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柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.638 レーダースクリーンの明晰さ

OT(Organization theater:体験型ケーススタディ)を開発して6年になります。

関係者によると、昨年はなんと121日もやったそうです。3日に一回、どこかでやって

いた勘定になります。開発者としては嬉しい限りです。ちなみに、その多くが

選抜された次世代リーダー候補者向けのトレーニング、またその選抜です。

 

OTは有事のビジネス・シミュレーションです。5名程度の受講生がチームとなって、

M&A、自社製品による死傷事故への対応、倒産リスク、海外子会社の再建等の会社の

危機的状況に立ち向かうというものです。上司、顧客、取引先等の利害関係者には

プロの役者が扮し、“そのもの”になって登場してきます。

 

OTを通じて受講生が問われるのは直接的には「不測事態における課題対応力」です。

より具体的には自分の“レーダースクリーン”の明晰度合い“です。

 

何かが起きた時に、または何か新しいことを展開するときに、リーダーは自身の

“レーダースクリーン”の明晰さが問われます。利害関係者は誰か、その利害関係者

それぞれにとってのベストシナリオ、ワーストシナリオは何か。これらについて、

瞬時にどこまで見えるか。“レーダースクリーン”が曇っていると対応が後手になり、

苦しくなります。

 

初めての事象、慣れないケースでは、緊張感から“レーダースクリーン”そのものが

ありません。なにをどうしたらよいか全くわからず右往左往という状態がそれです。

そのうち慣れてくると“レーダースクリーン”が表出し、先んじて動くことが

できるようになります。

 

普通の会社で普通に仕事をしていると自分の“レーダースクリーン”を磨くチャンスが

多くありません。”レーダースクリーン“を磨くのは“修羅場”の経験が一番です。

“修羅場”は自分のやる気、経験値、スキルをフル活用してもどうにもならない、

という状態です。そこでの痛い想いが自分の“レーダースクリーン”のバージョンを

高めてくれます。ところが、優良企業や大企業であればあるほど(当然ながら)

“修羅場”がありません。

 

かつて不測事態が発生したときに脆い企業、経営陣を垣間見ました。これはいかん、

と思いました。安定した世界にいると“レーダースクリーン”を意識しなくとも

過ごしていけます。しかし、それですと将来、経営陣になったときに困ります。

次世代のリーダーたちの“レーダースクリーン”を鍛える場を創ろう。

そう考えて開発したのがOTです。

 

現在、私はパスという上場しているグループ会社のCEOとして再建を担っていますが、

日々、リアルOTの連続です。思い起こせば、マーサーの社長時代、キャドセンターの

社長時代、CCCのCOO時代など常にそこにはリアルOTがありました。明らかにこれらの

経験が強く活きています。トップというのはそういうものなのです。

 

さらに、“レーダースクリーン”が明晰であったとしても、実行するために

必要なスキルがあります。

 

例えば:

 

「使える財務」:財務諸表が読めるではなく、事象・施策が自社の財務にどのような

影響を与えるのか。ネガティブな結果にならないための施策は何か。自らわかるのが

いいに決まっています。少なくとも、財務担当者が説明する内容を理解するだけの知識は必須です。

 

「相手が言わんとしていることをまとめて確認する表現力」:いろいろな人がいろいろな

ことを言うものです。みな言いたいことを言います。その中には「幹」の話と「枝」の話が

あります。これらを聞き分けて、本質的な「幹」の話をとりまとめて合意してもらう。

この力がリーダーには必要です。複雑な案件において、リーダーがこの力を発揮しないと、

組織が烏合の衆になります。

 

「自分が言いたいことをわかりやすくまとめて表現する力」:「伝える」のではなく

「伝わる」プレゼン、文章を創る力のことです。これがないと自分の意図が誤解されたり、

思うように組織が動きません。

 

これらの表現力は「英語」であってもそのレベルがあまり落ちないようにしないと

グローバル企業ではリーダーの役割を担うことができません。

 

「感情を受け止め感情に訴えるパッション」:人を動かすものは理屈ではなくパッションです。

相手のパッションを受け止め、自分のパッションを伝播させることができるか。

ここは人間性が問われます。 等等・・

 

OTの中ではこれらのスキルが十分でないと事態が悪化します。多くのエリート系の人材は

うまくできません。しかし、できないでいいのです。ここは「稽古場」なので。できない

ことで自分の実力について内省し、次につながればいいのです。そういう意味ではOT終了後

にアセッサーが個々にフィードバックしますので、自分の気づきの確認と気づいていない

弱点を知ることができます。

 

自分で開発しておいて言うのもおこがましいですが、こんなプログラムは他にはないと

思います。まだ見たことがない、体験したことがないという方に向けたOTの場があります。

ぜひ、OTを体験してみてください。

 

2017年 2月17日(金)~ 2月18日(土)

2017年 3月10日(金)~ 3月11日(土)

 

http://www.indigoblue.co.jp/program/ot.html

 

 

この他に女性リーダーの育成を意図したOTもあります。社内政治、できない部下への対応、

女性の目から見て不合理な上司への対応が求められるものです。こちらは新作。2月6日・7日に

特別開催の予定です。残席わずかですが、関心のある方はメルマガへの返信でお知らせください。

 

 

おまけ:オフィスの近くの中華料理屋でランチを頼んだところ、ごはんに髪の毛が・・・。

“あの、髪の毛が・・”と言ったところ、“何だと”と言って出てきた料理人はスキンヘッドでした。

こういう場合、どうしたらいいのでしょうか?

 

 

 

 

Vol.637 PHAZE

PHAZEの2期生の募集が始まりました。

 

PHAZEとは24歳までの若者を対象とした「将来やりきる人になる」ための学びの場です。

学歴不問、今なにをやっているかも不問。年齢制限だけあり。オーディションを経て

選抜された数名について、一定期間鍛える場を無償で提供し、その後のキャリアの

相談にのるものです。

 

3年ほど前にこの企画を発起しました。その後、志に賛同いただいたスポンサー企業の

ご支援の下、社団法人が設立され、現在、代表理事、世話人たちが運営してくれています。

 

3年ほど前のことです。知人の紹介で、某プロスポーツで活躍をした28歳の若者が

私のところを訪ねてきました。仮にAさんとします。Aさんは幼少時からそのスポーツに

明け暮れ、高校、大学ともにスポーツで入学。大学卒業後、めでたくプロへ。その後、

数年プロで過ごしたのですが、ここにきて怪我から引退することになりました。

さて、これからどうしたらよいか。その相談でした。

 

Aさんのそれまでの人生を聞くに“成し遂げた経験”が多々あり、団体競技なので

チームビルディングの経験もあり。好感度も文句なし。Aさんとしては“普通の

ビジネスマン”に転身したいのだが、PCスキルや文章作成能力など実務能力は未知数。

不安でいっぱい。そんな状況でした。

 

プロ選手だったといっても、知る人ぞ知るという知名度。オリンピックで金メダルを

とったり、スポーツ新聞の一面を飾るような華々しいことがあったわけではありません。

そうなりますと、(その彼には気の毒ながら)特定のスポーツを長くやってきた

Aさん以外の何者でもないのです。

 

しかしAさんは大丈夫だと思いました。柴田塾でお話ししているような「リーダーの要件」

「心のもちよう」「ポータブルスキル」についてお話ししたところ、何をすべきかわかった!

という晴れ晴れしい顔をして帰っていきました。成し遂げた経験がある人は、

苦労するかもしれませんが、ヒントさえあればなんとかできるものです。

 

一方で、さまざまな理由から、普通に進学を重ね、就活して就職という流れではない

若者がそれなりにいます。彼ら彼女らが“普通のビジネスマン”を志望したときに

極めてハードルが高いことを再認識しました。

 

文部科学省によると、高校中退者数は減少傾向にあります。一方で通信制の学校は

増えています。2013年年現在で全国で221校、生徒数は18万5589名(うち私立校生徒数:

11万585名)です。学校数は10年前と比較して2倍超増加しています。生徒数が減っている

中での増加です。つまり、普通の高校からのドロップアウト組が増えていることが伺えます。

 

彼ら彼女らの中で、“やり直したい”と思っている人がいるはずです。

その意欲を受け止める場があるとよいと思ったのがPHAZEの原点です。

 

ドロップアウトしたところからの再起であるが故の“強さ”があるはず。こういう人財を

大企業の中にいれることで“なまず”効果が期待できるのではないか、とも思いました。

なまず効果”とは「魚を移送するときに同じ魚だけにしておくと1割くらいが死んでしまうが

ナマズをいれていくと死なない“というものです。異端が入ることでの緊張感が組織全体を

ピリッとするという意味です。

 

更には、若いことに“暴走族のリーダー”をやっていたような人であれば、普通の道からは

ドロップアウトしているでしょうが、相当の人間力があるはずです。こういう若者がその気に

なったときに未来が拓けるような場があった方がいい。ちなみに多くの大企業のトップは

こういう人財を一定数欲しています。

 

昨年1期生5名が誕生。今年はこれからオーディションです。

 

困っているのは、“やり直したい”という若者へのリーチが難しいことです。大々的な

広告活動をするだけの資金的な余裕はありません。

 

みなさんの周囲でそういう若者がいましたらぜひPHAZEのことを教えてあげてください。

24歳以下であれば、就職してみたが、ちょっと違った・・・やり直したい、

というケースもOKです。

 

説明会が東京と京都で始まります。こちらのご案内をぜひお願いします。

 

http://phaze.jp/application/form_briefing/

 

 

 

おまけー1:仕事始めにパスのみんなと近くの八幡神社にご祈祷に出かけました。

初詣ですが、自分が住んでいるところの土地の神様に日頃の感謝するのが基本と教えて

もらいました。ということで、神社庁によると虎ノ門5丁目は八幡神社とのこと。

 

みなさん、初詣、違うとこに行ってません?(Indigoblueのメンバー、違うとこに行ってますぜ。)

 

おまけー2:諸般の事情で止めていた朝のジョギングを再開しました。

日々長い距離を走れるようになると“小さな達成感あり”。

 

 

Vol.636 働き方改革は”上司”次第

「人事の目」を始めて14年目に入りました。今回が636号。1,000号、登録者2万人を

目指して頑張ってみます。

 

年末の週刊ダイヤモンドの「2017総予想」の中に「働き方改革は有名無実化 功名を争う

政治家・官僚たち」という記事がありました。これが事実だとしたら本当に残念です。

 

「働き方改革」という取り組みを始めたことについて、私は素晴らしい事だと思っています。

 

これまでの時の政権は、働くことに関して根本的な見直しを避けてきたように思います。

このため至るところに「不条理な現実」があります。これらが改善されませんと、人口減

対策ができないどころか、優秀な若者や経済的に恵まれている人ほど海外に活路を見出す

ことになります。そうなると、日本は質量ともに人材過疎に陥ります。「働き方改革」は

次世代のためにも重要な改革なのです。

 

それにしても、この改革のカバー領域は広いです。私の見立てでは「正規・非正規の

格差問題(を通じた貧困問題対策)」、「長時間労働の是正(を通じた過労死問題対策)」、

「女性の社会進出の支援(を通じた少子化問題対策)」、「高齢者の就労促進(を通じた

年金問題対策)」等。さまざまな問題・課題が絡み合っています。当然ながら税制・

社会保険の問題も絡んできます。

 

まさにパンドラの箱を開けるような検討作業だと思います。しかしながら、これらの問題の

本質を深堀りして、聖域なく改革を進めていただきたいものです。

 

正規・非正規の問題は「金銭による解雇」の法制化とセットでないと実現しません。

会社の業況に応じて販管費の見直しをするのは経営者としては当たり前です。最大の販管費

人件費なのですが、日本では正規社員の解雇は難しいので、ヘッドカウント(人員数)を

調整する「弁」として非正規社員を使わざるを得ないという現実があります。

日本の人材派遣会社の数が世界で一番多いのはそのためです。

 

改正労働契約法の「2018年問題:2013年4月1日以降、契約期間が5年を超える派遣社員

非正規社員の無期雇用化」もバランスを欠いています。「解雇法」の整備がない中で

運用されているので、今年以降、雇止めされる非正規社員が増えるのではないかと

心配しています。これだと、結果として改悪になってしまいます。

 

正規・非正規問題を「同一労働同一賃金」という耳障りのいい議論に終始させてはいけません。

       

長時間労働について。電通の過労死が社会問題化したことで厳格な規制が導入されるのでは

ないかと言われていますが、こちらも本質を見失った議論をしてはいけないと思っています。

 

長時間労働問題の本質は「自ら望んでいない長時間労働を強いられること」、または

「経済的な理由により、そうせざるを得ない状況になってしまうこと」です。いずれも

当事者にとっては「嫌であり、何かを犠牲にしたり、我慢をしている」わけです。

これが当事者の心を疲弊させ、不幸な展開につながっているのです。

 

「経済的な理由による長時間労働」は社会保障面から検討した方がいいと思います。

ここでは詳述しません。前者の「自ら望んでいない長時間労働」については、その状態を

生んでいる原因を潰さないと解決しません。例えば、これまで100時間残業を強いていた

ところに、30時間という規制をかけたとしても、本当の意味での「働き方」が変わって

いないと意味がありません。どこかに歪みが出ます。

 

長時間労働が生まれるのは「やるべき仕事量に対して人員数が足りない」場合か、

「対応力・仕事の進め方に問題がある」場合のいずれかです。前者は経営課題として

対処すべきです。多くの長時間労働は後者によるものだと思います。

 

これを生んでいるのは「上司」です。例えば、

 

‐仕事の依頼が遅い(夕方に“明日の10時まで”という依頼をしたりする)

‐金曜日に“週明けまでに”という依頼をする

‐何をしてほしいのかはっきりしない指示をする

‐会議で聞かれたら出すための資料づくりを要請する

‐会議で何が決まって、何が決まっていないのかはっきりさせない

‐メールの返信が遅く、部下としてはGOなのかNo-GOなのかわからないまま放置される

‐組織内の感情的な揉め事を見て見ぬふりをする

モラハラ的な指導をする

‐ろくに教えもせずに仕事をさせる  ・・・など等

 

「上司」としてのスキルの向上なくして問題の解決には至りません。しかし、これらの点を

改善するためのトレーニングプログラムや教則本がまとまっていないと思うので、

書いてみようかなと思う2017年の幕開けです。本年もよろしくお願いします。

 

 

 

おまけ:PHAZEの2期生の募集が始まりました。PHAZEとは学歴不問で24歳までの若者を対象とした

「将来やりきる人になる」ための学びの場です。オーディションを経て選抜された数名について

一定期間徹底的に鍛える場です。詳しくは次号で書きますが、まずはお知らせまで。

 

 

http://phaze.jp/phaze-vision/

 

 

 

Vol.635 次の社長をどう決める?

この時期、社長交代のニュースが新聞を賑わせています。4月下旬から5月上旬に次いで

多いですね。私が存じ上げている方が社長に昇任するケース、退任されるケースが数件

ありました。おめでとうございます。そして退任される方へ。お疲れ様でした。

 

次の社長をどのように決めるか。古くて新しい課題です。私自身、社長になる、社長を

降りるという経験を過去に何度かしていますので、当事者の複雑な心情はよくわかります。

 

ガバナンスの問題と絡めて、社外取締役が社長を決めるのが良いという意見がありますが、

私はこれには反対です。社外役員がすべきは「社長の選定を現職社長のブラックボックス

しないこと」。ここまでだと思います。(会社ぐるみの不祥事や破綻からの再建等、

有事においてはこの限りではありませんが。)

 

次期社長を決めるときに考慮すべきは、自社が置かれている経営環境、戦略実行に必要な

コンピタンス(要件)、組織の状態、トップマネジメントチームを構成するメンバーの

キャラクター(強み・弱み)です。言う間でもなく、最も情報を持っているのは現職社長です。

ですから現職社長が自ら後任を選ぶというのが最も自然だと思います。

 

社外役員が知りうる情報には限りがあります。特に組織の状態や戦略実行のための

コンピタンスについては、実務に精通していない以上、具体的に把握するのは無理です。

 

但し、現職の社長が独断で決めるのは最も良くありません。なぜこの人が?という想いが

生まれてしまうと組織が混乱します。憶測が憶測を呼び、社内政治がはびこることになります。

当然ながら業績は悪化します。

 

現職の社長は、“何故この人を次期社長として推すのか”、これを関係当事者にわかって

もらう必要があります。この努力を怠ってはいけません。その関係当事者の代表になるのが

社外役員であり、社内の人事担当役員なのです。

 

このプロセスがないと、“決めてやった”、“あの人に決めてもらった”という感情が

前社長、新社長の間に残ります。これがよくありません。社長経験者たちが「顧問」などの

名目で君臨し続け、社内の統制がおかしなことになります。

 

私は一人の人間が長く社長を務めることについては好ましくないと思っています。

長くやればやるほど、その会社の中で社長が神格化され、多くの人が上を見て仕事をするように

なるからです。経営会議で議論がなされない、決めたことが実行に移されるのが遅い、

抜本的な改革が進みにくい、仕事がうまくいかない理由に社長の存在をあげる風潮・・・。

これらはトップの神格化に伴う悪影響事例の典型です。

 

私はここ10年ずっと「社長は6年まで」と主張しています。最初の2年で前任者の良い影響を

更に伸ばし、悪い影響を消し、3年目・4年目は自分の型で存分に経営し、5年目・6年目は

自分が退いた後にその企業が更に成長するための施策を推進する。これが持論です。

 

当事者たる社長もタイミングを逸すると、その会社で「社長であること」が自分や自分の

家族の人生の一部になってくるので辞められなくなります。そうなると無意識のうちに守りに

入ります。優秀な人材を見つけると、近くにおき“使い倒す”か、政治的に“潰す”動きを

とりがちです。自分が知らない領域での意思決定を避けます。会社の進化が終わります。

 

ちなみに、オーナー企業の社長はそもそも「社長であること」が人生の一部なので「6年退任説」

は当てはまりません。オーナー社長が辞めるときは自分の家族に承継させるか、株式の

売却を伴います。だからこそ、オーナ―社長は自分の進退を相談できる相手を見つけましょう。

老害を指摘される前に。

 

 

 

おまけー1:博多の通販事業の20代の若手勉強会で講演しました。講演後の懇親会で

ほぼ全ての参加者と名刺交換し、一言二言、言葉を交わしました。ここには成長したい!という

「飢餓感」がありました。こういう若者がいる地域・会社は伸びます。博多に注目です。

 

おまけー2: ソフトクリームを持っている人に「あ、くつひもが」。「ん?」

(ソフトクリームがぽとり)

古典的な展開ですが、平成28年の恵比寿で目撃。

 

 

おまけー3:テリー伊藤さんの自叙伝「俺とテレビと片腕少女」。知人から紹介されて一気読み。

三丁目の夕日」世代にはグッとくる内容です。

 

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%AA%E3%83%AC%E3%81%A8%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%81%A8%E7%89%87%E8%85%95%E5%B0%91%E5%A5%B3-%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BC-%E4%BC%8A%E8%97%A4/dp/4041043182/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1482453365&sr=1-1

 

 

Vol.634 裏方を大切に

「裏方」がいい仕事をする組織は強い。私の経験則から間違いありません。仮に目先の

業績が低迷していたとしても、いい「裏方」がいる組織であれば、よい商品・サービスが

出来次第復活します。その逆はダメ。いい「裏方」がいないと、いかに良い商品・

サービスが企画されても結実しません。

 

会議室のホワイトボードのペンがかすれていない。ホワイトボードの表面がきれいに

拭かれている。備品が揃っている。シュレッターが満杯になっていない。受付周りに

埃がたまっていない。部屋の中が整理整頓されている・・・。

 

営業や企画担当が思う存分力を発揮できるのは「裏方」がこんな風に仕事の導線を

スムーズにしてくれているからです。仕事の導線を軽んじてはいけません。導線が

乱れてくると組織内のストレスが高まります。見るべき書類や伝言メモが埋もれて

しまったり、会議室で感情的なやりとりをしたり・・・。

こうしたことが大きなミスにつながります。

 

目に見える成果だけを評価していると、こうした仕事の導線づくりをしている人たちの

居場所がなくなります。組織のパフォーマンスは海に浮かぶ氷山のようなものです。

海面に出ている部分の大きさで評価しがちなのですが、氷山は海面下に見えない部分が

あるからこそ浮いているわけです。この見えない部分が小さくなると一気に氷山が

小さくなります。そのうち浮いていられなくなります。

 

主として「裏方」業務をしている人は「総務」であったり、「アシスタント」

であったりします。この人たちがどんな感情で仕事をしているのか。組織の長は

気を配るべきです。この人たちからして営業の現場がどんな風に見えているのかを尋ね、

どんな困りごとがあるのか耳を傾けましょう。

 

「裏方」の仕事はできていて当たり前。失敗があると目立ちます。誰にでも“うっかり”は

あります。しかし、これが頻発してきたら、なんからの問題を抱えているはずです。

失敗について叱責するのではなく事情を聴きましょう。

 

失敗は気の緩みだ、として強く叱って改善を促す流儀の方がいますが、これはおススメ

できません。組織の長に言うほどの問題ではない、として自分の中での解決を図ろう

としていた気持ちが、“この人はわかってくれない”という恨み系の気持ちに転換していきます。

仮に気の緩みだとしても、そこを強く叱責すると、次からは“怒られないようにしよう”

という気持ちが前面に立ち、その人の仕事の範囲が小さくなってしまいます。

 

ちなみに、注意を促す叱責をする場合でも「目は笑ったままで」「追及しすぎない

(逃げ場を残す)」。これは基本です。

 

組織の長のみなさんへ。裏方のみなさんの労を労ってあげてください。ちゃんと見ている

ということを表現しましょう。個別にThank you メールを出すこと。ちょっとした差し入れを

すること。全員の前で感謝の意を述べること。これは基本です。年末はこれらをさりげなく

するチャンスです。今年1年の感謝を込めてやりましょう。

 

先日、代表取締役会長を務めている株式会社マードゥレクスの忘年会がありました。

初めて参加しましたが、感動しました。社員を楽しませようとする企画と心遣いが盛りだくさん。

総務人事の人たちが裏方に徹して楽しい場づくりをしてくれました。いい会社だなあと実感しました。

 

 

おまけー1:区役所で、隣のカウンダ―の若者が“え、僕、結婚してないですけど・・・” 

どうやら知らないうちに入籍されていたらしい。そんなことがあるのですね。

区役所というところはこの手の話が日常的にあるのでしょうね。(ドラマになりますね。)

 

おまけー2:マードゥレクスの忘年会の「若者向け問題」で「松田優作」を知らない若者が

いたのは驚き。書いた答えが「松田龍平」。なるほど。

 

おまけー3:旧知の柳沼さんがサポートに入ったと聞き、最近、よく利用させてもらっていますが、

八芳園はだいぶ変わりました。とてもいいです。

 

http://www.happo-en.com/banquet/

 

 

 

Vol.633 トライセクターリーダー

関西の某大学のMBAコースに通われている方々のインタビューを受けました。

「トライセクターリーダー」について研究をしているが、民間企業で「トライセクターリーダー」

の育成ができるか、また、民間企業にとって「トライセクターリーダー」は必要か、

これらが主たるインタビュー・テーマでした。

 

トライセクターリーダーとは“民間、公共、市民社会の3つのセクターの垣根を越えて活躍、

協働するリーダーのこと”と定義されることが多いです。MBAコースのみなさんからも、

その実例として津波の被害に遭った女川町の復興で活躍している方のことを伺いました。

 

この定義そのものを眺めていると、民間企業において育成対象とはなりにくいですね。

企業というよりも個人の活動に見えます。経営者100人に聞くと、おそらく95人くらいは

“否定しないが自社で積極的に育成はしない”という回答だと思います。

私もこの「定義」に沿って考えるとそうです。

 

しかし、そもそもトライセクターリーダーとは何ができる人なのか。

ここを考えると答えが違ってきます。

 

民間、公共、市民社会の利害は異なります。最終的な目標を共有できたとしても、そのプロセス、

進め方、優先順位は、利害が異なるので違います。利害が異なる複数の集団の調整を行い、

かつ、利害の異なる集団をその気にさせて動かす。これが「トライセクターリーダー」が

やっていることだとしたら、グローバル・リーダーが必要な力そのものです。そういう

意味からすると「トライセクターリーダー」に着目するのは意味があります。グローバルに

事業展開している企業では「利害調整と建設的な妥協」を創りだせるグローバル・リーダーの

育成は必須ですから。

 

グローバルにビジネスを展開しようとすると「グローバル視点」 「本社のある国の視点」

「ローカルの視点」で対立が生まれます。ここを強引に進めようとしてもうまくいきません。

面従腹背、無視、担当者の退職につながります。それぞれが目的達成のためにいかに

建設的な妥協ができるか。そこに向けて各関係者をドライブできるか。ここがグローバル・

リーダーの腕の見せ所になります。

 

グローバルな環境で働くと“誰かにとっての合理は誰かにとっての不合理”を痛感させ

られることばかりです。グローバル・リーダーが「利害調整と建設的な妥協」に向けた

働きかけをしていかないと、それそこ、組織内での対立が悪化します。かつて米系

コンサルティング会社でグローバル・リーダーシップ・チームの一員として活動していたときに

このことを痛感しました。

 

本社の意向ばかり掲げ、それ以外の意向は受け入れないというスタンスだと、いろいろな

ところで軋轢が生じました。軋轢が生じると「政治的な動きで対処する」輩が増えます。

そうなると不健全な風土になり、業績も停滞します。

 

「利害調整と建設的な妥協」に導くことができるのは「人の話を最後まで聞く」姿勢が

あるからです。どの関係者からも“この人は話を聞いてくれるフェアな人だ”という印象を

持たれます。それがあるから、この人のサジェスチョンを聞く耳を持つのです。

 

「人の話を最後まで聞く」。これ日本人は得意なはずです。何しろ、日本語は最後まで

聞かないと肯定文なのか否定文なのかわかりませんから。元より人の話をきちんと聞く

習性があります。人前でブロークンだろうとなんだろうと英語を使うことへの躊躇さえ

なくなればいいのです。これは慣れの問題です。

 

あとは目標に向かって多くの人を感化するパッション。これは言葉を超えます。

「トライセクターリーダー」たちのパッションを真似しましょう。

ヒトを動かすものは「論理」よりも「パッション」なので。

 

 

おまけー1:某Tさんが「断食道場」に行き3日間の苦行を経て5キロ体重を落とし、

その後すぐに3キロ戻ったそうです。あとは「いきなりステーキ」で現状復帰です。

(その協力を惜しまない友愛。)

 

おまけー2:むやみに声がでかいのは困りものです。私がよく行くコンビニの店長は

誰が来ても元気いっぱいの大きな声で挨拶してくれます。先日、寝たばかりの赤ちゃんを

連れたお母様が「シーっ」と指を口にあてているにも関わらず、“いらっしゃいませー”と

超でかい声。その後慌てて「あ、すいません!」更に超でかい声。

 

おまけー3:これ私も使っています。いいです。男性にもおススメです。

 

http://madrex.com/promotion/2016/ddserum/

 

 

Vol.632 八戸に地方新聞の未来

八戸に出かけてきました。

 

数か月前に旧知のクリエイティブ・ディレクター関橋英作さんからお誘いを受けたのが

きっかけです。

 

「新聞不調の時代。しかも10年後には購読家庭が大幅に減少することがわかっている中で

デーリー東北新聞社は頑張ってますよ。いろいろ面白い試みをやっています。

美味しいお酒とお魚を用意して待ってます。」

 

デーリー東北新聞社の社長さんとの会食のつもりでいましたところ、前日に「デーリー東北

主催:柴田励司講演会」が企画されていることが判明。(汗)急きょ資料を用意して

「柴田塾デーリー東北版」として2時間の講演をしてきました。参加者はデーリー東北の

幹部の方々、地元の企業の方々、デーリー東北が冠講座である弘前大学八戸サテライト

「経営戦略講座」の受講生など多様な方々でした。

 

それにしてもここ10年で新聞の存在感はだいぶ変わりました。私は今でも経済3紙を

自宅で購読していますが、いわゆるニュースはネットで見ています。朝刊や夕刊の

トップニュースには「これ、前の話じゃないの?」という印象です。忙しい朝だと

新聞に目を通さないこともあります。みなさんもそうですよね。

 

今後の新聞社をどうするか。各社頭を悩ませていることでしょう。新聞を広告媒体として

商売している事業者もそう。近いところでは書店、小売店もそう。その関連の卸業者も

そうですね。今後、自社をどのように変貌させていくか。もう待ったなしです。

そういう状況下にあるデーリー東北社がどのような取り組みをしているのか。

ここに興味がありました。もちろん、“美味しいお魚”も魅力的でしたが。

 

施設を見学させていただき、社長さんたちとの会食を終えて思いました。

デーリー東北が始めていることを線でつなぐと面白い展開になると。

 

本社に「デーリー東北ホール」というスペースを昨年4月に作っています。もともとは

大型輪転機があったスペースです。そこを改装して高さ13メートルの吹き抜けのホールに

しました。ジャズコンサートや講演会などを定期的に開催しているようです。更に、

この11月には本社横に「新聞カフェ」なるカフェと寿司屋を併設した不思議な

レストランをオープンしました。ここでは全国の地方誌を手にとることができます。

もちろん、お寿司も本格的です。

 

これ以外にも昨年1月にはDTクラブなる会員向けの「各種講座」を立ち上げています。

「文化・芸能」「小旅行」「スポーツ」など会員限定の多彩なイベントを通して、

青森県南・岩手県北の新たなコミュニティーを目指すとあります。主催事業として

スポーツ大会や囲碁大会をやっています。

 

似たような試みを全国紙の会社でもやっていると思いますが、違うのはこれらの

取り組みがつながって「顔が見えるコミュニティ」に発展する可能性があることです。

「顔が見える」とは、“お互いに素性を知っている”“同じ地域に住んでいる”

“共通の知り合いがいる”“共通体験をしている”という意味です。顔が見える

コミュニティで語られること、知りたいこと、コミュニティメンバーの動向を

「編集して提供する」という姿が見えてきます。

 

従来、新聞は知っておいた方がいい「世の中の情報」を届けてくれる存在でした。

それを知らずに会社や学校や集会に行くと周囲と話が合わない、世情に疎いと思われる。

だから多くの人が目を通しました。その情報の対価として購読料が支払われてきたわけです。

多くの人が目を通すので広告媒体としても売ることができたわけです。

これらが新聞の収益モデルでした。

 

かつては、この「世の中の情報」の“世の中”の定義が、テクノロジーの進歩と共に

日本全体、世界へと広がってきました。それにつれて、地元の情報よりも遠い情報の方が

価値があるかのようなイメージが定着しました。言うならば自宅近くの歯医者の評判よりも

遠くのアメリカ大統領の発言の方が価値があるという幻想です。

(実際は近くの歯医者の情報の方がずっと役立つはずです。)

 

ここが様変わりしたのです。全日本的情報、全世界的情報はネットニュースに代替されました。

なんといってもネットの方がタイムリーですから。しかも動画で伝えることができます。

今後全国紙系はますますキツイ状況になるでしょう。

 

逆に地方紙は優位です。読者にとって身近な情報を現場で編集して伝えることができるからです。

そのときに最も濃い情報は「顔が見えるコミュニティ」の中での情報です。デーリー東北の

試みをつなぐとこの濃い情報発信ができるだろうと思いました。

 

八戸に限らず、地方紙を購読している世帯は高齢者が多いので、年々減ることは間違い

ありません。しかし、その地方出身の人は全国にいるはずです。“離れていても地元の

ことは気になる”はずで、その人たちがネットを通じて手軽に地元の濃い情報を得る。

都会にいる地方人。働きかけ次第でこの人たちが新たな購読者になります。

 

このコミュニティを濃いものにするのが「人が集まるイベント、飲食スペース」です。

地元の何でもない人たちがたくさん登場するようになると更に濃くなります。顔が見える

コミュニティの中でしか意味のない濃い情報が編集されている。それが今後の地方紙の

姿ではないかと思います。デーリー東北にその兆しを見ました。今後の展開が注目されます。

 

 

おまけー1:青森県というと“遠い”という印象があるのですが、新幹線で3時間弱です。

大阪に行くのと変わりません。「イエス・キリストの墓」「メドツ(河童)」

「東北エモーション」「日本唯一の女性大名」「洋酒喫茶プリンス」など等、

八戸は私好みの話題が豊富。また行きます。

 

おまけー2:デーリー東北について詳しく知りたい方へ。同社のホームページをご覧ください。

 

http://www.daily-tohoku.co.jp/