環境が不確実になります。社内の純粋培養の人材だけだと

立ち行かなくなります。社外から自由自在に人材を登用できる“力”を身に着けたいものです。

 

 

おまけー1:Y氏の近くで仕事をすると「修羅場」が続出するので「ため」になります。

そのY氏の上司になるのと、部下・後輩になるのと、どちらが良いか。関係者にとって

究極の選択です。

 

 

おまけー2:関西人と話していると自然に関西弁になる人は英語の上達も早いと思います。

ただ、適切な英語ネイティブと話すことが条件ですが。

 

 

おまけー3:PHAZE2期の応募締切が2月14日に近づいてきました。みなさんの周辺の

24歳以下の(息子、親戚、部下など)で“やり抜く人材”にしたい人がいましたら、

ぜひお知らせください。

 

http://phaze.jp/