柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.646 現場がもたない。辞めてくれ。の衝撃

「現場もたない 辞めてくれ」3月8日の日経MJの一面のタイトルです。三越伊勢丹HDの

大西社長の辞任の舞台裏の記事です。衝撃的なタイトルです。

 

個人的には大西社長を存じあげませんし、三越伊勢丹の内実も知りません。実際には

報道されていないこともあるでしょうし、何が真実かはわかりません。しかし、労組から

泣きつかれて「現場もたない 辞めてくれ」と会長が社長に告げたという信じられない展開。

これが真実だとすると大いに考えさせられます。

 

百貨店に限らず基本的なビジネス構造を変えないことには立ち行かない業態は数多くあります。

スマホの普及によるEC(電子商取引)とデジタルマーケティングの本格化、日本の人口動態の

変化、情報格差、経済格差等、世の中の変化は多くの“昔からある業態”に変化を求めて

います。なんとかしないと、それこそ「もたない」企業はたくさんあるはずです。

 

こうした右肩下がりの状況を変えようと新たなリーダーが改革に着手すると、組織の

あちこちからノイズが出ます。このノイズをトップマネジメントチームが拡声するようなことを

してはいけません。リーダーとしては立つ瀬がありません。いかに優秀なリーダーであっても

神様ではありませんから、見立てや戦略・戦術が適切ではないこともあるでしょう。そうであれば、

そこを修正して前に進めるための提案をする。それがマネジメントチームの役割ではないでしょうか。

 

組織(大衆)なるものは違います。変化が起きるとぶれるものです。実際に改革が進行すると、

「うちの会社は今のままではダメだ。改革が必要だ!」と言っていた人たちの中の相当数が

“やります、と言ってやらない”人たちであることがわかります。多くの人が改革を実際に

やるのは自分ではなく、誰かがやってくれると思っているものです。

 

自分の仕事環境や、やり方を変えることを求められるようになると途端に態度が変わります。

リーダー批判を始めます。しかも、その多くはリーダーのコミュニケーションスタイルや

性格的なことへの批判です。

 

リーダーに対する組織内の風向きが変わったと感じた管理職クラスの中には、その影響を受けて

変わる人が出てきます。リーダーが掲げている戦略・戦術がおかしいと言い出します。

自分もその戦略・戦術づくりに参画していたにも関わらず、こう言い出します。

“戦略・戦術がおかしい。だから成果がでない。”

 

これは改革の実行フェーズで普通に起きることです。会社組織だけでなく政治の世界でも

一般の社会でも起きることです。汗をかかずに恩恵を得たい。批判される側にいたくない。

これは普通の反応です。そこをぼやいても仕方がありません。想定内のことだと思いましょう。

 

これらのノイズの中に潜むメッセージは受け止めて、改革のスピードや進め方をチューニングする

ことは必要です。それをリーダーに提案するのがマネジメントチームの仕事です。こうした提案に

対して聞く耳を持たないような人を、そもそもリーダーに選出しているでしょうか。そんなことは

ないはずです。時間をかけてじっくり話すことで解決策は見えてくるはずです。そこをいきなり

「現場がもたない。辞めてくれ。」はないと思うのです。

三越伊勢丹のケースの真実がどこにあるのかはわかりませんが。)

 

改革はなんらかの「痛み」を伴うものです。改革に着手する以上、「痛みからのノイズ」は

想定内のはずです。そこに屈してはいけません。やり方を変えることは大いにあります。

しかし、その際もなぜ、改革をしないといけないのか、何がゴールなのか、ここから外れては

いけません。批判されたとしても、ふんばる度量を持ちたいものです。

 

 

おまけ:しばらく「人事の目」をお休みします。

 

ありがたいことなのですが、メルマガをお読みいただいている方が想定以上に増えてしまったために、

配信の仕方を考える必要が出てきました。リニューアル完了まで少々お時間ください。

 

では、またお会いしましょう。