柴田励司の人事の目

Indigo Blue メールマガジン

Vol.690 上になったら”上”の仕事をする

「上」になればなるほど仕事をしなくなるのが日本企業。その真逆が外資系企業の本社。

15年ほど前はそうでした。最近は変わってきましたね。日本の会社も「上」が目一杯

働くようになりました。

 

「上」になればなるほど、求められる仕事の質が上がり、対応しないといけない量も増える。

だから報酬が高いわけです。ところが、昔の大企業や官公庁では、おおむね課長時代が

ピークでその後は自分で“動くこと”“手を動かすこと”が、ぐーんと減るのが一般的でした。

下がお膳立てした内容にそって動くのが上の仕事になります。“あれはどうなってる?”、

“この担当は誰だ?”あれを持ってきて”等々。

 

判断業務という名の下に“口で仕事をする”ようになるわけです。

 

これが結構様変わりしてきました。今では、多くの企業で「上」であっても、自分で動き、

自分で資料を作成し、自ら話す、ということを当たり前のようにやっています。新興企業は

みんなそうです。ただし、勘違いしてはいけません。そこでやっているのは

「上になる前の仕事」ではありません。「上」の仕事です。

 

ここを理解しないで「今までと同じ仕事」をガンガンやるのはダメです。部下の領域を

侵食しています。それをしてしまいますと「下」が育ちません。更には組織としての

成長も見込めません。ガンガンやるべきは「上」ならではの仕事です。

 

「上」ならではの仕事とは。

 

‐自分がやっていた範囲の仕事をやる人間の成長を支援すること

(そのための機会を創出し、動機付けする)

‐組織全体の感情を高揚させることを企画し、実行する

‐自分たちがやっている仕事の生産性を劇的に高めるために何ができるか考え、動く

‐自分たちが創出している顧客価値を劇的に高めるために何ができるかを考え、動く

‐「上」としての仕事をするために人的ネットワークを拡大させる

‐「上」としての仕事をするために、自分へのインプットをする(新技術や業界動向の勉強など)

 

「今やっていること」の維持拡大ではなく、「今やっていること」そのものを俯瞰して、

「今」の次元を上げる。それが「上」の仕事です。“あいつはまだまだだ”とばかりに

、自分の後任者の仕事ぶりに口出しをしたり、頭ごなしにマネジメントしてしまうのは

「上」としての責務放棄です。

 

技術動向、働く人の意識、消費者の目など、事業を取り巻く環境は刻々と変化しています。

常にそう言われていますが、間違いなくこの変化が顕在化していると思います。

ぼやぼやしていると本当に置いていかれます。「上」が新しいことへのアンテナを

3本以上立てて動いている姿に「下」は刺激を受けます。置いてけぼりにならないように

闇練をする人たちが出てくるはずです。

 

ただし、「上」だけが新しいことを吸収し、その果実を「下」に分けないでいると、

「上」と「下」の距離がどんどん広がってしまいます。

 

事業が好調なオーナー企業でよくあることです。オーナー社長はいろいろなところに

出かけ、人に会い、見識・見分を深めます。「下」は目先の仕事で手一杯です。

そうなると、「上」の言葉が通じなくなります。「下」に世の中に触れるチャンスを与えずに、

「世の中はこうだ。お前たちの意識は低い!」などと「上」がやった日には最悪です。

「上」に対する意識はとげとげしいものになります。何をしてもうまくいかなくなります。

悪循環です。

 

びっくりするのですが、「上」が“口だけで仕事をする”やり方をいまだに踏襲している

のではないか、という大企業も残っています。はっきりしているのは、その「上」の

仕事のやり方を変えない限り、優秀な若者は定着しません。優秀でかつ健全な野心がある

若者にしてみると、そういう「上」の存在は“うざい”のです。

 

 

おまけー1:いよいよ「もしかして、ブラック上司?」発売です。11日ころには書店にも

並ぶだろうと聞いています。ぜひ、手にとってみてください。

 

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%82%E3%81%97%E3%81%8B%E3%81%97%E3%81%A6%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E4%B8%8A%E5%8F%B8-%E6%9F%B4%E7%94%B0-%E5%8A%B1%E5%8F%B8/dp/4827211140/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1523007640&sr=8-1&keywords=%E3%82%82%E3%81%97%E3%81%8B%E3%81%97%E3%81%A6%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E4%B8%8A%E5%8F%B8

 

おまけー2:新幹線。名古屋から隣の席にどかっと座ってきた大柄な若者あり。

いかにもスポーツ選手。ちらりと見たその顔はプロゴルファーのIRくん。

「ほう。思ったより大柄だな」と思っていたところ、

IRくんは千葉県の方で首位キープとのネットニュース。「ん?じゃ、この人誰だ?」

 

(IRに似ているプロスポーツ選手)とコソコソ検索したら、あ!この人だ!

 

おまけー3:大阪の某駅。同じ時刻に特急を走らすの止めてほしい。プレミアムカーに乗車。

安心してパン食べてたら、アテンダントの女性が

“あのあの、お客様は反対方面の予約をしていますが・・・”(しかも、特急だよ。)

 

 

 

Vol.689 屈折心がもたらすこと

上司の悪口。中間管理職にとっての格好の肴です。笑える上司ネタはいいですね。

それが悪口であったとしても底辺に「愛」があります。そうでない“ただの悪口”は

いけません。楽しくありません。周囲に悪い気をもたらします。

 

中には自分以外のすべての人について、ネガティブ発言をする人がいます。

これは聞いている方も辛い。本人は批評をしているつもりなのでしょうが、

実のところは批判ばかり。いかにその人がダメであるか、こればかりです。

聞かされている方は辟易とします。ただ、下手な反応をすると自分もどこかでその人の

ネタになってしまうかもしれないので、適当に合わせます。そうなると、喋っている

本人はますます得意気になって言わなくてもいい事まで言ってしまう。

どの組織にもこういう人がいます。特に中間管理職の男性に多いですね。

 

この“悪口”、本人には絶対言いません。むしろ、本人には極めて好意的に接しています

。その人のことが嫌いなのではありません。評価されたいと思っています。

ある意味で認めている人です。しかし、陰では悪口を言ってしまうという屈折した心理です。

 

気づかれていないと思っていますが、多くの場合、本人に伝わっています。

“あなたの悪口を言っている人”を伝えるのは戦国時代より忠誠心の証です。

ここぞとばかりに伝えようする輩はいつの時代にもいます。

 

それを聞いて、態度を変える人はまだいいです。その上の人の度量が大きければ

大きいほど、表面的な態度は何も変えません。ただし、その人に大事な仕事を

任せることはしなくなります。大事な話もしなくなります。徐々に距離を置き、

絶縁です。そうなると、その組織の中での信頼回復はほぼ不可能になります。

 

上司だけではありません。この人の近くにいるとどこで何を言われるかわからないので、

みなが去っていきます。

 

この屈折心は実に厄介です。自分より劣っていると思っている同期よりも昇進が遅れた。

かつての部下と立場が逆転した。こんなときにこの屈折心が芽生えがちです。

しかし、人間ですから、誰でもこういう感情をもって当然だと思います。

 

この心理の背景にあるのは「自分を認めてもらいたい」という欲求だと思います。

組織の中の自分の立ち位置や評価に満足しておらず、自分はもっと高い次元の

人間だということをわかってもらいたい。だから、誰もが知っている上司、

特に評判がいい上司の批評(実態は批判)をして、自分はその人よりも優れている、

ということを言いたいのです。

 

優れているかどうかは自分が言うことではなく、周囲が決めることです。

自分は悪くない、周囲の目が間違っている、という意識からいかに早く脱却できるか。

自分のココロと向き合う姿勢が必要ですね。ただし、この屈折心は怖ろしい速さで

増幅してしまいます。誰かが早期に摘み取ってあげた方がいいですね。

屈折心が周囲に対する憎悪になってしまうと、手がつけられません。

 

4月は組織改編、人事異動などが多く行われる月です。そんなとき、この屈折心を

もちがちな人を予見して対話の機会をもつ。自分の周りにそういう人がいないかどうか、

見渡してみてください。屈折心やその発展形としての憎悪。こういう感情を抱く社員が

いない方がいいに決まっていますので。

 

 

おまけー1:4月は「飲み会」の季節です。ちょっと前ですが、NHKおはよう日本」の

おはBizで「飲み会の極意」について解説しました。なかなか面白く編集してくれています。

 

https://www3.nhk.or.jp/news/contents/ohabiz/2018_0320.html

 

おまけー2:花粉症なので朝のランニングを止めています。その代わりに隙間の時間を

見つけて泳ぐようにしています。しかし、平日の昼間のプール利用者の平均年齢は70歳くらい。

泳いだ以上に消耗するのは何かを吸い取られているのかもしれません・・・

 

おまけー3:地下鉄南北線の中で“私ではありません・・・、ちがいます・・・”と

寝言を言うサラリーマンあり。彼が置かれている状況が見えた気がします。

 

 

 

Vol.688 経験しないとわからない

無理を言ってはいけません。誰かに仕事をお願いするときに、その人が体験したことが

ないし、見たことも聞いたこともないことをやれ、と言ってませんかね。

 

そりゃ、無理です。「青沼静馬」を知らないIndigoblueのMTNさんに“青沼静馬の物まね”を

やってくれ、と言うようなものです。

 

部下が期待するようなアウトプットをつくれないと嘆く前に、その部下に自分が望む

アウトプットを見せているか? 更には、そのアウトプットを創る過程を見せているか? 

自分が作業したり、悩んでいる姿を見せているか? これを自分に問いましょう。

 

こうしたことを一切していないのに、期待するアウトプットが出てきていたとしたら、

それは大変ラッキーです。その部下が極めて優秀であるか、あなたの要求水準が低いか。

このどちらかです。しかし、いずれにせよ、その部下が優秀であれば、早晩いなくなるでしょう。

それではその部下にとって学びがありませんので。

 

この3月末に二人の「柴田励司のカバン持ち」出向者が帰任します。いずれも日本を代表する

大企業からの出向者です。帰任にあたり、出向元の2社でそれぞれに出向報告会を

開催してくれました。彼らがこの1年何を学んだか。その総括の場でした。

保護者のような面持ちで参加しましたが、この1年でずいぶん成長したことを実感しました。

 

彼らが従事した実務は大企業ではまず体験できないような修羅場の連続。日常的にも

何でも自分でやらないといけないという環境で、これらの経験がビジネスマンとしての

対応力を大幅にアップさせました。更に、これに加えて毎月一定時間、私のそばで

私の一挙手一投足を見てもらいました。ここが彼らの“気配”を変えました。

 

見てもらったのは、私のいい面も悪い面も全部です。もちろん“楽屋裏”もです。

限られた時間ではありましたが、その時間を通じて、彼らは私が意識して表現している佇まい

、空気のつかみ方、場のつくり方を吸収してくれました。こればかりはなかなか教えられません。

いずれも私が“社長”業を20年以上やって身に着けたことだからです。スキルとは違います。

経験値です。これは自分の目で見て、体感しないと難しいと思います。

彼らはこの点を彼らなりの解釈で吸収してくれました。引受人としては嬉しい限りです。

 

「どんな仕事を誰としたか」これが成長に大いに影響を与えます。4月に優秀な若者が

入ってくるとしたら、改めて留意しましょう、「誰と仕事をさせるか」。このアレンジは超重要です。

 

自助努力でやれることはやりましょう。何といっても「やったことがないことへの

チャレンジ」に尽きます。

 

なんでもそうですが、経験してみないと自分の引き出しが増えません。いろいろなところに

出かけ、いろいろなものを食べ、いろいろな人に会い、いろいろな芸術作品に触れる・・・。

こうしたことの積み重ねです。何よりも大事なのはそうした経験を楽しむこと。

やらなければならないからやっている・・・では、その経験は「引き出し」にはなりません。

自分が楽しめるような事柄でいいのです。やったことがないことを体験する。そこからです。

 

 

 

おまけー1:「青沼静馬」を知らない方へ。“犬神家の一族”(できれは古いやつ)をご覧ください。

 

おまけー2:なんでも経験だ!とレストランで食べたことがないものを選びがちです。

が、その多くが失敗です。それでも懲りずに新しい“変なメニュー”を選んでしまいます

。多くのケースでネーミングにやられています。“ここでしか食べられない、

トマトとチーズのハーモニーお好み焼き”とかあるとまず頼んでしまいます。(失敗でした)

 

 

おまけー3:「もしかしてブラック上司?」出版記念トークを4月9日の夜、アカデミーヒルズ

六本木ヒルズ森タワー49階)でやります。なんと、書店に並ぶ前のトークです!

 

アカデミーヒルズさんのご好意により、「人事の目」読者に30席ご招待いただけることになりました。

ご希望の方は以下のURLからお申込みください。締め切りは3月31日。

応募者多数の場合には抽選とさせてください。よろしくお願いします。

 

http://indigoblue.co.jp/book_launch/

 

 

 

 

Vol.687 働き方改革はどうなった?

いい加減にしてほしい。そう思いませんか。国会審議のことです。

 

森友問題、財務省改ざん問題が看過できないのはわかります。しかしですよ、

働き方改革」はどうなったのでしょうか?厚生労働省のバックデータがいい加減で

あったという辺りから雲行きが怪しくなり、今や風前の灯火です。

 

新しいことをやろうとしたら心配事が出てくるのは当然です。

しかし、心配事が完全撤廃されないと新しいことを認めないという姿勢はいけません。

それだと何も変わりません。挑戦しようとしていることの目的とその目的達成のための

課題を同じ次元で議論すべきではありません。まずは目的そのものについての議論をする。

それに合意したなら、次に心配事を課題として捉え、どうすればクリアできるかを考える。

これが建設的な議論だと思うのです。どうしてそういう議論ができないのか。

残念でなりません。

 

そもそも「働き方改革」の目的は“日本という国を元気にするため”のものだと私は

思っています。日本の人口動態、AIの進展により、何もしないでいると“カネのない

高齢者”が社会に溢れます。定職につけない若者も増えます。人は、仕事や家事を通じて

、“誰かに(何かに)貢献したり、何らかの学びを通じて成長している実感があってこそ、

元気になり、生きがいを得るものだと思います。これらを失った人たちが増えると

間違いなく社会は停滞し、世の中のムードも暗くなります。日本をそうしてはいけない。

そうしないための「働き方改革」だと思うのです。

 

だから「一億総活躍社会」というようなフレーズが出てきているのだと思います。

ただ、そのための「枠組み」がないと、このフレーズもスローガンに終わります。

「枠組み」とは新しい事業のプラットフォームや業態のことです。例えば「Youtube」。

この「枠組み」により、多くの新しい雇用や消費が生まれました。

こういう「枠組み」を創出する人材が輩出される社会であってほしいわけです。

 

しかしながら、現在の労働法制下では「創造人材」が活躍しにくいです。働いた時間で

評価する人工(にんく)の発想がベースにあるからです。標準的な作業時間・作業量を

基準に考え、報酬を決める仕組みでは、創造活動を評価しにくいです。更には生産性が

高く、短い時間で仕事を完了できる人が報われません。むしろ、時間をかけた人の方が

評価されるというおかしなことになっています。これが過剰労働を生む温床にもなります。

 

もちろん、この人工発想があてはまる仕事もあります。それはそのままでよいのです。

しかし、創造的な仕事をする人には違うルールを適用すべきなのです。

 

また、育児や介護、遠距離結婚(職場から離れた場所に嫁ぐこと)などの個人的な

事情抱える人にしてみると、時間や場所の制約を受けない働き方を許容してもらえないと

どうにもなりません。

 

これらを解決するための新しいルールをつくろうという動きが「働き方改革」だと思うのです。

 

残業代ゼロで無制限に働かせるようなブラック企業が出てくるからダメという論調があります。

 

実際にはブラック企業よりもブラック上司問題だと思います。しかし、そのブラック上司も

やりたくてブラックをやっているわけではなく、その言動に問題があり、結果として

“ブラック上司”になってしまっていることが大半だと思います。

この“ブラック上司”対策を推進する方がブラック企業対策としては実効性があると思います。

 

ということで「あれ、もしかしてブラック上司じゃね?」という本にまとめてみました。

もうすぐ発売です。

 

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784827211146

(なんと、もう予約受付してくれている書店さんを発見。)

 

繰り返しになりますが、「働き方改革」の心配事は課題として、いかにクリアすべきかを

検討するというのが筋だと思います。目的を見失った議論をしていてはいけません。

 

それ以前にこのテーマを置き去りにしてはいけません。

 

 

おまけ:20日(火)のNHKおはよう日本の「おはBiz:カイシャインの掟」に登場します。

早朝6時10分頃で早いのですが、ぜひご覧ください。

 

テーマは「飲み会」です。(笑)

 

 

 

Vol.686 内部通報制度を整備する前にやること

伊調馨選手周辺”へのパワハラ問題。いつもそうですが、この手のことは実態が

明らかになる前に過剰報道されがちです。その結果、事態が複雑化し、被害者が

増えます。明らかに報道被害です。数か月前の貴ノ岩関への暴行事件もそうでした。

引退を表明された小室哲哉さんの件もそう。問題の本質はどこへやら、

ワイドショーを中心に騒ぎ立てるだけ騒ぎ立てる風潮があります。森友問題もそう。

まともな感覚を持っている人たちのマスメディア離れが加速すると思います。

 

件の伊調選手周辺のパワハラ問題。これも突然の「告発」から始まりました。

ちなみに「内部告発」と「内部通報」は違います。「告発」は行政・司法機関,

消費者団体,マスコミなどの外部に対して情報を提供すること。明らかに対象相手に

対してダメージを与えることが意図されています。これに対して、会社の中で

よくあるのは「内部通報」。こちらは法令違反、規則違反、パワハラ、セクハラなど

不正行為や疑問などを組織内部の窓口に対して、匿名または実名で相談・通報

することで、事態の改善が意図されているものです。

 

ところが、内部通報であっても相手にダメージを与えることを意図して悪用され

ることがあります。困ったものです。

 

そもそも気に入らないとか、注意されたことに腹を立ててとかで、特定の人物を

陥れるための手段として使われることがあります。私が知る限りでも、通報された

が故にいろいろ調べられ、最終的に「問題なし」となったのですが、嫌気がさして

退職したり、噂が蔓延して居づらくなり退職に追い込まれたり、心を病んでしまった

ケースがあります。みなさんの周囲でも結構あるのではないでしょうか。

 

制度として確立してしまうと、ひとたび通報があると、それが適切な通報であろうと

なかろうと、それなりのアクションを講ずることになります。それが当事者周辺を

疲弊させます。2016年に消費者庁消費者制度課から、いわゆる「内部通報ガイド

ライン」が公表されて以降、おかしなことになってきていると感じています。

 

社内での不正行為の完全撲滅は難しいと思います。これは人間集団であるが故の

つきものだと思います。それを発見した人が安心して話せる人が周囲にいないために、

匿名などで通報せざるを得ないという状況。こっちの問題の方が本丸だと思います。

ここをなんとかするための努力をせずに内部通報の制度だけを整備しているから、

おかしなことになっているのです。

 

お互いに助け合う、信頼し合う組織風土を醸成する。これは当然に目指すべき姿です。

ただし、これは大変です。それこそいろいろな人がいますので。

戦略的に取り組むべきは課長などの組織の最小単位の管理職のピープルマネジメント力

の充実だと思います。チームとしての成果を問う以前に、リーダーがメンバー

一人ひとりと信頼関係を築くことを問うべきだと思います。

 

この信頼関係づくりにはリーダーの人間力が問われます。ただし、管理職になって

いきなり、人間力を発揮せよ、と言っても無理があります。適性もあると思います。

人の面倒を見ることが苦手な人にはむきません。

 

管理職に昇進させるときに、仕事ができること(成果をあげていること)や

個としての優秀さを問うだけではなく、メンバーとの関係性を構築できる「人間性」を

重視した方がいいと思います。それこを、入社したときから「チームのために汗を

流すことが好きかどうか、やりたいか」を問い、その気がある人を対象に時間をかけて

ピープルマネジメントのケーススタディに取り組んでもらうのです。

その後、他の要件の充足度合いを見て昇進させる、という流れが良いと思います。

 

じゃあ、そのケーススタディってどうしたらいいの?となると思います。

そこで現在2つほど準備しています。

 

 

一つは「あれ?もしかして、ブラック上司?」というタイトルの本を出します。

現在、最終原稿をチェックしていますので、もう少しで発売されます。

これは良かれと思っていろいろやっているが周囲からはブラック上司だと思われてしまう

行動例をたくさん紹介してみました。もう一つは難しいチーム運営をしているケースを

短編ドラマ化したものをつくっています。現在2話できました。

こちらはもう少しエピソードを増やしてから公開したいと思っています。

 

なんでも人間関係で解決しようとするのは間違いだと思いますが、

人間関係づくりは物事の基本ですよね。

 

 

おまけー1:誕生日にたくさんの方々からメッセージやプレゼント、お花をいただきました。

ありがとうございます。いくつになっても嬉しいものですね。

 

 

おまけー2:花粉症がひどい某外国人から、“レイジはどうやって克服しているのか?”

と聞かれ、“気合だ。大事な仕事の前には鼻水が止まる。そのイメージトレーニングだ。

考えるな。感じろ”とブルースリー的に話したとところ、えらく尊敬されました。(マズイ)

 

 

おまけー3:ある方に刺激を受けて、やれるだけやってみよーと楽しそうな仕事を

片っ端から受けだしたら、年内の日程がほとんで売れてしまいました。(チーン)

 

 

 

 

Vol.685 日本の人事制度はなし崩し的に崩壊する(後編)

(中編のおさらいです)

 

副業解禁により、会社と社員の関係がいよいよ変わります。

従来の人事制度はなし崩し的に崩壊します。(中略)今後の人事制度のフレーム(枠組み)

ですが、私はこのようにその概要を想像(創造)します。(以下抜粋です)

 

・全社員が(正社員、契約、業務委託、パート関係なく)どの専門性を本籍とするかを決めます

・この専門性をJob familyといいます)

・それぞれのJob familyの中で、現在の力量を毎年ランキングします

・ランキングは実績に基づき、それぞれのJob familyの“親方”のような人たちが決めます

・ランキングにより報酬が決まります

・評価制度はありません(ランキングがすべてです)

・原則として全員有期雇用です(1年から5年)

・タスク管理、コスト管理、ピープルマネジメント等はJob familyが「マネジメント」

 の人が担います

・秘書業務、庶務総務業務は「サポート」の人が担います

・個々のスキルや専門性を高めるためのナレッジシェア、トレーニングプログラム

 が用意されています

・チーム力を高めるためのイベント、プログラムが定期的に行われています

 

(ここから後編です)

 

現在の仕組みとの大きな違いは各人が「プロとしての実力を毎年問われる」ことです。

厳しいようですが、報酬をもらう以上、プロとして働くのは当たり前です。そこには

年齢や経験は関係ありません。ちなみに、日本の人口動態からも「定年制」は見直した方が

いいと思っています。貢献できる専門性がある限り、年齢が高くても活躍の場があって

然るべきだと思います。

 

この制度の下では育児、介護、子供の受験、勉強などなど個人的な事情で時間的な制約が

生じても問題ありません。自ら承知の上でその期間ランキングを落とせばいいのです。

一定期間低位であっても、時間的な制約がなくなったときに、本人の実力が確かであれば、

元のランキングに戻れます。

 

それぞれのJob familyの“親方”たちは自分のJob familyに籍を置く人たちの専門性の

維持向上が使命です。それだけではありません。familyである以上、仲間の結束、

相互支援、相互育成に責任を持ちます。それこそ、上記のような個人的な事情を抱える

メンバーの相談に乗ります。

 

この“親方”ですが、Job familyの中の互選で決めます。専門性の高さよりも、

それぞれの専門性を解する人格者が選ばれるでしょう。親方の任期は最長6年です。

 

経営陣は「マネジメント」familyの中から輩出します。「マネジメント」の親方たちが

社長やCEOではありません。他のfamilyの親方と同じく次世代リーダーの発掘、

育成が仕事です。

 

このような仕組みが導入されたときに留意すべきは「会社全体の和」の形成と「

ロイヤリティ」の醸成です。

個の専門性をいくら高めたところで、この全体感がありませんと全体としての力が

発揮されません。関係者間で利害相反するような案件への取り組みができません。

 

「全体の和」「ロイヤリティ」。これらは社長や部門長というマネジメント職が

いくら力んだとしても、全員がお互いを大切に思うような意識が底辺にありませんと

結実しません。このための働きかけ、環境整備は必須です。これを意識したオフィス、

社員食堂、はたまた社員イベントの企画。こうした目に見えないものへの投資を

おろそかにしてはいけません。

 

90年代後半から日本に紹介されたアメリカ型のマネジメントは「見えないもの」

への投資を極小化し、短期的な目に見えやすい結果を追求するものでした。

アメリカ企業を知るものからすると、本家本元よりも曲解されて導入された嫌いが

あります。結果として、会社組織を氷山に例えるならば、氷山の海中部分がやせ細り、

その存在を維持するのもやっという状態になりました。これは間違いだったと思います。

 

日本の人事制度はなし崩し的に崩壊する。3回にわたってお届けしました。

本稿がみなさまの次の制度設計の参考となれば幸いです。

 

 

おまけー1:とある地方の駅前の居酒屋。夜8時。店の前の看板に「焼き魚定食」

「お刺身定食」とあり、ガラガラを扉を開けたところ、お客はゼロ。ん、店変えようか

と思った時に店員が泣きそうな顔をして登場。仕方ないので着席。メニューを見ると

定食メニューがありません。

 

“あの、外に出てた焼き魚定食を・・・”

“あ、あれランチだけ”

“え、でも看板が”

“あー、しまい忘れだー(と泣きそうな顔)(この顔、”手“かも。)

 

おまけー2:海苔とシラスのサラダとほっけ、ごはんとみそ汁を注文。

しばらくして、生ビールが。

 

“あれ、ビール頼んでないけど・・”

“あー、癖で出しちゃった(と泣きそうな顔)(確信した。この顔、”手“だ)

 

 

おまけー3:明日で56歳になります。まだまだや。

 

 

 

 

Vol.684 日本の人事制度はなし崩し的に崩壊する(中編)

(前編のおさらい)

 

「例外」が例外でなくなる、ということはよくあります。・・・気づいてみたら

例外の方が普通になってきたというのがそれです。この状態にあるのが「人事制度」

だと思います。

 

・・・大企業で採用されている人事制度が人の成長や会社を成長させることを目的とした

人事制度ではありません。事業戦略は反映されていません。・・・

“人事制度が邪魔をしている”という声をよく聞きます。

 

副業解禁は劇薬です。「資格制度」を崩壊させると思います。社内での昇格や昇進は

“どうでもいいこと”になっていきます。しかし、この動きは止められないと思います・・・

 

(ここから中編です)

 

副業解禁により、会社と社員の関係がいよいよ変わります。“雇ってやる”ではなく、

“働いていただく”になります。社内での経験を積み重ねた後にポストに就くという

運用では真に実力のある人が辞めます。その役割を担うに最適な人がポストに就くことに

なるでしょう。

 

「部長」というポジション。かつては部の中で年次が古く、経験を積んだ人がその役割は

担っているのが普通でした。10年くらい前からこれは崩れています。最近、大企業で

幹部クラスを外部から採用し始めています。某企業で先端技術系の業務の部長という

名刺を現役の大学生が持っていました。現時点では極めて「例外」ですが、そのうち、

これが「例外」ではなくなるでしょう。

 

私自身、同時に複数の会社・団体で複数の役割を担っていますが、正業・副業という

感覚がありません。強いて言うなら全部「正業」です。

副業解禁で活躍するような人は同じ感覚だと思います。

 

そういう時代になったときの人事制度のフレーム(枠組み)ですが、

私はこのようにその概要を想像(創造)しています。

 

・全社員(正社員、契約、業務委託、パート関係なく)が、本籍たる専門性をもっている

・この専門性は「営業・マーケティング」「製造」「研究開発」「マネジメント」「サポート」等の

 大くくりです(ちなみに、この専門性グループのことをJob familyといいます)

・それぞれのJob familyの中で、現在の力量を毎年ランキングします(テニスのランキング

 みたいなものです)このランキングに基づき、「基本報酬」と「時給」が決まります

・基本報酬はJob familyごとに相場を意識して決めます

・ランキングは実績に基づき、それぞれのJob familyの“親方”たちが決めます

・Job family間の受け入れ、社外からの採用等もJob familyごとの“親方”たちが決めます

・評価制度はありません(ランキングがすべてです)

・原則として全員有期雇用です(1年から5年)

NDAを締結した上で“副業”はもちろんOKです

・タスク管理、コスト管理、契約管理、ピープルマネジメントはJob familyが「マネジメント」の

 人が担います

・秘書業務、庶務総務業務は「サポート」の人が担います

・個々のスキルや専門性を高めるためのナレッジシェア、トレーニングプログラムが用意されています

・チーム力を高めるためのイベント、プログラムが定期的に行われています

・新卒一括採用はやっていません。ただし、インターンを多く受け入れています

・法定外の福利厚生はカフェテリア方式でメニューを選べます

・年金は確定拠出型です

・ボーナスの一部は第二退職金に繰り延べることができる仕組みがあります

 

数年前にとある企業の人事制度の抜本改革でこのJob familyの考え方を導入しました。

まだまだ「例外」でしょうが、今後は時間の問題。それが当たり前になっていくのではないか、

と思っています。

 

企業側がこのように変わると、大学を頂点とする教育制度も変わるはずです。大学が入口管理

(入試優先)から出口管理(認定されないと出れない)に変わると高校以下もかなり変わる

はずです。また、社会人大学生も増えるはずです。

 

 

(後編に続く)

 

 

おまけー1:とある方の還暦祝いのサプライズ企画でちょっとした“フラッシュモブ”をやりました。

プロのミュージカル俳優を含め、忙しい面々がこの企画のための稽古にも参加。前日には

テレビ会議システムを使いながら夜にIndigoblueのオフィスで稽古。すべてはこの方の人徳。

お祝いしたいという気持ちが原動力になります。

 

 

おまけー2:大阪の常宿で「金の斧、銀の斧」を試されました。

 

“柴田さま、前回ご宿泊のときに、こちらの時計をお忘れではないですか?”

超豪華な時計です。(ここでそうです言うたら、その時計は僕のもんや:なぜか関西弁)

 

“・・・違います。”

 

マネジャーと思しき男性が横から、“前回お泊りのお部屋から出てきたのですが・・・、

見覚えありませんか?”

 

(うむむ、あ、そうや、それ、わしんや、と言うたら、その時計は僕のもんや・・)

 

“いや、違います。” 

 

翌日、そのホテルのレストランで会計のときです。 

 

“あの、このペンをお席にお忘れではないですか?”