柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.686 内部通報制度を整備する前にやること

伊調馨選手周辺”へのパワハラ問題。いつもそうですが、この手のことは実態が

明らかになる前に過剰報道されがちです。その結果、事態が複雑化し、被害者が

増えます。明らかに報道被害です。数か月前の貴ノ岩関への暴行事件もそうでした。

引退を表明された小室哲哉さんの件もそう。問題の本質はどこへやら、

ワイドショーを中心に騒ぎ立てるだけ騒ぎ立てる風潮があります。森友問題もそう。

まともな感覚を持っている人たちのマスメディア離れが加速すると思います。

 

件の伊調選手周辺のパワハラ問題。これも突然の「告発」から始まりました。

ちなみに「内部告発」と「内部通報」は違います。「告発」は行政・司法機関,

消費者団体,マスコミなどの外部に対して情報を提供すること。明らかに対象相手に

対してダメージを与えることが意図されています。これに対して、会社の中で

よくあるのは「内部通報」。こちらは法令違反、規則違反、パワハラ、セクハラなど

不正行為や疑問などを組織内部の窓口に対して、匿名または実名で相談・通報

することで、事態の改善が意図されているものです。

 

ところが、内部通報であっても相手にダメージを与えることを意図して悪用され

ることがあります。困ったものです。

 

そもそも気に入らないとか、注意されたことに腹を立ててとかで、特定の人物を

陥れるための手段として使われることがあります。私が知る限りでも、通報された

が故にいろいろ調べられ、最終的に「問題なし」となったのですが、嫌気がさして

退職したり、噂が蔓延して居づらくなり退職に追い込まれたり、心を病んでしまった

ケースがあります。みなさんの周囲でも結構あるのではないでしょうか。

 

制度として確立してしまうと、ひとたび通報があると、それが適切な通報であろうと

なかろうと、それなりのアクションを講ずることになります。それが当事者周辺を

疲弊させます。2016年に消費者庁消費者制度課から、いわゆる「内部通報ガイド

ライン」が公表されて以降、おかしなことになってきていると感じています。

 

社内での不正行為の完全撲滅は難しいと思います。これは人間集団であるが故の

つきものだと思います。それを発見した人が安心して話せる人が周囲にいないために、

匿名などで通報せざるを得ないという状況。こっちの問題の方が本丸だと思います。

ここをなんとかするための努力をせずに内部通報の制度だけを整備しているから、

おかしなことになっているのです。

 

お互いに助け合う、信頼し合う組織風土を醸成する。これは当然に目指すべき姿です。

ただし、これは大変です。それこそいろいろな人がいますので。

戦略的に取り組むべきは課長などの組織の最小単位の管理職のピープルマネジメント力

の充実だと思います。チームとしての成果を問う以前に、リーダーがメンバー

一人ひとりと信頼関係を築くことを問うべきだと思います。

 

この信頼関係づくりにはリーダーの人間力が問われます。ただし、管理職になって

いきなり、人間力を発揮せよ、と言っても無理があります。適性もあると思います。

人の面倒を見ることが苦手な人にはむきません。

 

管理職に昇進させるときに、仕事ができること(成果をあげていること)や

個としての優秀さを問うだけではなく、メンバーとの関係性を構築できる「人間性」を

重視した方がいいと思います。それこを、入社したときから「チームのために汗を

流すことが好きかどうか、やりたいか」を問い、その気がある人を対象に時間をかけて

ピープルマネジメントのケーススタディに取り組んでもらうのです。

その後、他の要件の充足度合いを見て昇進させる、という流れが良いと思います。

 

じゃあ、そのケーススタディってどうしたらいいの?となると思います。

そこで現在2つほど準備しています。

 

 

一つは「あれ?もしかして、ブラック上司?」というタイトルの本を出します。

現在、最終原稿をチェックしていますので、もう少しで発売されます。

これは良かれと思っていろいろやっているが周囲からはブラック上司だと思われてしまう

行動例をたくさん紹介してみました。もう一つは難しいチーム運営をしているケースを

短編ドラマ化したものをつくっています。現在2話できました。

こちらはもう少しエピソードを増やしてから公開したいと思っています。

 

なんでも人間関係で解決しようとするのは間違いだと思いますが、

人間関係づくりは物事の基本ですよね。

 

 

おまけー1:誕生日にたくさんの方々からメッセージやプレゼント、お花をいただきました。

ありがとうございます。いくつになっても嬉しいものですね。

 

 

おまけー2:花粉症がひどい某外国人から、“レイジはどうやって克服しているのか?”

と聞かれ、“気合だ。大事な仕事の前には鼻水が止まる。そのイメージトレーニングだ。

考えるな。感じろ”とブルースリー的に話したとところ、えらく尊敬されました。(マズイ)

 

 

おまけー3:ある方に刺激を受けて、やれるだけやってみよーと楽しそうな仕事を

片っ端から受けだしたら、年内の日程がほとんで売れてしまいました。(チーン)

 

 

 

 

Vol.685 日本の人事制度はなし崩し的に崩壊する(後編)

(中編のおさらいです)

 

副業解禁により、会社と社員の関係がいよいよ変わります。

従来の人事制度はなし崩し的に崩壊します。(中略)今後の人事制度のフレーム(枠組み)

ですが、私はこのようにその概要を想像(創造)します。(以下抜粋です)

 

・全社員が(正社員、契約、業務委託、パート関係なく)どの専門性を本籍とするかを決めます

・この専門性をJob familyといいます)

・それぞれのJob familyの中で、現在の力量を毎年ランキングします

・ランキングは実績に基づき、それぞれのJob familyの“親方”のような人たちが決めます

・ランキングにより報酬が決まります

・評価制度はありません(ランキングがすべてです)

・原則として全員有期雇用です(1年から5年)

・タスク管理、コスト管理、ピープルマネジメント等はJob familyが「マネジメント」

 の人が担います

・秘書業務、庶務総務業務は「サポート」の人が担います

・個々のスキルや専門性を高めるためのナレッジシェア、トレーニングプログラム

 が用意されています

・チーム力を高めるためのイベント、プログラムが定期的に行われています

 

(ここから後編です)

 

現在の仕組みとの大きな違いは各人が「プロとしての実力を毎年問われる」ことです。

厳しいようですが、報酬をもらう以上、プロとして働くのは当たり前です。そこには

年齢や経験は関係ありません。ちなみに、日本の人口動態からも「定年制」は見直した方が

いいと思っています。貢献できる専門性がある限り、年齢が高くても活躍の場があって

然るべきだと思います。

 

この制度の下では育児、介護、子供の受験、勉強などなど個人的な事情で時間的な制約が

生じても問題ありません。自ら承知の上でその期間ランキングを落とせばいいのです。

一定期間低位であっても、時間的な制約がなくなったときに、本人の実力が確かであれば、

元のランキングに戻れます。

 

それぞれのJob familyの“親方”たちは自分のJob familyに籍を置く人たちの専門性の

維持向上が使命です。それだけではありません。familyである以上、仲間の結束、

相互支援、相互育成に責任を持ちます。それこそ、上記のような個人的な事情を抱える

メンバーの相談に乗ります。

 

この“親方”ですが、Job familyの中の互選で決めます。専門性の高さよりも、

それぞれの専門性を解する人格者が選ばれるでしょう。親方の任期は最長6年です。

 

経営陣は「マネジメント」familyの中から輩出します。「マネジメント」の親方たちが

社長やCEOではありません。他のfamilyの親方と同じく次世代リーダーの発掘、

育成が仕事です。

 

このような仕組みが導入されたときに留意すべきは「会社全体の和」の形成と「

ロイヤリティ」の醸成です。

個の専門性をいくら高めたところで、この全体感がありませんと全体としての力が

発揮されません。関係者間で利害相反するような案件への取り組みができません。

 

「全体の和」「ロイヤリティ」。これらは社長や部門長というマネジメント職が

いくら力んだとしても、全員がお互いを大切に思うような意識が底辺にありませんと

結実しません。このための働きかけ、環境整備は必須です。これを意識したオフィス、

社員食堂、はたまた社員イベントの企画。こうした目に見えないものへの投資を

おろそかにしてはいけません。

 

90年代後半から日本に紹介されたアメリカ型のマネジメントは「見えないもの」

への投資を極小化し、短期的な目に見えやすい結果を追求するものでした。

アメリカ企業を知るものからすると、本家本元よりも曲解されて導入された嫌いが

あります。結果として、会社組織を氷山に例えるならば、氷山の海中部分がやせ細り、

その存在を維持するのもやっという状態になりました。これは間違いだったと思います。

 

日本の人事制度はなし崩し的に崩壊する。3回にわたってお届けしました。

本稿がみなさまの次の制度設計の参考となれば幸いです。

 

 

おまけー1:とある地方の駅前の居酒屋。夜8時。店の前の看板に「焼き魚定食」

「お刺身定食」とあり、ガラガラを扉を開けたところ、お客はゼロ。ん、店変えようか

と思った時に店員が泣きそうな顔をして登場。仕方ないので着席。メニューを見ると

定食メニューがありません。

 

“あの、外に出てた焼き魚定食を・・・”

“あ、あれランチだけ”

“え、でも看板が”

“あー、しまい忘れだー(と泣きそうな顔)(この顔、”手“かも。)

 

おまけー2:海苔とシラスのサラダとほっけ、ごはんとみそ汁を注文。

しばらくして、生ビールが。

 

“あれ、ビール頼んでないけど・・”

“あー、癖で出しちゃった(と泣きそうな顔)(確信した。この顔、”手“だ)

 

 

おまけー3:明日で56歳になります。まだまだや。

 

 

 

 

Vol.684 日本の人事制度はなし崩し的に崩壊する(中編)

(前編のおさらい)

 

「例外」が例外でなくなる、ということはよくあります。・・・気づいてみたら

例外の方が普通になってきたというのがそれです。この状態にあるのが「人事制度」

だと思います。

 

・・・大企業で採用されている人事制度が人の成長や会社を成長させることを目的とした

人事制度ではありません。事業戦略は反映されていません。・・・

“人事制度が邪魔をしている”という声をよく聞きます。

 

副業解禁は劇薬です。「資格制度」を崩壊させると思います。社内での昇格や昇進は

“どうでもいいこと”になっていきます。しかし、この動きは止められないと思います・・・

 

(ここから中編です)

 

副業解禁により、会社と社員の関係がいよいよ変わります。“雇ってやる”ではなく、

“働いていただく”になります。社内での経験を積み重ねた後にポストに就くという

運用では真に実力のある人が辞めます。その役割を担うに最適な人がポストに就くことに

なるでしょう。

 

「部長」というポジション。かつては部の中で年次が古く、経験を積んだ人がその役割は

担っているのが普通でした。10年くらい前からこれは崩れています。最近、大企業で

幹部クラスを外部から採用し始めています。某企業で先端技術系の業務の部長という

名刺を現役の大学生が持っていました。現時点では極めて「例外」ですが、そのうち、

これが「例外」ではなくなるでしょう。

 

私自身、同時に複数の会社・団体で複数の役割を担っていますが、正業・副業という

感覚がありません。強いて言うなら全部「正業」です。

副業解禁で活躍するような人は同じ感覚だと思います。

 

そういう時代になったときの人事制度のフレーム(枠組み)ですが、

私はこのようにその概要を想像(創造)しています。

 

・全社員(正社員、契約、業務委託、パート関係なく)が、本籍たる専門性をもっている

・この専門性は「営業・マーケティング」「製造」「研究開発」「マネジメント」「サポート」等の

 大くくりです(ちなみに、この専門性グループのことをJob familyといいます)

・それぞれのJob familyの中で、現在の力量を毎年ランキングします(テニスのランキング

 みたいなものです)このランキングに基づき、「基本報酬」と「時給」が決まります

・基本報酬はJob familyごとに相場を意識して決めます

・ランキングは実績に基づき、それぞれのJob familyの“親方”たちが決めます

・Job family間の受け入れ、社外からの採用等もJob familyごとの“親方”たちが決めます

・評価制度はありません(ランキングがすべてです)

・原則として全員有期雇用です(1年から5年)

NDAを締結した上で“副業”はもちろんOKです

・タスク管理、コスト管理、契約管理、ピープルマネジメントはJob familyが「マネジメント」の

 人が担います

・秘書業務、庶務総務業務は「サポート」の人が担います

・個々のスキルや専門性を高めるためのナレッジシェア、トレーニングプログラムが用意されています

・チーム力を高めるためのイベント、プログラムが定期的に行われています

・新卒一括採用はやっていません。ただし、インターンを多く受け入れています

・法定外の福利厚生はカフェテリア方式でメニューを選べます

・年金は確定拠出型です

・ボーナスの一部は第二退職金に繰り延べることができる仕組みがあります

 

数年前にとある企業の人事制度の抜本改革でこのJob familyの考え方を導入しました。

まだまだ「例外」でしょうが、今後は時間の問題。それが当たり前になっていくのではないか、

と思っています。

 

企業側がこのように変わると、大学を頂点とする教育制度も変わるはずです。大学が入口管理

(入試優先)から出口管理(認定されないと出れない)に変わると高校以下もかなり変わる

はずです。また、社会人大学生も増えるはずです。

 

 

(後編に続く)

 

 

おまけー1:とある方の還暦祝いのサプライズ企画でちょっとした“フラッシュモブ”をやりました。

プロのミュージカル俳優を含め、忙しい面々がこの企画のための稽古にも参加。前日には

テレビ会議システムを使いながら夜にIndigoblueのオフィスで稽古。すべてはこの方の人徳。

お祝いしたいという気持ちが原動力になります。

 

 

おまけー2:大阪の常宿で「金の斧、銀の斧」を試されました。

 

“柴田さま、前回ご宿泊のときに、こちらの時計をお忘れではないですか?”

超豪華な時計です。(ここでそうです言うたら、その時計は僕のもんや:なぜか関西弁)

 

“・・・違います。”

 

マネジャーと思しき男性が横から、“前回お泊りのお部屋から出てきたのですが・・・、

見覚えありませんか?”

 

(うむむ、あ、そうや、それ、わしんや、と言うたら、その時計は僕のもんや・・)

 

“いや、違います。” 

 

翌日、そのホテルのレストランで会計のときです。 

 

“あの、このペンをお席にお忘れではないですか?”

 

 

 

 

Vol.683 日本の人事制度はなし崩し的に崩壊する(前編)

「当たり前」がそうではなくなってきている。ところがルールや規範が追いつかない。

突き詰めて考えてみると、なんで違反なのかもはや不明。むしろルール違反をした方が

ベター・・・。しかし、ルールは変わらない・・・。そうなるとルール違反者が大半

となり、なし崩し的にルールが改訂されていきます。時代を切り拓くような行動の

多くがルール違反からだったりします。時代の変化とはそういうものだと思います。

 

ルール違反とまではいかなくとも、「例外」が例外でなくなる、ということは

よくあります。ルールよりも実態を優先しようとしたら、例外を認めざるを得ない

わけです。気づいてみたら例外の方が普通になってきたというのがそれです。

この状態にあるのが「人事制度」だと思います。

 

多くの大企業の人事制度はこんな感じです。

 

職能資格制度、または職能資格制度を基盤としつつ管理職層に役割(職務)グレードを

導入。ライン以外の処遇職として専門職制度を設置。役職定年制あり。地域限定社員あり。

 

この制度は以下を前提としています。

 

新卒で入社。同じ時刻に出社して上司の指揮命令下で仕事する。勤続年数に応じて、

早い遅いはあるものの昇格。昇進する。同期のほぼ全員が初級管理職までは昇格する。

“うちの会社”という意識の下、ロイヤリティをもって定年まで勤めあげる。

 

これが機能していたのは事業構造が一定だったからです。当時は「同じ仕組み」を

拡散させ、かつ、そのための生産性を高めていけば業績が向上しました。優秀な人材は

社内ネットワークが広く、社内経験を積んだ人でした。そういう人が高く評価され、

昇格・昇進しました。職能資格制度はそのために最適な制度でした。

 

その後、社内ネットワーク、経験を積んだだけでは成果を上げることが難しくなり、

会社全体の事業も停滞します。膨張する人件費の抑制を目的に導入されたのが

「役割(職務)グレード」です。これにより「正当な理由・合理性」により、

給与を下げる仕組みが導入されました。

 

それまで「生活保障の原則」「労働対価の原則」という考え方で設計されていた

給与制度に「社内公平性(年齢や社歴に関係なく同じ仕事なら同じ給与)」

「外部競争力(他社で同様な仕事をする人と同等な給与)」という考えが導入されました。

これにより、同じような仕事をしている人を外部から採用しやすすること、

または外部から引き抜かれないようにすることが図られました。

現実的には前者のみが適用されたのが実態ですが。

 

しかし、これは人の成長や会社を成長させることを目的とした人事制度ではありません。

どちらかというと管理目的です。事業戦略は反映されていません。このため、

事業の現場で奮闘する人たちに人事制度やその運用元の人事部に対する不満が常にある

というのが現実です。“人事制度が邪魔をしている”という声をよく聞きます。

 

副業解禁は劇薬です。「資格制度」を崩壊させると思います。副業解禁でより

スポットライトが当たるのは「優秀な人」です。社内外で「力量」で評価されることが

当たり前になってくると、本人にとって社内の資格(位置づけ)の意味が薄れます。

社内での昇格や昇進は“どうでもいいこと”になっていきます。

しかし、この動きは止められないと思います。私も副業解禁には賛成です。

 

(来週に続く)

 

 

おまけー1:満員電車の中のことです。「あ、僕インフルなんで。」

その瞬間、その若者の周辺が空きました。(お、これ使える)と思ってもやらない方がいいです。

次の駅でその若者は降ろされてました。

 

おまけー2:呼び出したタクシーが通知よりも15分遅れてきました。

 

“すみません、すみません。ナビが道間違えまして” 見るとナビが破損しています

。助手席には破損した欠片が・・。“何度も間違えるので指導しました。”

運転手さんの手袋にも破損した欠片が・・・(このタクシーに乗って大丈夫か)

 

おまけー3:「会長って何するんですか?」よく聞かれます。この哲学的な問いの答えですが、

「(会社の発展のために)好き勝手する」が最も合っているかもしれません。

 

 

 

Vol.682  なんでもトップのせい、ではない

”トップが、トップが、“と、なんでもかんでもトップのリーダーシップのせいにする

コンサルタントや大学の先生がいますが、トップをやってきたものの目線として、

わかってないなぁと思います。

 

何をすべきか、どう振る舞うべきか。考えていないトップはいません。トップともなれば、

常にこれらのことを気にかけています。そのレベルの問題はあるかもしれません。

しかし、ひとたびトップという役割についたなら、相応に考えているのがふつうです。

 

トップは社内外からいろいろと言われるものです。何か問題が発生した場合にはすぐに

批判されます。これは仕方ありません。そういう役回りですから。しかし、改革を

支援するという専門家から「トップが、トップが」という主張をされると白けます。

そういうことではないのです。そんなに単純なことではないのです。

 

全社的な問題で何かを変えることにしたとします。この場合、トップの後押しなしに

全社的な課題に取り組むのは確かに難しいです。トップ以外の誰かが強くドライブ

しようとしても、トップがそのテーマについて沈黙を保っていると、多くの社員たちが

トップの顔色を気にするからです。それはどんな会社でも同じです。

 

ただし、トップがその件について「やるべし」と公けに発言したのなら、あとは

トップのリーダーシップの問題というよりも、組織一人ひとりの問題ではないか、と

思うのです。こういう話をしましたら、あるコンサル(ちなみに英国人)から、

“日本の会社員はどう動いたらいいのかわからないのだろう。”と言われました。

そうかもしれません。が、それをトップのリーダーシップによって解決すべし、

というのはいかがなものか、思うのです。(もっと言うなら、そういう社員ばっかりの

組織もどうかと思うのです。)この問題は、現場の最小単位、多くの場合チームや

課ですね、そのリーダーのリーダーシップが問われていると思うのです。

 

大きな組織になりますと、自分の出番をつくるために画策したり、意図的に動かない

輩がでます。また、トップを言い訳にして政治的に動く“茶坊主”も出ます。

これらもトップとしてみると、気持ちいいものではありません。

 

業績・成果を上げながら、こうした複雑な組織問題をどう改善するか、

それがトップの悩みです。ちなみに、ここで言うトップとは社長やCEOという、

まさにトップから事業部門や機能部門のトップも含みます。

 

この一番の処方箋は自分の周囲を「一枚岩」にすること。これだと思います。

政治的な意図を持っている人も含めて「一枚岩」を目指すのです。さらに、そこに

参加した人たちにもその人たちの周囲を「一枚岩」にしてもらうのです。そのためには

周囲の人たちと、一緒に何かをすること、一緒に笑うこと、一緒に感動すること、

そして徹底的に議論すること。こうした場の企画運営が得意な人はどんどんやりましょう。

 

そうでない人は、このためのノウハウと経験値がある専門家(IndigoblueにはEmotional

 Integration というチームがあります)に支援を依頼しましょう。

 

組織課題は複雑です。トップ一人が力んだところでどうにもなりません。

トップだけの問題ではありません。チームで対応する。急がば回れ、です。

 

 

おまけー1:2月9日に大阪YMCAで講演しました。宿泊したホテルから歩いていくことに

したのですが、電話しながら歩いていたら、生来の方向音痴も災いして、気づいたら

まったく違う場所へ。過去の学習から徒歩10分です、という距離を30分前に出たので

なんとか定刻前に着きましたが。

 

おまけー2:新幹線の中で席から頭一つ出ている人がいました。えらく座高が高いなあ、

と思って、トイレに行くふりをして見に行きましたら、70代とおぼしき爺様が座席の上に

立ってました。なにしてんだろう。

 

おまけー3:先日、雅叙園東京で講演しました。改めて思いましたけど、

ここの施設はすごい。一見の価値あり。

 

http://www.hotelgajoen-tokyo.com/

 

 

Vol.681 ヒトとヒトをつなぐ

ヒトとヒトをつなぐのが好きです。

 

知り合いのAさんとBさん。お互いにお互いのことを知りませんが、引き合わせたら

面白い展開が期待できそう、と思ったら、会食みたいな場を仕込む。こんなことを

繰り返しやっていたら、面白い知り合いがたくさん増えました。この引き合わせ、

自分よりも世代の上の方の組み合わせでセットすることが多かったです。

 

やはり、先輩方はいろいろな経験をしています。その経験値が融合する瞬間に

同席できるのは幸せなことです。

 

こういう付き合いを進める上で大事なことは、そこで“営業しない”

“営業されない”だと思います。一緒の時間を過ごす以上の目論見がある会は

変な緊張感があって楽しくありません。食事という漢字は「人に良い事」と書きます。

まさにそれだけが目的の会です。

 

場の設定は重要です。基本的には個室です。食事も美味しくなければダメ。

サービス側のホスピタリティも極めて重要。これらの条件を満たせるレストランは

そんなにないので、いきおい決まったお店になります。決まったお店になりますと、

サービススタッフも私の期待値を知ってくれますので、設営面で安心できます。

ちなみに私がこういう場で利用させていただいているのは、「神田聖橋亭」

「Hilltop Casita」「アークヒルズクラブ」「槐樹(八芳園)」です。

 

この3年ほど、諸般の事情により(この言い回し鉄板ですね)この“つなぎ”を

やってこれませんでしたが、最近また始めつつあります。今後は同世代、

下の世代もありで行こうと思っています。

 

手始めに大学のクラス同窓会を企画しました。1985年3月に卒業以来、実に33年ぶり。

Facebookでつながっていた同窓の仲間数名と相談して先日開催しました。

連絡をとるのも一苦労。ソフィア会(上智大学のOB会)を通じて、連絡先を入手。

しかし、結構な数が「不明」。そこで、SNS検索エンジンなどを駆使したり、

“もしかして**さんのこと知りません?”的なアプローチを行い、

39名中36名まで連絡先を確認。結果として18名が参加。33年ぶりなので、

見た目はかなり変貌している人もいましたが、話し始めると昔のまま。

 

この感じはいいですね。

 

その後、京王プラザホテル時代の組合の同窓会に参加。この組合活動があったから、

今の私があるようなものです。人事諸制度なるものに正面から向き合った最初が

これでした。また、組合有志による年齢、部署関係ない勉強会も非常に楽しく、

これが私がリードする多くのセッションの原体験になっています。

 

当時の委員長のIさんは私が目標とする「自由人」。ああいう60代を迎えたいなあと思います。

 

やはり、ヒトとヒトとの接点がいろいろな事につながっていきます。最近、エンタメを

志向する若者の話を聞く機会が増えているのですが、彼ら彼女らにとってのエンター

テイメントは何か、と聞きますと、“バーチャルアイドル”という答えが多く、

衝撃を受けました。しかも、なぜ、”バーチャル“がいいのか、と聞きましたら、

「生の人は言うことを聞いてくれないから。これはがびーんです。

 

生身のヒトとヒトのつながりからいろいろなことが生まれます。創発されます。

しかし、そういう機会がないのでしょう。むしろ可哀そうなことです。“大人”として、

そういう若者に“ヒトとヒト”との会合の場を体験してもらおうと思っています。

 

それにしても本当に感謝。今の自分があるのはそうしたふれあいをつくっていただいた

皆様のおかげです。

 

 

おまけー1:インフルで倒れて以来、朝のジョギングをお休みしていたのですが、

本日復活。たちまちに右膝を痛めました・・・ 無理はいかん。

 

おまけー2:記憶力に自信がありません。言ったのに!系の注意をよく受けます。

ごめんなさい、みなさま・・・(これって認知症の始まりか・・? (+o+))

 

おまけー3:こういうのを見つけました。行きたい。

https://www.ktv.jp/btf/index.html

 

 

 

 

 

Vol.678 パロマの大変貌に感動

聞いてください。

 

猛烈に感動しました。パロマという会社に、です。

パロマは日本を代表するガス機器製造販売会社です。

 

2006年7月14日、奈落の底に落とされます。過去に製造した瞬間ガス湯沸かし器による

死傷事故問題が勃発したのです。同様の事故に関して過去に勝訴していたこともあり、

当初「自社製品の問題ではなく、不正改造が原因」と対応したところ大炎上。

社会問題化しました。

 

私はこの問題の第三者委員会の副委員長でした。

 

当時のパロマは極めて閉じた会社で、かつオーナー絶対主義の会社でした。工場は汚く、

暗く、床には得たいの知れない液体がこぼれたまま。営業所も狭苦しいところでした。

そこに、この死傷事故問題が勃発。連日のようにマスコミでパロマ叩きが行われていました。

機器の回収・点検、クレーム対応。それこそ営業どころではない状態になりました。

会社の雰囲気はさらに重苦しく、社員もみな下を向いていました。

 

そんな中、“このままでは会社が本当にもたない”という切迫感から、次世代を担う

であろう若い社員たちと社長と未来のための合宿を行いました。会社を本当に変えよう。

変えないと明日がない。そのとき「パロマ課題構造“曼荼羅図”」というものを作成しました。

 

“ここにすべての問題が凝縮している。負のサイクルが発生し、このままでは会社の根幹

である「人」が潰れてしまう。この“曼荼羅構造”を変えよう!“ 

 

それがそのときの参加者全員の合意事項でした。

 

そして事故から11年半が経過。当時、私のサポートをしてくれていた人が取締役に昇任しており、

その方のお招きで久しぶりにパロマ本社(名古屋市瑞穂区)を訪れました。

 

全部変わっていました。会社に到着して、しばらく呆然としました。

 

本当に全部です。明るく開かれた会社になっていました。すれ違う社員たちの表情も明るく、

社内もピカピカに清掃されています。社内を流れる空気が違っていました。

 

最初にやったことは工場のトイレの改修だったそうです。そして、食堂。温かい食事が

とれる施設ができました。コールセンターは社長室の隣。全員社員です。コールセンターに

寄せられるすべての声に誠実に対応し、本当に商品開発、改善に役立てています。

 

本社内に「失敗からの学び」と題した、社員向けの展示があります。特別に見せてもらいました。

2006年の問題を含め、それ以外のリコールなど、設計上・生産上の失敗に始まり、労災、

営業車での事故など会社や社員が関わる失敗事例を展示しています。

 

ここにいくつか小林社長による宣言が書かれているのですが、その姿勢に猛烈に感動しました。

経年劣化、使用者の誤使用、施工の不具合、これらをすべてメーカーの責任と捉え、

問題が起きないように努力する。素晴らしいです。製造業の多くがアセンブリメーカーに

なりつつある現在、パロマでは全部品を自前で作っています。

コストを考えていたらできることではありません。

 

“この10年の歩みと再建の様子を世の中に訴求しないのか?”と聞きましたところ、

“会社の姿勢について、自分たちから声高に言うものではないと考えています。

それはお客様や世の中が決めるものです。”というお返事。

 

これにも痺れました。言うのではなく、態度で示す。素晴らしい。

 

合宿参加メンバーの一人が常務に昇進していました。

 

“この柴田さんがまとめてくれた曼荼羅図、先週の経営会議でも再度確認したんですよ。

気を抜くと昔に戻ってしまいますからね。”

 

涙が出そうになりました。

 

 

おまけ:2月8日(木)に「論理的思考力」「対人感受性」「折衝力」「提案力」

「総合的な営業力」と「文章表現力」を 実践するリアルタイム・シミュレーション

「B6G(Business 6 gates)のトライアルを開催します。

 

インターン・新卒の評定、内定者の実力診断、新人教育のために開発しました。

この機会にぜひ、お試しください。

 

詳細、お申込みはこちらから。

 

https://indigoblue.co.jp/b6g_trial/