柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.621 3つのWHY?

「3つのWHY?」をご存じですか? 

商品開発や企画など提案を考える際に自問すべき基本です。

 

  1. なぜ、この提案が「買い手」にとって良いのか?
  2. なぜ、自分たちが「買い手」にとってベストパートナーなのか?
  3. なぜ、「買い手」は(買うことを)今、決めるのがよいのか?

 

この3つのWHY?について納得できる回答を用意できると、その提案は「買い手」に刺さります。

 

最初の、“なぜ、この提案が「買い手」にとっていいのか?”、これは基本中の基本。

これがないと提案にも何もなりません。

 

自社の強みや商品・サービスの特性を並べたところで意味がありません。「買い手」が

買いたくなるような要素がなければ、「その他多くの情報」と一緒です。自分に関係の

ない情報は無と同じ。刺さりません。だからこそ、提案を考える上で「買い手」のことを

よく知るというプロセスが大切なのです。

 

顧客の購買履歴を分析したり、RFM分析(顧客の購買行動を「最終購買日(Recency)」

「購買頻度(Frequency)」「累計購買金額(Monetary)」の3つの指標から分類し、

顧客の選別と格付けを行うこと)をするのは良いのですが、それだけでは足りません。

顧客像がイメージできていないと刺さる提案にはなりません。

 

顧客像を具体化する手法としてペルソナづくりはおススメです。ペルソナとは自社の商品・

サービスを買う理想の顧客像のこと。属性情報に留まらず、顧客の行動・生き様を

イメージするものです。そこから、なぜ、その行動をとっているのかを想像します。

 

私が会長を務めるマードゥレクス社(化粧品製造販売)の「エクストオイルクレンジング」が

好調です。VOCEのクレンジング部門で6月の月間ランキング第1位でした。

 

この商品のペルソナはこんなイメージです。

 

-どんなに忙しくても、いつでもきれいでいたいと思っている働く女性です

-年齢による気になる部分をしっかりメイクで隠したいと思っている人です

-管理職であったり、人前で話す機会が多い営業・マーケティング・人事の採用担当者です

-毎日忙しく動いています

-自宅に戻ってシャワーを浴びながらクレンジング。すぐに家事が待っている人です

-深夜に帰宅して、翌日朝早く出勤しないといけない人です

-国内外の出張が多い人です

-自分で使う化粧品に多少のこだわりを持っている人です。

-乾燥からの小ジワが気になりだしています

 

この人たちの困りごとの根幹は「時間がない」「お肌の劣化を防ぎたい」です。

 

「エクストオイルクレンジング」はこのペルソナのお客様にとってみると「時間をセーブ

できる「お肌のケアができる」商品なのです。これらが、“なぜ、「買い手」にとって

良いのか?”の答えであり、ご支持いただいている理由です。

 

その次の「なぜ、買い手にとってベストパートナーなのか?」。ここは同じような

商品サービスを提供している会社はどの業界においても多々あるわけで、その中で自社が

選ばれる理由です。顧客価値そのものです。

 

“安い”から。これを顧客価値にするのは大変です。原価や販管費を合理的かつ他社では

真似できない仕組みで低減しませんと苦しくなるだけですから。顧客が価値と感じるものを

提供できるかどうか。ここです。

 

ここまで「買い手」が納得できる理由が整理できたら、あと一歩。最後の“なぜ、今か?”

 

ここでキャンペーンなどの価格訴求はありです。ただ、本質的には今、意思決定すると

顧客価値が高まる、というのが理想的な答えです。

 

「3のWHY?」、ぜひ意識してみてください。役に立つはずです。

 

 

 

おまけー1:忙しいけどお肌の手入れはちゃんとしたいと思っている貴女。

ぜひ、一度使ってみてください。 お役にたてると思います。

 

http://madrex.com/promotion/2016/oilcleansing/

 

 

おまけー2:9月26日の(月)の「入社1年目からの仕事の流儀」出版記念講演の

参加申し込み受付中です。対象は社会人になって3年目までの方ですが、

付き添いとして“そうでない方”の参加もOKです。(若者を連れてきてください。)

 

https://indigoblue.co.jp/library_event/

 

 

おまけー3:「指何本ですか?」「10本」。

このやりとりの後に「エビのフリッター」が10本出てくるとは。

 

 

 

Vol.620 始まりは婚礼の仕事

先日ひょんなことから「Wedding womanフェスティバル2016」なるイベントで基調講演を

させていただきました。結婚式場、レストラン、ホテル、ウエディングプランナーなど、

結婚産業に携わるプロの女性たちを対象としたイベントです。例の台風の日でしたので

開催が危ぶまれましたが、100名を超える参加者でした。

 

そもそも、ウエディング業界のイベントでなぜ私なのか。当初は主催のWedding-jobの

石渡社長にお断りしたのですが、私がホテル業界出身であること、ウエディング業界に

努めるアラサ―女性たちに共通したキャリア上の悩みがあること、石渡さんとは長い

付き合いであること、等から最終的にはお引き受けすることにしました。

(ついでに私が会長を務めるマードゥレクス社の化粧品のご紹介をさせていただきましたが。)

 

そうなのです。私は社会人になって1年9か月ほどホテルで宴会サービスの仕事をしていました。

当時、ホテルで結婚披露宴を挙げるのがブームだったので、土日祝日は間違いなく

結婚披露宴を担当していました。

 

私の役目は全体の進行管理です。参列者の誘導、新郎新婦の入退場、スピーチや出し物、

加えて料理・飲み物のサービスのタイミングの合図出しが仕事です。進行に影響を

与えうるあらゆる事への対処が役割です。

 

2年弱で150件程度担当したと思います。加えて、一時期、休日に披露宴の司会を

たくさんやっていました。最初は友人・知人の披露宴で頼まれてやっていたのですが、

そのうちにその披露宴に出席していた人から頼まれ・・・となんだかわからない展開に

なりました。通算で63件やりました。

 

あるとき、司会終了後、参列されていた親族の方から名刺交換を求められ、「

マーサー社長」の名刺を出したところ、“マーサーさんというのは司会の会社なんですね。

”とブランディング上問題ある反応だったので、これを機に辞めました。(笑)

 

披露宴は2時間半の予定が3時間、4時間になってしまうことも多々あります。1日2回転が

当たり前でしたので、昼の部が押してくると夜の部の関係者が来てしまう。関係者からすると、

お祝いの席です。粗相があってはいけません。いかにバタバタしている様子を見せることなく、

お迎えできるか。全ては段取りにかかっていることを学びました。

私にとっては非常に強い原体験です。

 

また、披露宴というイベントではいろいろなハプニングが起きます。しかし、

そのハプニングを披露宴に影響させるわけにはいきませんから、最大級の機転が

求められます。まさにOT(有事の体験型ケーススタディ)的展開がてんこ盛りでした。

これもその後の私の糧となりました。

 

私が体験したハプニングの一例です。

 

・ウエディングケーキ入刀の際に「ナイフ」がなかった

・新婦がメインの高砂テーブルでトイレが間に合わずお漏らしをした

・“2次会のお知らせです”と言って新郎の昔の彼女が会場の外の廊下で「告発状」を配った

・新郎新婦の婚前旅行の写真を見て、新婦の父親の血圧が上がって倒れた

・披露宴が延びたためにプロの司会者が途中で帰った

・大雪で新郎が来れず、披露宴開始が8時間遅れた など等

 

Wedding-job社長の石渡さんと話しているうちに、“そうか、自分はウエディング事業を

通じて学んだんだ”と痛感して、今、ウエディング事業に関わっている若者たちが

困っているのであればお役にたちたいと思ったのです。

 

しかし、今思い返しても冷や汗ものの対応でした。こういう経験を若いうちにできたのは

本当に良かったと思います。

 

この手の私の社会人になったばかりの頃の経験談入れながら、社会人経験3年目くらい

までの方を対象とした「入社1年目からの仕事の流儀」という本を出します。

9月20日配本と聞いています。

 

例によって六本木ヒルズのアカデミーさんのご好意で「出版記念セミナー」を

やらせていただくことになりました。

 

9月26日(月)の夜です。アカデミー会員以外に特別に75席開放いただきました。

みなさんの周囲の若者(社会人になって3年目までが対象)で、柴田の話を聞かせたい

という人がいましたら、以下のURLからお申込みください。ご招待します。

もちろん、メルマガ読者で社会人年齢3歳以下の方は歓迎します。(先着順とします。)

 

https://indigoblue.co.jp/library_event/

 

 

おまけー1:Wedding womanのイベント会場への移動時間が少なかったので秘書のSさんが

タクシーを手配してくれました。神谷町のビルを出たところ、待っていてくれたのは

超高齢の運転手さん。

 

“行先ご存じですか?”と聞いたところ、

“はい。でも知りません。”と。 げげと思って、住所と伝えたところ、

“ナビの使い方わかりません”

 

モニタリングかと思う展開でした。(それでも定刻前に会場入りできました。なせばなる!)

 

 

おまけー2:自宅近くのコンビニ店の店員は外国人留学生が主。

名札を見ると「ンコ」さんだったり、「ハゲ」さんだったり。

日本人店長、名前呼ぶの困るだろうなあ。

 

おまけー3:Amazonプライム会員へのサービスすごいですね。

しかし、これは関係業界にとっては、明らかに“デストロイヤー”です。

 

 

Vol.619 取り返しがつかないこと

「取り返しのつかない事になってしまって・・・」

 

吉田沙保里選手がリオ五輪の決勝後のインタビューで語った言葉です。

何度もTVやSNSで流れていたので、みなさんご記憶にあると思います。

 

取り返しのつかないことをしてしまった・・・。誰でも経験があると思います。

あの時、こうしていたら・・・。後悔先に立たず。昔に戻って人生をやり直すという

テーマのTVドラマ、映画や小説がたくさんあります。

いかにこの“やり直す”願望が強いことか。よくわかります。

 

しかし、過去は変えられません。どんなに辛い想いであったとしても過去は過去。

今をしっかり生きる以外の処方箋はありません。今をしっかり生きていれば、

心ある人たちは過去を問わないはずです。

 

ビジネスにおいてもそうです。あのとき、撤退を決めていたら・・・、あのとき、

担当者を変えていたら・・・、あのとき、しっかり目を光らせていたら・・・。

 

結果が出てしまうとどうしようもありません。過去には戻れません。“あのとき・・・

していたら”。これはすべて自分に帰ってきます。

 

気になる点は多々ある。しかし、担当者は一生懸命やっている。もう少し様子を見よう。

 

意思決定者であれば誰もが経験する悩みです。

 

この判断が結果として正しかったのか、間違っていたのか。これは誰にもわかりません。

結果だけで判断できるものでもありません。

 

結果とは「自分でコントロールできる要因」と「コントロールできない要因」により

もたらされるものです。コントロールできる要因を全て完ぺきにしたとしても、

コントロールできない要因のために結果が伴わないこともありますし、その逆も然り。

たいして努力していないにもかかわらず、環境要因で成功してしまうこともあります。

 

となると、「自分でコントロールできる要因」を納得するまでやっておくこと。これ以外に

ありません。「あのとき・・・たら」という想いが出るのはそこが不十分だからです。

 

一番問題なのは、やると決めたことが実行されていないことを知りながら、意思決定者が

それを放置することです。特に指示命令したわけでなく、現場がやると決めたことを

やっていないことがわかったら動くべきです。それをせず、結果がNGの場合に

“あのときに・・・”という後悔が残ります。

 

意思決定者に後悔の念がある失敗ごとは意思決定者の責任です。担当責任者の問題では

ありません。仮に担当責任者が力量不足であったり、やる気が不足していたとしても、

意思決定者は“代える”というアクションを採らなかったわけですから、意思決定者の

意識の問題です。

 

個人で動くことでもそうですね。あ、あの人に連絡をとろう、この提案をしよう、

明日これをやろう・・・、思いついたことをやっているかどうか。思ったとしても

行動に移していないと何もやっていないことと同じ。思っただけに後で悔しい思いをします。

ここは意識してやっていかないと、“まあ、いいか”という悪魔のささやきに負けます。

 

 

・・・と偉そうなことを書きましたが、これは(いつもそうですが)自分への戒めです。

まだまだです。(反省の連続であります。)

 

 

おまけー1:記憶に残っている最初の「取り返しのつかないこと」は小学校1年生のときの

出来事です。当時なんと、男女のトイレが一緒でした、ノックせずに個室の扉を開けて

しまったところ、そこに、とても仲の良かった女の子が。その後、その子との関係が×に・・・

 

 

おまけー2:その次の「取り返しのつかないこと」は小学校3年生のときです。

自宅の軒先で「ボウフラ」を大量に孵化させたことです。信じられないくらい蚊が

発生しました・・・(この手の思い出は枚挙にいとまがありません。)

 

 

おまけー3:社会人になって間もない(3年以内くらいでしょうか)若者が

“取り返しのつかないこと”にならないようにと「入社1年目からの仕事の流儀」という本を

書きました。9月下旬に配本されます。

 

内定者や入社1年目のふりかえり研修の参考書として大変おススメです。

ご希望の方は以下よりお申込みを。

 

https://indigoblue.co.jp/pre_order/

 

 

 

Vol.618 仕事がデキるだけの”逆さ剣山”の見極め

仕事は抜群にデキる。但し、ヒトが離れていく人がいます。

 

上司からすると、信頼できる部下の代表格です。難しい案件であっても、そつなく

こなしてくれます。顧客の評価もすこぶるいい。常に顧客の期待を上回る仕事をします。

大型案件の獲得、クレーム対応、見事なものです。

 

しかし一緒に働くメンバーが去っていきます。

 

優れたリーダーは、“周囲に影響を与えて組織を動かす人”です。その人の日常的な言動、

存在感から周囲が感化され、1から10まで指示しなくてもメンバーが適切に動く。

そういうチームを創れる人が優れたリーダーです。

 

優れたリーダーは抜群に仕事がデキます。これなしには周囲がその人の影響をうけません。

一緒に働く人が目標にしたい、あんな風になりたいと思うだけの力量があってこその感化です。

これは専門性である必要はありません。むしろ、マネジメント力、問題解決力、交渉力、

プレゼンテーション力等のポータブルスキルです。その凄さが、“あんな風に仕事が

デキるようになりたい”と周囲に思わせるのです。

 

但し、これだけでは本当の意味での優れたリーダーにはなれません。

もう一つ、決定的な要素があります。一緒に働くメンバーが“自分のことをわかってくれる人だ”

 と思うかどうか。これです。仕事力だけではく、人間力が問われているのです。

仕事が抜群にデキたとしても、ここが弱い、または“無い”と人が離れていきます。

 

この人には変なことをされない、という安心感がないと心を許して仕事ができません。

誰しも得手不得手があります。弱点もあります。弱点を見せたら最後、何かのときに

“刺される”という恐れがあると、常に一定の距離感をもって接することになります。

そうなると、仕事面で学ぶことがなくなったと判断したときにヒトは離れていきます。

 

自分のことを育てようとしてくれているのか、いざというときに守ってくれるかどうか。

それとも、“駒”なのか。一緒に働いているメンバーは感覚的にわかっています。

後者の場合、そのチームがどんなに良い仕事をしたとしても、仕事が終われば関係性も

おしまいです。

 

「仕事がデキるだけの人」は上には大変良い顔を見せます。上へのメールの返信も早いですし、

痒いところに手が届くような仕事ぶりです。ホスピタリティとは「相手が欲することを予

見して動くこと」ですが、上からすると申し分のないホスピタリティを発揮してくれます。

(滅私奉公です。)

 

しかし、下に対しては異なる人格で接し、使い倒します。こんな人のことをある方が

「逆さ剣山」と表現していました。うまい表現です。自分のためにいい仕事をしてくれる

人が「逆さ剣山」かどうか。この見極めをしないと、トップの人を見る目が疑われます。

こういうところから組織感情がおかしなことになるので要注意です。

 

「人が離れていくかどうか」。これが判断材料になることは間違いないのですが、

離れていくメンバーに問題があることもあります。こんな事例がありました。

あるリーダーを新たに採用した後に多くのメンバーが離れていきました。すわ逆さ剣山か、

と思ったら違いました。そのメンバーたちは、長年にわたって“甘やかされていた”ために、

まっとうなリクエストを“まっとう”と感じられなくなっていたのです。なによりも、

その新しいリーダーは過去に一緒に働いた人たちに強烈に慕われている人です。

そういう関係性を築いてきた人がおかしなことをするわけがありません。

 

過去の評判も良くない、メンバーたちの様子もおかしい(目を合わせない、会話がない等)

の場合には、どんなに良い業績を上げていたとしても外した方がよいでしょう。

そうしないと組織全体がおかしなことになります。この見極めは上の大事な仕事です。

 

ちなみに、ホットライン系の内部通報は“仕組まれている”こともありますので、

鵜呑みしませんように。

 

 

おまけー1:自宅近くのお店(飲食、ファッション系)が次々に閉じています。

顔を合わすと立ち話をする間柄だけに非常に寂しい。街が変わっていくとはこういうことか。

 

おまけー2:台風が都内を通過したその時間帯にアポあり。普通は「見送りましょう」と

連絡があるはずですが、その連絡なし。自分が設定したアポなら絶対に連絡するのに。

ということで傘を横にさして出かけたのでした。

 

おまけー3:絆創膏ダイエットに挑戦。すぐに1キロ落ちたのでびっくり。

しかし、その後変わらず・・・。あれは1キロだけなのかもしれません。

大きな絆創膏を貼ればいいのでしょうか。

 

 

Vol.617 生後36か月で知的能力が決まるとしたら

イノベーションのジレンマ」で著名なクレイトン・クリステンセンさんの「教育×

破壊的イノベーション~教育現場を抜本的に変革する」(2008年翔泳社)を読みました

。第6章の「幼年期が生徒の成功に与える影響」に注目すべき記述があります。

 

生後36か月(つまり3歳)までに、どれだけ親から語りかけを受けたか、その言葉の量が

その後の知的能力を決める、というのです。この間に4800万語(1時間あたり約2100語)の

言葉をかけられた子供は、そうでない子供よりも明らかに物事を理解する力が高くなる、と。

 

この言葉のシャワーは「~しなさい」とか「手を出して」といった単純な指示の言葉ではダメ。

“あたかも乳幼児がその発言を聞き、理解し、完全に返事をしているかのよう”(本著からの

抜粋)なものでなければならないそうです。だからといって会話調のTV番組を見せ続けた

としても、これもダメ。そういう言葉は背景的な雑音となり、知能にはほとんど影響を

与えないそうです。

 

同じ指導を受けているのに、理解が進む子供とそうでない子供がいるのは事実です。

みなさんも経験的にそれを知っていると思います。この違いを本人のやる気や教員との

相性の問題、はたまた家庭環境、遺伝で片づけられない、と思っていましたが、

学校教育を受ける前に知的能力の基盤が違ってしまっている、というのなら腑に落ちます

 

これが真実ならば(本著によると実証されているとのことですが)えらいことです。

教育行政、福祉行政、育児政策、親の意識など変えなければならないことが山盛りです。

優秀な人材が揃ってこそ、国、社会、企業の成長につながりますから。

 

行政は教育予算の配分を「3歳まで」に相当の傾斜配分をしないといけません。

高等教育の充実を図りつつあるようですが、その前にやることがあります。4歳未満の教育・

福祉の充実です。

 

例えば1~2歳児の保育の場合、一人の保育士が担当する子供の数は6名というのが国の基準

ですが、これだと、保育士の手が回らず、語りかけといっても”~しなさい”、“ダメ!”

といった「指示」ばかりになってしまうでしょう。0歳時並みに3名以下にすべきです。

また「語りかけ」を意識する保育士を大量に育成確保する必要があります。

 

それよりも大事なのは「親の育成」です。親が生後36か月の関わりの重要性を認識し、

適切な語りかけをしたり、相応な環境の下で子育てをする。これが一番だと思います。

 

ところが、われわれは「親になること」について教わったり、練習をする機会がありません。

ここが課題の本丸です。

 

昭和の時代には家族や親戚や、家族づきあいをしているご近所さんなど、子育てを一緒に

する人たちが周囲にたくさんいました。そうなると見よう見まねで学んだり、兄弟や親戚の

子供の世話をさせられることがありましたので、疑似的に「子育て」をイメージしたり、

体験することができていたわけです。今は違いますよね。

 

一部の高校で「親になるための教育」を実践しているようですが、これを全国で必修に

すべきだと思います。もちろん、高校生のときに学んだとしても、そのときは“学びたい”

という意識が希薄でしょうから、それほどの効果は期待できません。保育園・幼稚園での

実習を義務化するのも良いと思います。大学でもやった方がいいでしょう。

しかし、これだけでは足りません。

 

母子手帳を交付した時点で、両親の出席を義務化した講座を開催することを提案します。

1回でいいと思います。ただし、その1回を(シングルマザーなど特別な事情がある場合は除いて)

両親で受講していない場合には出産時の助成金を支給しないなどのペナルティもつけた方が

良いと思います。

 

その後も出産後、半年、1年などの節目にこの「親講座」を開催します。参加すると

子育てに使用できるバウチャーが支給されるといったインセンティブがあった方がいいでしょう。

 

この「親の育成」が主たる政策で、その流れから保育園の質的量的充実を図るのが良いと

思います。それなしに働く女性の職場復帰促進を支援する施策を展開しても、

長期的には国を衰退させることになりかねません。

 

他にもあります。更に子供の運動能力が落ちていることも深刻だと思います。子供時代に

遊びを通じて身体を動かし、自然に身体能力が上がります。私の幼少時代と今は大きく

違います。子供が遊んで怪我をするのは当たり前、という風潮がありました。

今は公園から“危なそうな”遊具が姿を消しています。

 

大型の遊具を販売している会社の人に聞きました。遊具の劣化などでなんらかの事故が

起きると一斉に同じ型の遊具の撤去となるそうです。そういえば、球形のジャングルジムで

くるくる回る遊具を見かけなくなりました。ボール投げができない小学生が目立つ

ようになってきたことも懸念されます。

 

子供の育成は行政、学校、(企業を含む)社会、親が力を合わせてこそ成しえるものだと

思います。やること満載です。

 

 

おまけー1:オリンピックを終えて「Identity crisis(自己の喪失)」に直面する選手が

たくさんいるだろうなあと心配します。ビジネスマンでも同じ。大きな仕事を終えたり、

途中で外されたりするとIdentity crisisに対峙することになります。

 

自分の中でいかに昇華させられるか。そこで器を問われます。

 

おまけー2:卓球。どこの国にも「中国出身」らしい選手がいますね。猫ひろしだけじゃない。

 

 

 

暑中お見舞い申し上げます

残暑お見舞い申し上げます。

 

今週の「人事の目」は世の中の「お盆休みモード」に便乗してお休みです。

 

世界中を飛び回っている方がおっしゃっていました。

 

”日本が一番暑い”

 

そんな感じです。くれぐれも熱中症にお気をつけください。

 

 

おまけ:某TV番組でソーメンにラー油を入れて食べると美味しいと言っていました。

試してみたくなりますね。

 

 

Vol.616 働き方改革の本丸

“このままだと日本の大企業は圧倒的に劣位になる” 

 

米国の先進企業の視察から戻ってこられた方のお話しを聞いて危機感を強めました。

日本の大企業の働き方と全く違います。

 

“みんな目の色が違う。指示を待ったり、顔色を窺ったりしない。自分でどんどん

やっている。意思決定は数名。決まるとあとは全員がどんどんやる。社内の誰かのための

仕事は少ない。会議のための資料作成とか、決まったか決まってないかわからないような

会議はない。とにかく、わくわくしながら仕事をしている。”

 

Work and life, and …fun! 最後のfun!があるかどうか。これが大きいと思います。

 

この違いを生んでいるものは、仕事内容を自分でデザインして自分で管理して

進めているか、それとも誰かの管理の下で評価を気にしながら言われたことをやっているか。

この違いだと思います。

 

「わくわくしながら、どんどん仕事をする集団」と「周囲の目を気にした指示待ちの集団」。

 

どっちが強いか、どちらが魅力的か。考えるまでもありません、優秀な人材はこぞって

前者の会社に移っていきます。どこにも移れない人が後者の会社に滞留します。

 

仕事もきちんとやりたい。家庭や私生活も充実させたい。仕事のためにそれ以外を

犠牲にするような働き方をしていると人生の最終節で必ず後悔します。今の若い優秀な

人材はこのことをわかっています。

 

働き方を変える。これは日本企業の最大のテーマの一つでしょう。

内閣改造で働き方改革相が新設されたのは良いことだと思っています。国としてこれを

課題視したわけですから。但し、首相が会見で強調したとされる「同一労働同一賃金を実現し、

非正規という言葉をこの国から一掃する」、この実現だけを見つめて進めると本質を

見失うことになります。

 

働いている人の多くが(全員とは言いません)わくわくしながら、どんどん仕事をし、

かつ家庭も私生活も充実させているようにすること。これがゴールだと思います・

 

これが実現しますと国全体か明るくなります。人口が減ったとしても活力ある社会が実現します。

わくわくしながら働くために元気になろうとする人が増えると健保財政が悪化しません。

また年齢関係なく働くようになると、年金財源の問題も緩和されます。当然ながら消費も増えます。

 

このために必要なことは「働き方」と「その周辺の既成概念」を変える。

これが働き方改革の取り組むべき課題です。

 

課題は満載です。例えば、「新卒一括採用」「時間管理のあり方」「目標管理制度」

「個人保証を求める金融機関」「(新しいことに)ついていけない人たち+変化を

受け入れない人たちへの過剰な配慮」等、対処すべき課題は明らかです。

多くの識者が指摘する通りです。

 

「新卒一括採用」は若い世代の人たちに“何をしたいか?”ではなく、“どの会社に

就職したいか?”という意識を醸成します。これは給料をもらうために労働する

「サラリーマン」を大量に生み出す温床です。

 

ホワイトカラーの仕事についている人は秘書、アシスタントなどのサポート職を除き、

時間管理を自分で行えるようにした方がいいです。これが前々から私が主張している

ホワイトカラーエグゼンプションです。それがないために不必要な残業が生まれたり、

育児や介護を抱える人を働きにくくしています。

 

そもそも自分の時間の使い方を日常的に誰かに管理されて楽しいわけがない。多くのことを

同時にやろうとしたら、時間配分を考えなければできません。仕事だけでもそうですし、

仕事以外のこと、家族・友人との時間をどう工面するか。それは個々人が自分で考えて

やった方がいいに決まっています。そこに会社の時間管理のルールが制約になるので

ストレスがたまるのです。

 

「目標管理制度」「個人保証を求める金融機関」も課題です。前者は負けない

(失敗しない)ゴールを選ぶ意識が定着します。後者は起業者の挑戦へのブレーキとなります。

 

しかし、本丸は「ついていけない人たち+変化を受け入れない人たちへの過剰な配慮」です。

これが災いして、全ての事がなかなか変わりません。

 

新しい技術やアイディアが生活や働き方を良い方向に変える可能性を提案しても、

そのベネフィット(恩恵)を享受するよりも、それについていけない人たち+変化を

受け入れない人たちへの配慮にお金と労力をかけるという判断になる。ここを変えないと、

どんどん取り残されます。

 

覚悟を決めてここに取り組むべきだと思っています。企業だけではく、生活・サービス面でも

時代遅れの国になってしまいます。国に働き方改革の気運があります。しかし、

国に頼るのではなくできることをみながチャレンジする。それが本丸解決を早期化すると思います。

 

 

おまけー1:UberEATS:ただのUberからここまで。これを可能にしている働き方に注目しています

 

http://jp.techcrunch.com/2016/03/16/ubereats-standalone-food-delivery-app-launches-in-its-first-u-s-cities/

 

 

おまけー2:ご覧になったことがある方も多いでしょう。ロボットキッチン。

 

http://www.moley.com/

 

おまけー3:日常に埋没していると未来が見えなくなる。やばいです。