柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.657 優秀な若者が会社を辞める

先日こんな話を聞きました。

 

“新卒で一流と呼ばれる大企業に入社した。1年目の半分はほぼ研修。いい人たちに囲まれ、

良い会社だと思った。その後、本配属され自分なりに頑張って仕事をしてきた。

2年経過して外を見る機会があり焦った。外資系や中堅、ベンチャーに入社した同世代の

人たちよりも明らかに視野が狭く、実力もない。このままではいけない。”

 

この女性は同期入社の中でも秀逸。まさに期待される存在だったそうです。入社3年目の

4月に退職し、同じ業界の外資系企業に転身。転職先で早くも頭角を現し、

この9月にはシンガポールへの転勤が決まったそうです。

 

“このままではいけない”の意味は、“このままだと転職もできなくなってしまう。”

だそうです。

 

“経験に勝る学びなし”。将来が嘱望される優秀な人材を獲得したら、できるだけ早く

責任ある仕事を担当させた方がよいです。この女性は組織の中で新卒2年目・3年目の

社員がやる仕事を普通に与えられ、何の疑いもなくそれを粛々とこなしてきたのですが、

ある日外の世界を見て、自分の時間を無駄にしている、と気づいたわけです。

 

優秀な若者が入社したら、手に余るような難しい案件に就けましょう。

 

何とかしないといけない。しかし、経験がなく、どう進めていくべきか検討もつかない。

そういう仕事に直面すると、“誰かに助けを求めざるを得ない”状況になります。

それがいいのです。

 

学生時代にちょっと優秀だったりすると、人に助けを求めることを躊躇します。

自分の小さなプライドが邪魔をするのです。どんなに優秀な人であっても万能ではありません。

大きな仕事をするときには、最も力を発揮できる人たちでチームを組んで行う方が良いに

決まっています。自分がやらない方がいいこともあります。このことを“頭で理解する”

のではなく、体感してもらう。この学びを若いうちに得ることができるかどうか。

その後の成長の分岐点になります。

 

先日、某大企業の社長以下、主要幹部の方々の経歴をお伺いする機会がありました。

みなさん、20代のうちに非常に難しい案件を担当させられていました。しかも責任者として。

その時に遭遇した上司、何とも言えない焦燥感、これらがその後の自分を形成したと

仰っていました。

 

同じような思いをしている若者が今の会社にいるか、という問いにはみなさん「NO」でした。

 

これが多くの日本企業の実態だと思います。

 

事業が安定し、組織も安定してきますと、人々の心の中にそれを維持しようとする力が

働きます。安定・安住を享受し続けたいという本能的なものだと思います。

 

これを「Comfort Zone」といいます。「Comfort Zone」から出ないように、想定外の事態が

起こらないように、様々な措置が図られます。

 

仕事については、一人が“一人の仕事”をきちんとこなすこと。それが重視されます。

冒険は避けます。そうなると海のものとも山のものともつかない新人に大きな仕事をさせません。

新人は新人のやることを粛々とやるべし。そうなるのです。多くの新人もその「Comfort Zone」

の中で全力を尽くすことを望みます。

 

それでよいのです。そうでないと大企業が維持できませんから。

 

ただ、中には自ら「Comfort Zone」から飛び出しチャレンジしたいと考える人材がいます。

若干います。そういう人が改革をけん引し、将来の絵を描き、リードする人材になる

可能性が大です。彼ら彼女らを処遇しきれない。それが大企業の人事課題です。

先の女性もその一人でした。

 

こういう人材をリテンションする(辞めないようにする)には、尊敬できる上司、

本人の志向性を充たせる仕事(手に余るような仕事)、社内認知が必要です。

そういう人材を経営陣が認知し、ある意味で特別な配置をする。ここからです。

 

人事制度が邪魔することもあります。細かいグレードを刻むのではなく、ブロードバンドして

括りましょう。新人でも実力があれば数年で管理職になることができる。

柔軟性を制度に組み込みましょう。

 

 

 

おまけー1:大阪で定宿にしている某ホテルのクラブフロアで、部屋番号を言うと、

いつも手に書く女性がいます。毎回、手に書くので、聞いてみました。

 

“手に書くんだ?”

 

 “え、腕に書きましょうか” とニッコリ。(さすが大阪!)

 

 

おまけー2:“うたいダコ”ができていますので、今週も歌わないように。

 

喉のお医者に職業を誤解されています。しかし、この先生のおかげでかなり改善。

 

 

おススメコーナー:“凄い歌唱力”!一人でソプラノとテナーの声を使い分けてる!

 

https://www.youtube.com/watch?v=3RWs7yeGLyU

 

 

Vol.656 任命責任の果たし方

任命責任

 

役職者がその任に堪えないと判断されるときに、任命者の人選責任を問う。

閣僚が問題を起こしたときに総理が追求されるやつです。最近もありましたよね。

 

会社の中でも同じことがあると思います。特に抜擢したがうまくいかなかったときに、

抜擢した人間の責任をどう問うか。

 

抜擢する側はできると思って抜擢するわけです。そこには期待もあります。頑張って

「上の仕事を」こなしてほしいと思っているはずです。その人も全力でその期待に

応えようとするはずです。しかし、思ったように進まない、業績もあがらない、

組織運営上の課題も浮上。

 

・・・人事任用上、よくあることです。こんな場合にどうするか。

 

見るべきは業績ではなく、組織運営上の課題です。業績の良し悪しは外的要因の影響も

ありますし、そんなに短期的に改善するものではありません。それよりも業績を上げる

ためのエンジンたる組織感情に影響が出ていたら、そこを注視しないといけません。

 

組織感情が荒れてしまうと時間をかけても業績が良くなることはありません。それが

そのリーダーの言動やリーダーシップによるものであれば、抜擢した人間がその状況の

改善を図らねばなりません。それこそ更迭の可能性も検討しないといけません。

 

その人が全力でやっていた場合には、×はつけられません。全力でやってはいるが、

その人の力量が足りないための結果なのですから。だとすると“できると思った”が、

“まだその状態にない”ということなので、任命者がその人の不足分を補うべく

立ち回らないといけません。

 

その人もうまくやれていないことは自覚しているはずです。まずはその人と対話し、

どうすれば事態が好転するかを一緒に考えます。その際に“できていないこと”、

“顕在化した問題”について怒ってはいけません。

 

任命者が怒っていることを認知すると、抜擢された人は委縮します。委縮して

相談しなくなるか、評価を取り戻そうとして事態を更に悪化させる行動をとりがちです。

こうなってしまうと、その人間が「再起不能」になってしまう可能性があります。

これは優秀な人材を潰すことになります。

 

ここで抜擢した人間がすべきことは、その人間のコーチとして事態の改善を一緒に考えることです。

 

一緒に考えた結果、交代した方が良いということになれば、組織にとって最も軋轢が少ない

交代を演出します。併せて、その人がその“失敗”から学んでもらうべく導きます。

失敗から学んでもらえばいいのです。それがあると次につながります。

 

 

私は「抜擢」が好きです。意欲があり、ポテンシャルがある人には早い段階から大きな

役割責任を担ってもらった方がその人の成長につながる上に、勢いがある人がリーダーになれば、

その組織自体も活性化するからです。但し、過去に自分が抜擢した人事を考えてみると

十分に抜擢した後のサポートができたかというと反省しきりです。

 

自分に足りなかったことは、日常的なサポートです。抜擢した人物との対話の時間を

自分の基準で設定していましたが、その人からすると、もう少し頻繁かつ近いところで

サポートしてもらいたかったのだろうと思います。抜擢の場合には未知数なので、

最初はいつでも不足分を補えるところにいた方がいいに決まっています。

 

私が忙しいことはわかっていたのですから、自分以外の誰かをその抜擢者のスポンサー

(コーチ)としては配置しておくべきだったのです。この手を採ったこともありますが、

途中からの配置は逆効果になることを学びました。抜擢者の心象風景を慮ればその通り

なのですが、事態が悪化してからの配置は「お目付け役がついた」という印象が

ぬぐえませんでした。

 

抜擢した以上、しっかりサポートする。これが任命責任の果たし方だと思います。

それが十分ではなく、うまくいかなかったときには抜擢者は深く反省し、周囲が納得する

処し方を採る。それが任命責任の取り方だと思います。

 

 

過去に抜擢した人が全力で仕事をしていなかったことがありました。これは明らかな人選ミス。

自分が関わっている組織では心のどこかで“いざとなったら自分が出て行ってやればいい”と

思っていたのかもしれません。明らかに人選の目が曇っていました。これは大きな学び

として残りました。まだまだです。

 

 

 

おまけー1:九州を縦断する「ハウステンボス号」のグリーン車にはなんともいえない気配が

漂っています。

 

なぜか、全てのカーテンが閉じており、不思議な音楽が。二人席はなぜか席を倒して寝ている

ひとばかり。寝ているのですが、車内に誰かが入ってくると、薄目を開けています。

 

この空気の中で飲むものは「愛のスコール」だろうと思いました。

(だから駅の自販機で売っているのだ。きっと。)

 

 

おまけー2:博多で「イカ刺し」をいただきました。運ばれてきたときにはイカが

まだ動いていました。一切れ食べたところ、イカの目がぎょろり。うわー。

 

 

おススメコーナー:博多エクセルホテル東急では夜中に「シューシャインサービス」を

やっています。24時までにお願いすると、翌朝6時までにピッカピカにして返してくれます。

これ本当にいいサービスです。しかも、わずか3,000円!

 

https://www.hakata-e.tokyuhotels.co.jp/ja/index.html

 

 

 

 

 

Vol.655 進歩がないから、ずっと忙しいのかも

「忙しい、忙しい、と言っている人は自分を進歩させていない。」

 

某企業のトップから聞きました。その通りだと思います。

 

自分の処理能力を高めるための努力と工夫。これを自然にやれるようになると、

時間に余裕が生まれます。そうなると、仕事の質が高まり、幅が広がります。

仕事の醍醐味や楽しさも増します。いい事尽くしです。

 

ちなみに(自分で言うのも何ですが)自分の処理能力・処理速度は年々高まっていると

思います。多くの方から睡眠時間のことを心配されますが、平均で7時間~8時間は

寝ています。夜遅くまで仕事をすることはほとんどありません。自宅でPCと格闘する

こともほとんどなくなりました。しかし、仕事の内容は数年前よりも明らかに多様化し、

量も増えています。仕事に追われている感はありません。

 

その秘訣の一部をご紹介します。

 

意識すべきは「アウトプット作成力」のスピードを速くすることです。

代表的なアウトプットとは「資料の作成」、「仕事の段取りの設計」、「メール処理」です。

 

まずは極めて基本的なことから。

 

パソコンのキーボードのタッチのスピードを上げましょう。ブラインドタッチは当たり前。

思考と同じスピードで言葉を表示できるようにしましょう。最近はスマホ音声認識の精

度が上がってきているので、音声認識でやれるものはキーボードを打つよりも音声入力の

方が確実に早い。検索系のことはスマホ音声認識を使いましょう。

 

マーサー時代の同僚の岡田充弘さんが

 

「仕事が速い人ほどマウスを使わない! 超速パソコン仕事術」

 

という本を出しています。ぜひ、こちらを参考にしてください。PC操作でマウスを使っては

いけません。本当にそう思います。マウス慣れしていると、移動中に作業ができません。

 

https://www.amazon.co.jp/dp/B01GCNU864/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

 

ワード、パワーポイント、エクセルといったツールの操作に慣れましょう。特にパワポ

プレゼン資料をつくるコツを習得しましょう。パワポ禁止という会社も出てきていますが、

これは余計な資料を時間かけてつくる人がいるからです。

 

プレゼンの主役はあくまでも「話し手」。「話し手」のメッセージをより鮮明かつわかりやすく

伝えるための資料ならば全然問題ありません。そのコツをマスターし、それを表現するための

ツールとしてパワポをスラスラ使えるようにするのです。

 

コツは「ストーリー」です。自分が伝えたいメッセージをストーリー展開させること。

「空」「雨」「傘」という古典的な流れをマスターするのは基本。

「背景→目的→手段→費用と効果→代替案との比較」。こうした流れを徹底的に自分のものに

するのです。

 

 

応用編としては「会議の生産性の向上」。これまでも何度か紹介していますが、会議後に

関係者が誤解なく、遅滞なく動けるようなディレクションができることが目標です。

そのためのファシリテーションをリーダー自らが行うことで自分を含めて、関係者の処理能力が

上がります。これにより、議論の“先祖がえり”や会議後の“確認パレード”をなくします。

 

必要なコツは「Wrap up(とりまとめ)」と「可視化(みなが同じ内容を見る)」です。

 

 

他にも工夫すべき点はたくさんあります。私ももっともっと処理能力を上げて、“もっと楽したい”

ので、常に真似できることはないか、いいツールはないかとアンテナを伸ばしています。

 

根本的なことは時間が貴重であるという感度を高めること。「5分もある!」という感覚を

持つことだと思います。

 

「5分」あればメール数本処理できます。ぼけっとしているとあっと言う間に「5分」は

消えます。ONの間はこうした隙間時間を無駄にせず、できることをどんどんやる。

この姿勢が処理量を高め、結果として“楽に”なります。

 

日々、何時までに何を仕上げる!と考えて、持ち時間を意識して仕事をしていくと

次第に身体がそのスピード感を覚えて速くなります。PCの操作もそうです。

 

 

この発想に障害となるのが「時間給的発想」です。生産性を高める(投入時間が減る)と

報酬が減るという状況だとホワイトカラーの生産性の向上へのインセンティブが働きません。

ずいぶん前から「ホワイトカラー・エグゼンプション」を解禁せよ、と言ってきましたが、

最近の報道を見るに、またしも残念な展開です。

 

働き方改革の本質は、個々人および組織の生産性が高まることで、

 

国民がより創造的、文化的、ひいては更なる生産的な活動に時間を使えるようになり、

豊かな心が育まれ、経済活動への刺激が行われ、結果として日本に住む人・働く人の

幸せレベルが上がる

 

ということではないのでしょうか。

 

想定されるネガティブ要素対策の議論ばかりしていると、本質を見失います。

 

 

 

おまけー1:声のことでご心配をおかけしました。まだ別人の声ですが、仕事には

支障がないようになりました。ある方から声楽家を治療される先生をご紹介いただきました。

診てもらいます。

 

 

おまけー2:先日、天文学的な確率の出来事に遭遇しました。乗ったタクシーが連続して

小さな接触事故を起こしました。(私は全く無事でした。)これは“当たり日だ”と思い、

早速サマージャンボ宝くじを買いました。

 

 

おススメコーナー:本はKindleなど電子ブックで読むのがおススメです。場所をとらない、

いつでも読める、検索できる、重くない。Kindleに代えてから、書棚を持って移動している

ような感覚です。(Kindle対応していない本を買うのが躊躇されるくらいです。)

 

 

 

Vol.654 あなたの話を聞かせてください

声が出なくなりました。

 

正確には7月13日の午前中の講演中、突然声の出が悪くなり、あれあれ、と思って

いましたら、どんどん出なくなり、その日の午後には典型的な“おかま声”に。

翌14日には音を失いました・・・。その日のセッションは「つんくさん方式」で

画面に文字を投影して行うという苦肉の策で乗り切りました。

 

翌15日に自宅近くの耳鼻咽喉科に駆け込んだところ、

 

「ああ、声帯が腫れてますね。喉を酷使しましたね。」

「そんなことはないです(と筆談)」

 

「これだと1か月くらいかかりますね。ステロイド点滴しましょうか。」

「え!(と筆談)」

ステロイド点滴すると、すぐに治りますよ。錠剤も2日分だしておきます。」

 

ステロイド・・・? ベンジョンソン? 走ったら速くなる?などと思いながら、

ステロイド点滴を実施。

 

治りません。

 

3連休を経ても声は復活せず、その間のアポイントのみなさんには大変ご迷惑をおかけしました

。特に事業再生会議に陪席させていただいた某企業では、せっかくの再生ののろしを

盛り下げるようなトーンの話し方になってしまい申し訳なかったと思っています。

 

その後、知人からの助言の「梨湯」により、ヒューヒュー音が出るようになりました。

それでも通常とは程遠いコンディション。そういう中で、某大企業の役員セッションの

ファシリテーション、某財団の打ち合わせの仕切りなど「話さざるをえない」

スケジュールが続き、参りました。声が出ないので、ずっと前から楽しみにしていた

“ビールを浴びる”という会食はリスケに。

 

わたしのこんな有様を見て、某芸能事務所の社長さんから「タレントの声が出なくなった

ときの薬です。」と漢方薬をもらいました。

 

効きました。

 

声は出るようになりました。が、違う人になりました。明らかに声変わりしました。

55歳での声変わりです。

 

親に電話をしたら「おれおれ詐欺」と勘違いされて切られました。

 

こんな状況で思いました。喋れないことの不自由さとストレスはすごい。言いたいことを

言えない環境に身を置かれている人たちは大変だろうなあと。私のように喉をやられている

場合には、まだあきらめもつきます。そうでないのに、言いたいことが言えない。これは辛い。

 

組織の中で「言いたいことがあるのに言えない」と、これがストレスとなり、組織感情が

悪化し、結果としてスムーズに物事が進まなくなります。そのうち、心を病む人や

黙って辞めていく人が続出します。そうなると、何をやろうとしてもうまくいきません。

 

一人ひとりが抱えている「言いたいこと」は経営という観点からは取るに足らない

内容かもしれません。重要なことは、その内容ではありません。それが何であれ、

聞くという行為です。「あなたの話を聞かせてほしい」、 ここにはその人への

リスペクトがあります。

 

自分は会社からリスペクトされている。この思いはヒトの心に火を灯します。

生産性向上が叫ばれる今日だからこそ、目に見えない配慮をしたいものです。

 

“あなたの話を聞かせてほしい”。リーダーが現場を視察するときの鉄則です。

 

 

おまけー1:不思議なもので、こちらが声が出ないと、話しかけてくるほうもヒソヒソ声に

なったり、筆談系になる人がいます。感受性の高さによるものと思います。

 

 

おまけー2:この話、家の中でも同じことが言えますね。

 

 

おススメコーナー:7月24日(月)のNHKおはよう日本の「おはBiz」で私が解説する

「カイシャインのおきて」第二弾「苦手な部下とは・・・」が放映予定です。

 

早朝の6時10分頃だと思います。ぜひご覧ください。

見逃した方は以下のサイトに追ってアップされますのでこちらをどうぞ!

 

 

http://www.nhk.or.jp/ohayou/biz/

 

 

 

Vol.653 大企業のCSR 

 

大企業のCSR(企業の社会的責任)について思うところがあります。

 

CSRとは、「企業が自社の利益を追求するだけでなく、自らの組織活動が社会へ与える影響に

責任をもち、あらゆるステークホルダー(利害関係者:消費者、取引関係先、投資家等、

及び社会全体)からの要求に対して適切な意思決定をすることを指す。」とWikipedia

にはあります。

 

多くの大企業がさまざまな社会的な催しや芸術への支援、環境問題への貢献等をしています。

素晴らしいと思います。私もその恩恵に与ったことがあります。

 

ただ、気になっていることがあるのです。

こうした素晴らしい活動の一方でこういうことがあります。

 

“うちと取引させてやっているのだから、全てのリスクはそちらで持て”

 

大企業の(CSR部門ではない)現場の担当者や総務/法務担当者に、取引先のベンチャー

中小企業に対して「仕事をさせてやっている」という姿勢を取る方がいます。あるいは、

会社としてそういう要請するのが当たり前になっていたりします。

 

これは大企業と取引をするベンチャー系の企業がよく感じていることです。

(Indigoblueもベンチャー企業の端くれですから、同様の体験をしたことがあります。)

 

私はベンチャー企業への支援はCSRの一環だと思っています。資金を出すということでは

ありません。良い商品・サービスを発見したら、その会社の規模、沿革に関わらず、

それを積極的に採用し、その普及を支援する。それがCSR活動になると思います。

 

これにより、新たな価値が生まれ消費者の利便性が向上し、同時に新たな経済循環が

生まれ、社会が豊かになります。そのベンチャー企業が成長すれば雇用も拡大します。

これらのきっかけを創ることは大いに社会に貢献する行為です。CSRの実行そのものだと

思います。

 

しかし、必ずしもそうではないのが現実です。大企業との取引では嫌な思いをさせられる

ことが少なくありません。

 

ある技術系ベンチャーの話です。その会社が開発した製品の独自性を評価した

大企業からの発注要請を受けたらしいのですが、こんなことを言われたそうです。

 

“おたくはいつ倒産するかわからないから、倒産したときにはコード(技術情報)を

全て無償で提供すると契約書に書いてください。それと、本件で損害が発生した場合に

備えて個人保証をしてください。”

 

頑張って素晴らしい製品を開発した会社をサポートするどころか、製品だけ搾取しようと

する態度が見え見えです。個人保証を求める姿勢には驚きます。

 

さらに別のベンチャー企業でこんな話もありました。

 

“(金曜日の夜に)月曜の出社までにお願いできるとありがたい”

“上に見せるので、今日の資料とは別にこういう資料をつくってください”

 

ベンチャー企業は人材が潤沢にいるわけではありません。自分で開発し、営業し、かつ

資料を作成し・・ということを眠る時間を削ってやっています。やることは満載です。

それを、自分が上に説明する資料をつくる手間を惜しんで(能力がない?)、

更に資料づくりをベンチャーに要請するのはいかがなものでしょうか。

 

さらには信じられないのですが、こんなこともよくあります。

 

“おたくには信用力がないので、値引きをしてください”

“今後のお取引もあるので/別の形でお付き合いできるので、値引きしてください”

“代金の振込手数料はそちら負担でお願いします”

 

“社内手続きが遅れたので支払いは来月でお願いします”

 

言うまでもなく、ベンチャーは資金繰りに四苦八苦しているところが殆どです。

値引き要請、振込手数料負担の要請、さらには簡単に支払を延ばしたりする、

これらは大企業としてはありえない要請だと思います。

 

この、“うちと取引させてやっているのだから、全てのリスクはそちらで持て”という

姿勢がどこかにある限り、その大企業は自分の利だけを追求していることが明らかです。

たとえ素晴らしい支援活動を行っていたとしても、こういう行為がありますと台無しです。

 

この他の大企業の担当者がよく言う言葉です。

 

“正式には聞いておりません”(途中で止められるための前口上)

 

経営者はこのことを知りません。多くの場合、担当者が自らの保身のために取引先に

必要以上に厳しくあたっているのです。折を見て、自社がどのような契約書を出している

のか確認されることをおススメします。これらの「大企業ならではの態度」がその会社の

評判を落としています。下請け法違反ではないから大丈夫、ではないのです。

 

いい仕事をしているベンチャー企業に遭遇したら、その企業が更に発展できるよう、

営業・金融支援をする。これこそが大企業が持つべきCSR精神ではないでしょうか。

 

 

おまけー1:小学生が横断歩道で手をあげたらタクシーが止まり、その小学生がタクシーに

乗りました(そういうことなのか?)

 

おまけー2: ヒアリ問題で思い出すのが、インドネシアの「アオジタトカゲ」。江戸時代から

インドネシア経由で届くオランダの物産の中に「アオジタトカゲ」が潜み、上陸したのが

ツチノコ」だと思っています。

 

アオジタトカゲの画像検索してみてください)

 

おススメコーナー:「黒鳥の湖」です。

 

ショーチェンジして、かつての六本木金魚を彷彿させる状態になっています。

ぜひ足を運んでみてください。

 

http://www.kokucho.com/

 

 

 

Vol.65 選挙

1週間前の都議選について、思うところがありました。

 

まずは、呆れた候補者、勘違いの応援演説をされている方が結構いたこと。安倍政権がどうの、

自民党がどうの・・・。ずれています。これは「都議選」です。国政の政局話をするところ

ではありません。選挙カーで名前の連呼をされている人もダメ。単純にうるさい。

 

私は期日前投票をしたのですが、現職者で地に足がついた活動をされている方に票を

投じました。(当選されました。)

 

結果はみなさんご存じのとおり、都民ファーストの会の圧勝でした。この結果を受けて、

むむむと思いました。都民ファーストの会がどうということではありません。

都民ファーストの会には期待しています。前例に囚われることなく新しい風を吹かせて

ほしいと思っています。私が問題視しているのは「単純多数決」というやり方です。

ブームで過半数政党が生まれるのはいかがなものかと。

 

国会でもそうです。与党が過半数議席を有しているために結論が見えています。

このためか、議論も本質的な話ではなく、野党は与党の執行者たちの行動についての批判ばかり。

決議は強行採決の連続。マスメディアが報じるのは「スキャンダル」系の話ばかり。

実際に投票が行われても、投票に行くのは有権者の半分です。

 

今回の都議選の投票率は51.28%。ちなみに総務省によると平成26年衆議院議員選挙の

投票率は52.66%、平成28年参議院選挙が54.70%です。

 

これは低過ぎます。スエーデンやアイスランドは85%、デンマークが88%、シンガポール

オーストラリアでは投票に行かないことに罰則があるので90%を超えています。

 

こんな有様になっているのは「単純多数決」という仕組みに問題があるのではないでしょうか。

 

一つの政党が過半数を占めることがないように人数枠を決められませんでしょうか。

小選挙区の結果についても、その選挙区の有権者数、または投票数に閉める割合から

順位づけできるはずです。例えば、第一党は全議席の40%以内、第二党が20%以内、

第三党が10%以内、その他を30%以内としてはでどうでしょう。

 

過半数与党がないと何も決まらない。政治が停滞するという意見があるかもしれません。

しかし、そうであっても議論を尽くして、決めていくのが政治家の役割責任ではないでしょうか。

それを果たさない議会については有権者が解散請求できるようにすればよいと思います。

 

 

一方で投票により現職者が評価される仕組みは良いと思いました。これは会社組織でも

やった方がいいですね。

 

株主総会では取締役選任議案で株主からの“信任投票”がありますが、社長、執行役員

(事業・機能責任者)については社内からの信任投票をしてもよいのではないでしょうか。

もちろん、その結果いかんですぐ解任や解職はしないという前提です。

 

以前メルマガで紹介した「感謝の朝礼」をやっている福岡のさくらフォレストという会社では

取締役、執行役員を独自の社内選挙で決めています。ここまで踏み込める企業は少ないと

思いますが、信任投票はいいと思います。トップマネジメントがどれだけ社内で信任を得て

いるのか。これを直接的に伝えることができます。

 

現職者にしてみると、自分の信任の度合いを知るのは怖いでしょうが、自分の行動、

情報発信の内容、あり方などを見直す良いきっかけになるはずです。

 

 

民主主義の実現方法、人事運営についての問題提起でした。

 

 

おまけー1:中学時代、生徒会長選挙に立候補して「最近、救急車で運ばれた柴田です」

(これは実話)とあいさつしたら全校生徒にウケて当選しました。実際にはウケて注目を

集めた後に真面目な公約を発表という戦略でした。

マック赤坂さんはこの戦略なのだろうと思います。)

 

 

おまけー2:7月3日の夜に「東京 新宿・代々木2丁目付近で停電発生 「新線新宿駅6番出口

付近のビルで爆発音がして停電。道路封鎖」というSNSあり。どうしてこういう情報はSNSだけ

なのでしょうね?

 

おススメコーナー:7月30日(日)にOTでも活躍してくれているレミゼラブル出演俳優の

伊藤俊彦ご夫妻による映画をアレンジして読み語りする会が開催されます。

今回の題材は『きみに読む物語』。

 

成城の高級住宅にひっそりとたたずむ、まるで中世の教会のような素敵なサロンで

グランドピアノの生演奏と共にお届けします。

 

【TIME SCHEDULE】

1st  12:30 open 13:00 start 2nd 16:30 open 17:00 start

※各回終演後にtea timeあり

 

【PLACE 】

サローネ フォンタナ http://salonefontana.jp/

 

【FEE】

¥4,000 

 

【お申込みはこちらへ】 rayofthebluemoon@yahoo.co.jp

 

希望回と枚数、ご連絡先メールアドレスをお送りください。

 

 

Vol.651 仕事をする前にやることがあるだろう?

「仕事をする前にやることがあるだろう?」

 

某企業の次世代人材候補のインタビューの中で聞きました。海外転勤した際にトルコ人

上司から言われたそうです。仕事をする前にやることがある。そうです。私自身、過去に

何度か言われたことを鮮明に思い出しました。

 

仕事をするキャパシティを思い切りストレッチさせることは、自分の成長のために必要です。

むしろ、そういう時期がないと伸びません。簡単な仕事や力を余すような仕事を続けている

と、仕事の筋肉が退化して、どんなに優秀だった人材も“ただの人”になります。

 

誰がやっても難しい仕事、経験のない案件、質的に難しいもの・・・、

これらに立ち向かっているときには、土日なく24時間仕事漬けになります。コンサルティング

会社、ベンチャー企業はそういう環境でしょうし、大企業においても初めての大口取引、

M&A対応、不祥事対応などはそういう状況になります。こういう仕事に取り組むときには

時間を気にしていてはできません。

 

これを繰り返していくうちに、武道で言うところの“見切り”ができるようになり、

それほど多くの時間を投入しなくても対応できるようになるものです。

もちろん、一回や二回のストレッチでどうにかなるものではなく、この断続的な繰り返しが

追って効いてきます。

 

問題なのは、これを断続的ではなく、ずーっと続けてしまうことです。しかも家庭に一大事が

あってもお構いなく仕事を優先。そういう人たちに伝えたいのが今日のメッセージです。

「仕事をする前にやることがあるだろう。」と。

 

こうした働き方をずっと続けていますと、地位、名声、報酬は上がるでしょう。

しかし、同時に失うものも大きいものです。

 

イノベーション・オブ・ライフ」という本があります。「イノベーションのジレンマ」で

有名なハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセンさんの著書です

。私が次世代リーダー候補の育成をお手伝いするときには課題図書として提示しています。

この中の「序章」を読んで欲しいからです。

 

(引用です)

 

わたしはどうすれば次のことが確実にできるだろう?

 

・どうすれば幸せで成功するキャリアを歩めるだろう?

・どうすれば伴侶や家族、親族、親しい友人たちとの関係を、

 ゆるぎない幸せのよりどこにできるだろう?

・どうすれば誠実な人生を送り、罪人にならずにいられるだろう?

 

自分の30代から40代を振り返ると全くダメでした。その際に多くの先輩、上司たちから

「仕事をする前にやることがあるだろう?」とのメッセージをもらっていました。しかし、

“そうですが・・”と言い訳をして自分の働き方を正当化していたと思います。その結果は

先人たちの予言通り「×」でした。

 

しかし、その後やり直しをする機会に恵まれたことはとてもありがたいと思っています。

当時の私の働き方を知る人からは、今でも“働き過ぎ”ではないかと、よく心配されます。

先日の入院騒ぎの際にも昔の友人たちから“働き過ぎ”ではないか、とメールをいただきましたが

、違います。あれは“まるごとバナナ”と“カルビ弁当”です。(笑)

 

アウトプットの質と量は過去よりも上がっていると思いますが、投入時間は圧倒的に

少なくなっています。

 

自分の仕事力(処理能力)を高めて時間を有効に使う。それこそ自分の「働き方改革」です。

 

仕事漬け人生の人へ

 

「仕事をする前にやることがあるだろう?人生の生産性を高めましょう。」

 

おまけー1:近くの某君に「仕事をする前にやることがあるだろう?」と聞いたところ、

「朝飯ですか。ちゃんと食ってきましたが。」。

 

この人は別の意味で心配ありません。

 

おまけー2:6月27日にパスの株主総会があり、開示していたとおり代表取締役CEOを退きました

。その後(ベタですが)六本木の老舗のアカスリ店に出かけました。

 

かつて夜に行ったときに「背中に彫り物」がある専門職の方に大量遭遇し、その後行くのを

避けていました。まあ、昼間なら大丈夫だろうと思って行ったら大間違い。

この方々は夜勤ですから、昼間に多いのは当たり前でした・・・

 

 

おまけー3:山城経営研究所主催の「柴田励司の講演:社長の覚悟~真に人を生かし強い組織を

つくるために~」(2017 年 7 月 24 日(月)15:00~17:00 椿山荘東京 11F マーガレット)に

20名の方をご招待します。

 

7月3日まで申し込みを受け付け、定員が一杯になった場合は抽選とし、結果をお知らせします。

ご希望の方は以下までメールでお申込みください。

 

お申込み先:花輪朱美 hanawa@kae-yamashiro.co.jp

 

氏名・会社名・お役職・メールアドレスを明記の上お申し込みください。