読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.336 責任追及と原因追及

「責任追及」と「原因追及」。
この2つがごっちゃになっていると感ずることはありませんか。

誰が悪かったのか探し。それが「責任追及」です。
"犯人"を明らかにして、その犯人に相応のペナルティを課す。
それが責任追及の目的です。これにより、"同じヒトによる再発防止"を期待する。

一方で原因追及は、"なぜ、その事態が生じたのか"を明らかにするものです。
原因を明らかにし、再発を防止するための施策を講ずる。これが目的です。

再発防止という点では同じです。が、その目的が大きく違います。
しかしながら、ややもすると、"犯人探し"がメインとなり、
該当者を処分して終わりになりがちです。それだけでは明らかに片手落ちです。
原因追及と対策。これを忘れてはいけません。


先日、東京弁護士連合会より連絡があり、パロマ第三者委員会について
お話しする機会がありました。

パロマ事件とは、パロマ工業製のガス機器が不正に改造され、
一酸化炭素中毒による死亡事故(21名)が20年にわたって発生していたことが
2006年7月に判明し、社会問題化した事件です。

当時、新聞の社会面を賑わしましたし、国会でも取り上げられましたので、
多くの方が記憶していると思います。

私はこの事件の第三者委員会の副委員長でした。

「当初、パロマ第三者委員会の報告書のことは全く評価していませんでした。」

弁護士連合会の方はこう切り出しました。

「なぜなら、責任追及がなされていなかったからです。
しかし、今は180度違う評価をしています。

パロマ事件後、重大な事件に際して第三者委員会を設置することが
一般的になりました。その中で、弁護士がリードして報告書をまとめてい
るケースが少なくありません。しかし、これらの報告書では
何ら問題解決になっていないことに気づきました。
一般の裁判のように責任追及に重きがおかれていたからです。」

それに対して、こうお話しました。

「私たちは第三者委員会を始めるにあたって、2つのことを確認しました。

まずは、パロマにとって、どのように不利益なものであろうと、
調査結果に誠実に発表すること。もうひとつが、責任追及ではなく
原因追及をすること。パロマに限らず、同様の事故が再発しないよう
提言すること。これらを目指そうと。

ですから、ご指摘のとおり、責任追及は当初から視野に入っておりませんでした。」

ガス機器は(将来的にはオール電気化が進むのかもしれませんが)生活上欠かせない
機器の一つです。本件に向かう合うためには、パロマにとどまらずに
"ガスを使った生活のバリューチェーンを考える必要があります。

このバリューチェーン関係者には、パロマのようなガス機器メーカーがあり、
それを設置する工事業者があり、ガス機器を販売する業者がいます。
ガスを供給する事業者もいます。集合住宅の場合には管理会社も関係します。
もちろん、生活者も関係します。

パロマ事件の解決のためには、すべての関係者がこの問題を正面から受け止めて、
全員で改善に向けた働きかけをすべき。そのための調整とナビゲーションをしたい。
私はそう思っていました。

ところが、当時、残念ながら時の行政を中心に"犯人探し"となりました。
我々の主張は理解されませんでした。監督官庁に至っては、ヒアリングさえ
受け入れてもらえませんでした。苦い思い出です。
メディアもそうでした。誰が悪いか。この論調だけでした。誠に遺憾。

確かに死亡事件ですから、遺族感情からすると"犯人を特定して厳重に罰して欲しい"、
これはあります。それはそれでやるべきです。
しかし、それだけで終わってはいけないはずです。

企業の中でも何らかの問題が発生した場合に、犯人を探して処罰して
終わりにしてしまいがちです。それではいけません。
冷静に(誰が悪いという視点を持たずに)原因を究明して対策を講ずる。
これを忘れてはいけません。

そう考えたとき、これこそがチーフ・コンプライアンス・オフィサーの仕事になるのではないか、
と思いました。社長がスポンサーになることは言うまでもありませんが。



======================================

おまけー1:月曜日にとあるホテルで講演をしました。講演前に電話会議の予定があり、
控室で、ぎりぎりまで電話会議をさせてもらいました。

控室に入ったときに、Mr.オクレに似ているホテルの方から聞かれました。
「講師の方にコーヒーをお持ちしますか?」
「お願いします。」(と私)

ところが、1時間経っても、全くコーヒーが出る気配がありません。
Mr.オクレは裏導線につながる出口から、ちらちら部屋の中を覗いています。

電話会議が終わりましたがコーヒーは出ず。まあ、コーヒー飲まなくても死なないので、
そのまま控室を出ようとしたときに、Mr.オクレが飛んできました。

「講師の先生はいつ控室にいらっしゃるんでしょうかね?」



おまけー2:講演中、例によってプレゼンテーションでは映像を使います。
当然、音声があります。よりによって講演の担当もこのMr. オクレ。

「音を出すときには"音をお願いします"と言ってください」と言われ、
それはスマートではないなぁ・・・と思いながらも、まあしょうがない。

で、プレゼン中に"音をお願いします。"と言ったところ、

「は?」とMr. オクレがステージまで駆け寄ってきました・・・