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柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.610 人材の壁

日経産業新聞(6月23日)に掲載された「VB経営AtoZ」(「人材の壁」必ずぶつかる)

からです。このコーナーには2010年から毎月1回掲載いただいていますが、今回は

複数の方から、メルマガでも紹介してほしい”との要請がありました。以下、

補足を書き入れた特別編です。

 

「人材の壁」。ベンチャー企業は成長すると、この壁に必ずぶつかる。

 

人材には3つのタイプがある。0から1を生み出すタイプ。1を1.1にするタイプ。

1をN倍にするタイプ。ベンチャー企業で活躍するタイプは「0から1」のタイプだ。

 

このタイプは寝食を忘れて仕事をするのが苦にならない。リスクを取ることも恐れない。

指示を待たない。自分の仕事の進め方に自信がある。誰かに育成されるとは思っていない。

評価を意識していない。興味があること、必要なことは自分で勉強する。世の中のルールや

過去の規範には関心は低い。創業期には概ねこういうタイプが多い。

 

成長につれて利害関係者が増え、会社の体を成すことが求められるようになってくると、

1を1.1にするタイプが必要となる。世の中は「決められた仕組み」で回っているので、

それを着実に実行できる人材が必要になるからだ。1を1.1にするタイプは社内ルールを

きちんと定め、情報を共有し、記録を残す。業務の標準化を進める。経営計画を整備し、

数字を伴った中期事業計画を作れるようになる。彼らの働きがあるので利害関係者への

説明責任も果たせるようになる。

 

一方で1を1.1にするタイプが大半になってくると創業期とだいぶ様相が変わってくる。

社内に育成への期待が生まれ、指示を待つ人間が増えてくる。社内の評価のあり方に

ついて議論が活発になる。ワークライフバランスが重視されるようになる。

中には1を1以下にする人間も出てくる。特に新卒採用は1を0.5以下しかできない

社員の存在を一時的にであれ容認することを意味している。

 

このころ創業期からいた幹部たちは不満を抱き危機感を覚えるようになる。

ベンチャースピリットがなくなってきた、不満は言うが実行しない、仕事ができないの

だから残業は当たり前だ・・・。一方で多くの社員たちは幹部の指示に不満をいだく。

 

古参の幹部はいわば「たたき上げ」だ。経営管理についての勉強をしてきたわけではない。

基本的なビジネススキルや知識も偏っていることが多い。外部から入ってきた1を1.1にする

人材は違う。それなりの知識とスキルを備えている。この外部人材がやり方に不満を抱く。

やり方が非効率、指示も合理的ではない。あの人の下ではやれない・・・。不満が重なり、

組織感情がギスギスしてくる。私の経験上、社員数が100名に近くなってくると

この状態が顕著になる。

 

残念ながら、これは防げない。“麻疹”のようなものだ。全てのベンチャー企業が経験するが、

時間の経過と共に解消する。多くの場合、古参の社員が会社から離れてしまい結果的に

この問題がなくなる。しかし、このプロセスをうまく乗り越えないと会社の将来に暗雲

が立ち込めることになる。創業メンバーが抜けていくことで、会社の経営は健全化する

かもしれないが、一方で会社の勢いは減退する。

 

ベンチャーではなく普通の中小企業になってしまう。その時点で、自社の商品・サービスが

マーケットで認知され、それなりのシェアを維持できていれば大きな問題にはならないが、

そうでない場合には成長カーブが急速に横ばいか下降路線をたどることになる。この場合、

会社のテーマが「リストラ」になる。成長ではなく維持・生存がテーマになってしまう。

 

会社の事業が1から1.1またはN倍を目指す安定成長ステージになったら、0から1を

創りだすメンバーを集めて、新たな0から1の立ち上げに注力してもらうのがよい。

会社全体としては安定基盤の確立と新たな成長という2つを目指すことになる。

 

異なる体制、運営ルールを適用することで、安定成長と新たな創業の2つを求めることができる。

この目線とわりきり。ベンチャー企業経営者が成長戦略を考える上で重要だ。

 

 

ちなみにこの3つの人材タイプのうち最も希少なのは「1をN倍にできる」人材です。

N倍人材は事業の種(優れた思いつき)を仕組化して収益化します。ベンチャーにも

大企業にも必要な人材です。人材のタイプとしては、「0から1」人材に似ており、

決まったことをやらせていると、そのポテンシャルが開花しにくくなります。

その見極め、配置、要注意です。

 

おまけー1:昔の仲間が現在、上野の東京国立博物館にて、熊本城復興支援を目的とする

『VR熊本城』特別上演イベントを開催しています。

 

http://www.toppan-vr.jp/mt/special/index.shtml

 

 

江戸時代の力強い熊本城の姿をシアターで体感いただき、今後の復旧・復興を皆で

応援する気運を高めようという企画だそうです。

(鑑賞料は全額熊本城復旧支援金に寄付とのことです。)

 

おまけー2:ストラス解消グッズを企画中です。ぬいぐるみが必要なのですが、

開発者によると「UFOキャッチャーに通ったんですが、なかなかとれないんです。」

(買った方が早い・・・)(グッズは8月初旬にお披露目できるかなー)

 

おまけー3:イギリスのEU離脱で思います。国の将来を民意に問うで一発で決めてしまう

のは危険。事態が複雑化すればするほど、人は自分の身の回りの問題に置き換えて感情的

に判断します。「第一回国民投票」→「指導者たちによる解説・討論」→

「第二回国民投票で最終決定」というプロセスがあった方がいいと思います。