柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.667 日産の無資格検査に思う

日産の西川社長の19日の夜の記者会見。辛かったですね。

トップに正しい情報が提供されていないことが露呈していまいました。

 

4年ほど前に某巨大企業の社長さんとお会いしていたときのことを思い出しました。

突然メモが入り社長さんが驚愕の表情に。その後、その企業は何度も記者会見を開き、

大型のリストラを発表しました。このケースでもぎりぎりまでトップに正しい情報が

伝わっていませんでした。

 

企業経営において情報は血液のようなものです。組織のあちこちで動脈硬化が起きて

しまうとまともな経営などできません。社内情報がタイムリーに正確に伝わるか。

これはトップにとって死活問題です。

 

さて、今回の日産の「無資格検査」のケース。おなじみのNHKのおはビズのEyes onで

特集されていました。他のメディアでは伝えきれていない点まで紹介しています。

是非、ご覧ください。

 

https://www3.nhk.or.jp/news/contents/ohabiz/2017_1020.html

 

“明らかにいけないこと”が現場でまかり通ってしまう現象。更には問題が露呈しても

変わらない状況。これらは信じられないレベルのことですが、似たようなケースは

結構あります。私自身も過去に複数、同じようなケースの改善に関わったことがあります。

 

なぜ、現場でこのようなことが起きてしまうのか。

 

日産の内情については知りません。あくまでも私の経験によりますが、

次のような事象がその背景にあることが多かったです。

 

・工場のオペレーションに生産技術、生産管理、品質管理等多くの部署が日常的に意見している

・それぞれの主張は直接現場の長に行く(生産部門長経由ではない)

・しかも、それぞれの主張に一貫性がない(自分の利害優先の主張である)

・非日本人からの主張が非常に強い

・同時に厳しい生産性向上要請がある

・ビジネスプロセスに現場からすると無駄がある

(日産の場合には「メーカー基準の検査」と「国の検査」のダブり)

・無理難題を多くこなしてきた年齢の高い派遣工が現場にいる(若い係長が意見しにくい)

 

このようなことが重なると現場では“とにかく、“計画通り生産量を出せば文句ないでしょ

シンドローム”に侵されます。とにかく予定通りにモノをつくることが最優先”となります。

“無風状態”でも厳しい目標が設定されているところに、あれこれ言われても対応できない。

自分たちが発信する以外の情報については、見たり聞いたりしますが、すべて“聞き流し=無”

となります。

 

仮にシンドロームに侵されていない誰かが、何かしようとしても現場の“ドン”のような人の

人睨みで消えてしまいます。

 

「プレッシャー×情報過多」の中で生き延びるためには、現場としては“聞き流すしかない”

のです。自分の目の前のことだけが“有”で、あとはすべて“無”(関係のないこと)

という捉え方になります。

 

これが風土として根づいてしまうと厄介です。風土は個々の社員、パート、派遣工の

行動特性から形成されます。ここを治療するにはショック療法と相当の労力と時間を要します。

 

日産の西川社長の記者会見は一人で誠実に対応していました。応援したいと思いました。

ぜひ復活していただきたいと強く願います。がんばれ、ニッサン

 

 

おまけー1:10月22日は選挙。政党は決めたものの、小選挙区で投票できる人が見当たりません。

現職者の成果がわかりません。新人の政策提案力がわかりません。どう投票したものか。

 

おまけー2:最近の若者は「折り鶴」が折れないのが普通だそうです。

そういえば、6月に広尾病院に入院したときに「千羽鶴」をまったく見かけなかったです。

 

おススメコーナー:「Miss Saigon」の25周年記念コンサートのDVDが日本でも発売されました。

映像構成が素晴らしい。臨場感のある映画を見ているような感じです。

しかし、なんといっても珠玉は最後のオリジナルキャストを交えたフィナーレです。